Roger Yasukawa's

タフなミルウォーキーで感じたヒデキとダニカの成長

画像先週末おこなわれたインディカー・シリーズ第5戦の舞台は、ミルウォーキー・マイル。世界最古の現役モーター・スピードウエイとして、100年以上もの歴史があるコースです。

ミルウォーキーでは僕自身も2002年にフォーミュラ・アトランティックで優勝したことがあり(写真↓)、自分にとって思い出深いコースです。いま思うと、このレースで勝てたからこそインディカー・シリーズにステップ・アップできたのだと思います。

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シーズン最大のイベントでもあるインディ500が終わり、休む暇もなくドライバーとチームは翌週にミルウォーキーへ移動してきました。特に優勝したエリオはその前にニューヨークへ行き、さまざまなテレビ番組に出演したりインタビューをうけたりで、多忙な数日間だったと思います。

今回レースがあったミルウォーキーは、1マイル・オーバルです(写真↓)。インディアナポリスの2.5マイルの巨大オーバルから、半分以下のショート・オーバルへと戦いの場所を移すことになったのですが、ドライバーはインディアナポリスでほぼ1ヶ月に渡り220+αのスピードに目が慣れてしまっているため、ショート・オーバルでの160マイル前後の平均速度だと、ものすごくクルマが遅く走っているように感じてしまいます。

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ではショート・オーバルのほうが楽で簡単かというと、決してそんなことはありません。基本的に、ショート・オーバルとインディアナポリスでは、同じオーバルでもマシンのセッティングがほとんど違うと言っていいでしょう。

特にミルウォーキーはターン1〜2と3〜4のRが大きく、バンクの角度も浅いので、どちらかと言うとロード・コースの高速コーナーを2つ繋げたようなデザインです。その上ショート・オーバルのウィング・スペックはロード・コースと同じものになるので、ダウンフォース・レベルもまるで違います。

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シリーズの中でインディアナポリス(写真↑)だけはリア・ウィングの角度制限がないために、リア・ウィングをぎりぎりまで下げて寝かせ、レース中のトータル・ダウンフォースはおよそ2000ポンド(907キロ)前後で走っています。軽自動車一台分の重さを載せて、走っているようなものですね。

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それに比べてミルウォーキー(写真↑)のようなショート・オーバルでは、およそ4000ポンド(1824キロ)ものダウンフォースで走っているので、インディアナポリスに比べると倍くらいの力で地面に押しつけられているのです。ハイ、軽自動車もう一台追加!

当然それだけの力が加わる分、ハンドルが重くなったり、ドライバーへかかるG(重力加速度)もぐっと増えることになります。たしかにスピードそのものは遅くなりますが、ショート・オーバルのレースの方がスーパースピードウェイよりもはるかにタフで、体への負担が大きいということになります。

では、ミルウォーキーのコースはどんなセッティングが必要とされるのか。先ほど書きましたが各ターンはロード・コースの高速コーナーが組み合わされたようなデザインで、バンクはそれほどついていません。インディアナポリスもバンク角度が少なく、ロード・コースっぽいところを考えると、足回りだけは同じようなセッティングになります。

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しかしミルウォーキーのコースに関しては、コーナーのイン側の1レーンに、違うアスファルトの舗装(写真↑)がされているので、その路面にあった調整をしなくてはいけません。特にハイ・サイド(走行ライン外側)からロー・サイド(走行ライン内側)へ移動する時には、路面の繋ぎ目でマシンが揺れ、違う舗装へ移動すると当然のことながらグリップ・レベルが変わってきます。そのあたりのことを考慮しつつ、マシンのセッティングと戦略を立てていかなくてはならないのです。

今回のレースは、開幕戦からずっと似たような展開で、ペンスキーとガナッシ勢が圧倒的にリード。しかしながらエリオは予選中のクラッシュからなかなか立ち直れず、最後まで良いところがなく終わってしまった点が気になりました。

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ペンスキー勢は常に、最後尾からスタートしてもあっという間に上位まで追い上げて来るので、エリオはマシンのバランスがまったく合わなかったのかもしれません。 それとも、3億円の賞金をゲットして、ホッとしちゃってるのかな・・・?!?(笑)

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レース全体を見ていると、インディ500でも良い走りをしていたヒデキが、今回ももったいない結果に終わってしまいました。このミルウォーキーでもレース・セットは決まっていただけに、ピットでの作業や戦略が合えば、いつ勝ってもおかしくない状況にきています。それだけのスピードとポジションを持っているので、今後のレースに期待しましょう。

ヒデキも頼もしくなりましたが、もっと驚いているのは、ダニカ(パトリック)の成長っぷりです! トニー(カナーン)がアクシデントに見舞われ続けているからということもありますが、5戦が終わった時点で、気がついたらダニカがAGR勢の中ではランキング・トップの4位。彼女のチームとの無線交信を聴いていても落ち着いて喋っていて、いつもイライラした走り方ではなくなっていることが、結果に繋がっていると思います。

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ダニカは小さい頃からカート・レースに出ていた姿を見ていたので、腕があることは最初から確信していました。去年のインディ・ジャパンでやっと勝てたからか、落ち着きを覚えたダニカは、このタフなミルウォーキーでも安定した走りを見せるようになり、いよいよベテラン勢の仲間入りですね! 

AGR勢は絶対的なスピードではまだペンスキーやガナッシに遅れをとっていますが、レース・セットは決まっているようなので、そろそろペンスキーやガナッシの連勝を止めて欲しいところです。

さて、僕の方はというと、インディ・ジャパンに向けて準備を急ピッチで進めていますが、あっという間にもう6月。今もスポンサー活動を続け、6月中に少しでも多くの会社を訪ねて、レース前のイベントやプロモーション活動に協賛していただけるようなプランを立てています。

まだ具体的なことは決まってなく、あくまでもアイデアの段階ですが、自分がプロデュースしたイベントなどもやろうと考えています! 実際に現実化するまでにはまだまだ考えなければならないことがたくさんありますが、少しでもみなさんとお会いできる機会を増やせるといいなと思っています! イベントを行うことになった際は、ぜひ遊びに来て下さいね!!