INDY CAR

スコット・ディクソンが雨を味方につけ今季4勝目。武藤英紀は14位

<Honda>

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2008年7月12日(土)
決勝
会場:ナッシュビル・スーパースピードウェイ
天候:晴れのち曇り
気温:28〜31℃

IndyCarシリーズ第11戦目は、コンクリート舗装の1.3マイルオーバル、ケンタッキー州のナッシュビル・スーパースピードウェイでナイトレースとして開催された。

出場24台の中からエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がポールポジションを獲得。予選2番手にはダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)がつけ、武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)はキャリアベストとなる予選3番手の好位置を確保した。

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スタートは土曜日の19時過ぎに切られたが、ナッシュビルには大きな雨雲が近づいていた。終了まで天気が持つのかが心配される状況でレースはスタート。予定の200周の半分である100周を完了すればレースは成立するため、各チームのピットは雨雲をレーダーでチェックし続け、ピットインのタイミングを慎重に判断する必要があった。

レースで速さを発揮したのは予選7番手だったトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)だった。50周足らずで3位まで浮上した彼は、90周目にはついにトップに立った。しかし、138周目に雨が降り出すと、そのフルコースコーションの間にピットストップ。ほかのドライバーたちもほとんどがラップリーダーのカナーンと同じ作戦を採ったが、ここでピットに入らないマシンもあった。

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スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はピットとの無線交信がうまくいかずにピットに入らなかった。ダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)は雨が降ってレースが短縮される方に賭けた。これによりディクソンは2位からトップへと難なく上がり、ウェルドンは7位から一気に2位へとポジションアップした。

そして、天気はチップ・ガナッシ・レーシングの期待通りになった。再び雨が降り出し、165周を終えるところでまたしてもイエローフラッグが振られた。このあとにレースは170周目に赤旗により一端中断。雨が止む気配がなかったため、午後8時50分過ぎにチェッカーフラッグが提示され、200周のレースは171周で終了となった。そして、ディクソンが今季4勝目を記録し、2位はチームメートのウェルドン。最後のリスタートで絶妙のダッシュを決めたカストロネベスがカナーンをパスして3位。カナーンは勝てていたはずのレースでまさかの4位フィニッシュ。ランキングもウェルドンに抜かれて4位へと後退した。

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武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は予選3番手からトップ5を保って戦いを進めていたが、アンダーステアが強いハンドリングのために順位を上げることはできず、57周目にピットイン。フロントウイングを立ててポジションばん回を狙ったが、14位でのフィニッシュとなった。

■スコット・ディクソン(優勝)

「今回は特別なカラーリング(青)のマシンで走ったが、このマシンに乗ったとき、僕はいつも優勝している。今回は大きな幸運も味方につけての勝利だ。今晩の僕ら以上にラッキーなことなんてありえない。僕はピットとの交信がうまくいかずピットに入らなかった。あの直後の何周か僕はとても怒っていたけれど、雨が降って来て、これはもしかしたら勝てるかもしれないと考えた。この雨で最も不運だったのは、今日のレースで最も速かったトニー・カナーンだろう」

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■ダン・ウェルドン(2位)

「今日の僕らのマシンは2位でゴールできるだけの力は備えていなかった。空気抵抗が大きく、トラフィックの中でのハンドリングもよくはなかったからだ。しかし、実力以上に幸運が大きな意味を持つという日も時としてあるものだ。チップ・ガナッシ・レーシングは幸運を味方につけ、1-2フィニッシュを飾った。チームにとってすばらしい一日となった」

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■エリオ・カストロネベス(3位)

「今日のレースは非常に残念な形でのゴールとなった。チップ・ガナッシ・レーシングの燃料はあと4周ぐらいで底をつくはずだった。時間にしてあと2分だった。雨が降って来るのがあと2分遅かったら、僕らが勝利を手にできていたはずだ。今日の彼らは幸運だった。僕らは力を出しきってレースを戦ったが、3位でのゴールとなった。3位は決して悪い結果ではない。僕らは引き続きチャンピオン争いを戦っていける」

■武藤英紀(14位)

「予選やプラクティスまでよりもリアのグリップを高めるセッティングに変えていったのですが、それが今回は失敗でした。スタート直後からハンドリングはアンダーステアが強く、フロントタイヤの接地感がありませんでした。最初のピットインでウイングを立てていったのですが、それでもハンドリングが大きく改善されることはありませんでした」

■ロジャー・グリフィス|HPD テクニカル・グループ・リーダー

「作戦面で非常に興味深いレースとなっていた。チップ・ガナッシ・レーシングは雨が降る方に賭けた。2台を走らせている彼らは1台ずつに別々の作戦を使うこともできたはずだが、2台ともピットインをさせず、それによって1-2フィニッシュを成し遂げた。ギャンブルでもあったが、豊富な経験に基づいた判断だったと考えることもできる。あと10周雨が来るのが遅かったら、彼らはピットに向かい、順位を大きく落としていたはずだ。 今年もナッシュビルでのレースはたくさんのファンが見に来てくれたが、雷の危険があったために彼らはレース中にグランドスタンドから退避するよう要請されていた。しかし、熱心な彼らはスタンドの下からレースを最後まで見届けていた」