INDY CAR

Hondaエンジンのみで争われる今年のIRL〜公平なエンジン供給が新たなドラマを生む〜

<TWIN RING MOTEGI>

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TVゲームに登場してきそうなデジタル表示のコントロール・パネルのむこうで、Hondaパフォーマンス・ディベロップメント(HPD)の耐久性を計るダイナモメーター室のロビン・ラクイは、1周2.5マイルのインディアナポリス・モーター・スピードウェイを想定しシミュレーションを始めようとしていた。目を閉じてエンジンの音を聞けば、訪れた者は実際に走っているところを想像できるだろう。
マシンが1コーナーへ向けてシフトダウンし、少しのあいだ絞られていたパワーが、650馬力でマシンを加速させ、長いバックストレートでは時速220マイル(約354km/h)以上のスピードを記録する。
2006年のインディカー・シリーズにエンジンを供給する唯一のメーカーとなるHondaは、HI6RシリーズのインディV8を設計、開発、製作、試験、準備、整備を行なう上で、品質管理を徹底している。もちろんチーム側は、シリーズ・タイトルとインディ500の勝利を手にしたHondaに、当然それを求めていることだろう。
「HondaがIRLと協力し、インディカー・シリーズの価値を高めるために全力を尽くすことはあきらかだ。2006年シーズンに向け、インディV8の仕様は最小限しか変更されていない。私たちは信頼性と性能がずばぬけていることを、すでに見てきた」とインディ・レーシング・リーグの代表で最高経営責任者であるブライアン・バーンハートは語った。
HPDがインディ500に出場するすべてのマシンにエンジンを供給することになる今年、ロバート・クラークHPD代表とバーンハートは、全体の戦闘力が接近することで、ドライバーとクルーの能力がより大きく勝敗を左右することになると述べている。
「すべてのチームがまったく同じエンジンを使うことになる。このプログラムでは、基本的にすべてのエンジンがHPDかイルモア(エンジニアリング)で整備される。これらのエンジンはひとつの場所に保管される。IRLは保管されているエンジンのリストから、無作為に1基を選んでチームに供給する。扱いに差をつける可能性はまったくない」とクラークは言う。
特定のチームを優遇することは、むしろ逆効果だろう。ひとつのメーカーがエンジンをすべて供給することにより、競争のレベルが高まると予想されている。そして、より多くのウィナーが誕生し、タイトル争いは厳しくなるはずだ。それによって、レースへの関心とその迫力は増すだろう。
「一社ですべてのエンジンを供給することになった際、すべてのチームに同じものを提供すること以外はまったく考えなかった。2003年、2004年、2005年にエンジン・メーカーと話し合ったときは、あるチームに特定の扱いをすることを認めていた。それらは契約の際に、ファクトリー・チームとされていたものだ。エンジン・メーカー同士の競争が促進されるそのような環境では、それぞれのエンジニアが力を振るえるよう、仕様の異なるエンジンの製作を認めてシーズン中も開発を続けるられるようにすることが望ましかった」とバーンハートは言っている。
「エンジンの供給元がひとつになれば、そのようなことも必要ない。Honda、HPD、そしてイルモアは、全員に同じエンジンを供給する以外のことはできないだろう。すべてのチームを同様に扱わざるを得ないのだ」