Hiroyuki Saito

人間ドック その一 PET/CT検査

帰国してから早2週間となりました。今回の帰国はシーズンが始まる前にカメラ、レンズの整備やオーバーホールを行うことが目的のひとつでありましたが、ついでなので僕自身の身体も調べてもらおうということになり、生まれて初めて人間ドックを受けることになりました。
タバコは吸うし、お酒も飲む、食生活も外食ばかりと不規則な生活を送ってきましたが、なんとかこれまでの33年間は特に大きな病気も無く過ごすことが出来ました。というか、実は何かしら体内で病気が進行しているかもしれないのです。成人病へまっしぐらの生き方をしてきただけに、ここらで真剣に身体の隅々をチェックしてもらったほうがいいのではと思い、今回の人間ドックとなりました。
そんなわけで、アメリカに居る間にアニキにいろいろと段取りしてもらい、計3日間に分けて検査を受けることになりました。日程が確定すると病院から書類が送られてきて、検査当日の内容や前日についてのことが書かれていました。
よく読むと、検査前日はいろいろと食事制限があり、お酒を飲んではダメと書いてあります。うーん、確かにたまには休肝日をつくらねばと、前日は我慢しましたが、なかなか眠ることが出来ず、眠りの浅いレム睡眠状態で朝を迎えて、かえって身体に悪くね? なんて思いながら二度寝してしまいました。
ネム睡眠状態で時計に目をやるともう8時30分です。慌てて起きて準備を済ませ、事務所に向かい、病院まで送ってもらいました。病気でもないのに病院にいくのもなんか変な感じです。会計を済ませ、検査室のある地下一階へと向かいました。
初日はPET/CT検査と呼ばれるものでした。受付を済ませ、「椅子に座ってお待ちください」といわれたのですが、椅子が少なくて座るところも無く、しょうがなく立っていると老夫婦のお婆さんの方になぜか「ここに座ってください」と自分が座っていた席を立って譲ってくれようとしたのです。
もちろん丁重にお断りしました。普通は逆ですからね。なんでお婆さんは僕に席を譲ってくれようとしたんだろう、病人っぽく見えたのかなぁ? と深く考えつつ廊下に立って呼ばれるのを待っていました。
僕の後に受付を済ませた60代くらいのおじさんも「座って待っていてください」といわれたのですが、席が無いことに気づくと、「なんだよ、座る椅子がねーじゃねーか」とつぶやいていました。そしたら受付のお姉さんが、どこからかパイプ椅子を持ってきてぼやっきーなおじさんを座らせていました。
いってみるもんだなぁ、なんて思ってまっていると、とうとう僕の検査前の準備が始まりました。まずは更衣室で検査着に着替え、次の部屋へと案内されました。準備室から待合室、そして撮影室に至るまでよくマンガや映画で見るようなバイオハザードのマークがあり、ここは放射線の玉手箱だなぁ、なんて思いながらもいろいろと検査の仕方や順番の説明を受けました。そこではじめて今日受ける検査がガン細胞を発見する検査ということを知りました。
細胞を発見しやすいように特殊な液体を注射し、控え室で1時間ほど待機します。なぜ、1時間も時間が必要かというと、その液体が身体全体に浸透していくためと、500mlほど水分を補給し、できるだけ体に残っている排出物を出さなければいけないからです。その方が発見する確立が高くなるということなんですね。
しょうがないので350mlのお茶を2本飲み干し、尿意を催すまで漫画喫茶の個室のような待合室で待機しました。目が疲れるからと雑誌も読むことが出来ず、ぼけーといろいろ考えながら撮影検査までただひたすら待ちました。
検査前には出すものもだし、準備万端で待機していると、とうとう僕の名前が呼ばれました。撮影ルームに行くと、撮影担当者の人がよく足元を見ていなかったのか、説明しながらいきなり撮影機器のベッドに上がる踏み台に足をぶつけています。そんなのお構い無しにベッドの向こう側に回ると今度は診察記入内容を書いたカルテの束みたいなものにぶつかりテーブルから落とすというドタバタぶりです。
大丈夫かなぁと思いつつ検査機を見ると、その最先端医療器具は二つの大きなリング状の撮影機の中心に大人の男性二人ほど縦に寝かせることができる細長いベッドが設置されていました。その細長いベッドに頭をリング状の撮影機の方に向けて仰向けになって寝かされると、担当者が僕に薄めの羽毛布団を掛けてくれました。
「手は頭の上に伸ばし、万歳というポーズから手の平を合わせてそのままの姿勢でいてください」と言われました。しかも「その体制で30分ほど動かずにいてください」と。これは結構大変だと思いながらも「ちょっとでも動くともう一度撮影しなおすことになりますよ」と言われたので、そんなのごめんだな、と思いながら撮影検査を待ちました。
いよいよ撮影検査のスタートです。ベッドがリング状の撮影機の中心を通るように動き出しました。一つ目のリングは中にカメラが設置されていて、そのレンズがリングの内側、寝ている人を撮影するように向いてあり、カメラがそのリングをぐるぐる回転しながら僕を撮影し始めました。
頭から撮影が始まると、胸部、腹部、腰などと部分的に止まり撮影を行います。なんだか輪切りにされているような感じで、この状況が15分ほど続きました。万歳している手も痺れようとしています。それでも堪えていた矢先のことです。足元の撮影が終わり、ベッドが動き出すと、僕にかけてあった布団が撮影機にひっかかり、足元の方から徐々にめくり上がっていったのです。
うわー、布団が動いちゃったよー。どうなるのー? なんて思いながらこの状況を伝えなければと声を出そうとしたのですが、その前に普通気づくんじゃね? なんてちょっと様子をみていました。でも、布団が腰までめくり上がってもベッドは止まりそうになかったので、たまらず「すみませーん、すみませーん! 布団が動いちゃいましたぁー」と言い、向こうの反応を待ちました。
すると、やっと機械が一旦停止し、担当者が出てきて布団をさっと直し、頭を押さえていた枕を替えました。これからは手を楽にしていいということだったので、やっと窮屈な体制から解放され、「あと10分くらいで撮影終わりますから」と今度は頭を中心に検査され、なんとか撮影検査は無事終了しました。
「再び待合室で30分ほど安静にしていてください」と言われ、時計を見ながら時間の経過を待ちました。30分後、待合室から飛び出し、着替えを済ませ、受付をし、「今回の検査の結果は1週間から10日間で出ますので、その後郵送いたします」と、いわれなんだか拍子抜けした感もありましたが、やっと地上に戻れるといった開放感の方が強く、とっとと病院を後にしました。
今回の検査は万全ではありませんが、結構小さなガン細胞まで発見できるそうです。結果について心配ではありますが、まだまだ人間ドックは始まったばかりで、胃カメラ、脳MR検査、胸部CT、動脈硬化検査、大腸内視鏡検査と残っています。
お伝えできるのは限られると思いますが、また検査内容をご報告したいと思います。