CHAMP CAR

ルーキーのダン・クラークは、タイミングのよいタイヤ交換で、ロード・アメリカの初日予選ポールを獲得


ダン・クラーク(#14CTEレーシング‐HVM/フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)は、これまで雨が降ることの多い英国やヨーロッパ各地のサーキットで、自身のレース経験を培ってきた。
しかし、今回は雨となった金曜日のエルクハート・レイクで、クラークは彼のもつウェット・コンディション下における走行技術よりも、ドライ・コンディションへと変化する状況に対応する能力の方で、自身に好結果をもたらすこととなった。CTEレーシングHVMのドライバーは、タイミングよくブリヂストン・ポテンザを交換することで、今週末のグランプリ・オブ・ロード・アメリカの第一予選をリードした。
クラークとチャールズ・スウォルスマン(#34マイジャック・コスワース/フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)は、一周4.048マイルにおよぶロード・アメリカのコースが、徐々にドライへと変化していくことを察知する。予選終盤、朝から続いた雨が弱まったところで、レイン・タイヤを装着したまま14ターンのコースを走行し続けるライバル達を尻目に、最後の数周でブリヂストン・レーシング・スリック・タイヤを装着してタイム・アタックに挑んだ。レーシング・スリックは通常レイン・タイヤと比べて飛躍的にタイムを短縮することが可能だが、わずかでも路面がウェットだと、繊細なマシン・コントロールがさらに難しいものとなる。
しかし二人のドライバーが出た賭けはみごと功を奏し、クラークが自己ベストタイム1分55秒123(平均時速126.585マイル)を記録してこのセッションをリード。第一予選で二人は1位と2位を獲得するに至った。結果、この英国人ルーキーは自身の短いキャリアの中で、ブリヂストン・プレゼンツ・ザ・チャンプ・カー・ワールド・シリーズ・パワード・バイ・フォードの予選セッションにおいて、初めてトップに立つとともに、日曜日の決勝レースでフロント・ローからスタートする権利を得ることになった。これは彼のチャンプ・カー・キャリアにおいて、初の快挙である。
スウォルスマンが見せた終盤のダッシュにより、彼はこの日2位となるタイム、1分55秒599(平均時速126.063マイル)を記録。ここまで自身の記録を更新し続け、5戦連続のトップ10フィニッシュを達成している2005年度のチャンプ・カー・アトランティック・シリーズのチャンピオンであるスウォルスマンは、エルクハート・レイクで自己ベストの予選暫定2位という結果を第一予選の最終ラップとなる12周目に記録した。彼のタイムはクラークのそれにはわずかに及ばなかったものの、3位に対して1秒以上の差をつけている。
2004年のロード・アメリカの優勝者であるアレックス・タグリアーニ(#15 オージー・ヴィンヤーズ、フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)は、皆がウェット用のタイヤを装着していた時点で予選の大半をリードしいたが、この二人のドライバーの作戦により3番手へと引き下げられた。過去3回連続で表彰台フィニッシュという結果を更新し続けるタグリアーニは、このレースウィークのラップ・タイムで2分の壁を切った最初のドライバーとなったが、最終的に1分57秒517(平均時速124.006マイル)のタイムで3位という結果に甘んじることになった。
予選セッションの大半でリードを保ったタグリアーニは、2001年と2003年にロード・アメリカで優勝しているブルーノ・ジュンケイラ(#12 ホール・イン・ザ・ウォール・キャンプス フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)に一時的にトップの座を奪われながらも、7ラップ目のアタックでリードを奪回。しかし、タグリアーニの雨天用の作戦がその効力を発揮していた傍らで、スウォルスマンとクラークはスリック・タイヤによる最初のタイム・アタックを開始していた。この作戦により、まずスウォルスマンが8ラップ目のアタックでトップに立つ。すかさずタグリアーニはトップを奪い返すものの、その次の周回でクラークのタイムがこれを凌ぎ、最終的に誰もが予想しなかった結果をもたらした。
依然として2006年度シリーズ・チャンピオンを競い合っている3人が、タグリアーニのすぐあとに続く。A.J.オールメンディンガー(#7 インデック フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)とジャスティン・ウイルソン(#9 CDW フォード・コスワース/ローラ・ブリヂストン)は、ディフェンディング・チャンピオンのセバスチャン・ブルデイ(#1 マクドナルド フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)を62ポイント差で追っているが、両者ともこの日はブルデイとの差をつめることはできなかった。
チャンピオンを争うこの3人の中ではオールメンディンガーが1分58秒507(平均時速122.970マイル)で一歩リード、1分58秒945(平均時速122.517マイル)で5位となったブルデイを抑えて4位につける。ウイルソンはそのブルデイのすぐうしろで6位。タイムは1分59秒076(平均時速122.382マイル)となった。
ルーキー・ポイント・リーダーのウィル・パワー(#5 オージー・ヴィンヤーヅ フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)は予選7位で、今回からピンク色にカラーリングを一新したキャサリン・レッグ(#20 ベル・マイクロ フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)は8位のポジションでこの日を終えた。レッグはフォードのウォーリアー・イン・ピンクのカラーリングのマシンを駆り、1分59秒388(平均時速122.063マイル)のタイムで、今年の6月以降ではベスト・ポジションとなる8位を記録。
以下アンドリュー・レンジャー(#27 ウォルマート/タイド フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)とジュンケイラがトップ10に入った。最終的な日曜日の決勝レースのスターティング・グリッドの順位は、アメリカ中部時間土曜日午後2時の最終予選にて決定され、同時にブリヂストン・ポール・アワードの表彰も行われる。ファンはその結果をオフィシャル・ホームページ、www.champcar.ws で知ることが可能で、アメリカ東部時間土曜日午後11時30分に放映されるSPEEDチャンネルの30分ハイライト・ショーで、金曜日と土曜日の予選の模様を観戦することができる。
予選トップ3ドライバーのコメント
ダン・クラーク(#14 CTEレーシング・HVM フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)
「頭を使って戦った予選だった。チームは常識の枠を超えて考えたんだ。セッション開始直後は他のチームと大きな違いはなく、ウェット・コンディション下の最初のプラクティス・セッションはまずまずの結果だった。午後になって路面は乾いていくように見えたが、実際にはそうでもなく、かなり滑りやすい状況だったね。日曜日の決勝レースはフロント・ロウからのスタートということで、みんなが注目するからちょっと緊張するかな。でも楽しみだよ」
チャールズ・スウォルスマン(#34 マイ・ジャック/コンクエスト・レーシング フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)
「コース上にドライな箇所がいくつかあったのがわかったので、一つ賭けに出てみようと思った。終盤スリックを装着してコース・インして、終了直前のファイナル・ラップでベスト・タイムを叩き出そうと考えたんだ。結果的にそれがうまくいった。ブリッジを抜けたところの箇所がまだ乾ききっていなくて少し滑りやすかったけれど、さほど問題ではなかったよ」
アレックス・タグリアーニ(#15 オージー・ヴィンヤーヅ フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)
「もっとも大事なことは、マシンがとても速いということだろう。ここでのテストに参加していないことを考慮すると、チームはすばらしい仕事をこなしているといえる。今回はほとんど何も特別に用意をせずにここへ来た。それでもマシンは朝から数周走行しただけで、かなり手ごたえはよかった。午後になっても調子が衰えることはなかったよ。ただ午後になって路面がドライになると、バランスの面で少しばかりアンダーステア気味になったね」
注目すべきポイント
・ダン・クラークは今シーズンのルーキーとして初めて予選セッションでトップに立った。またルーキーとして予選トップを獲得したのは、2003年のサーファーズ・パラダイスのセバスチャン・ブルデイ以来。
・ダン・クラークはこの日の予選でトップとなったことで、日曜日の決勝レースでのフロント・ローのスターティング・グリッドを確保。CTEレーシング・HVMのマシンとしては、2004年のロード・アメリカのライアン・ハンター-レイに次いで2度目となる。
・元ヨーロッパF3000チャンピオンのファン・カセレス(#19 サニーズ・バーベキュー フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)は、この日デイル・コイン・レーシングからデビュー。ロケット・スポーツへ移籍したマリオ・ドミンゲス(#8 ぺメックス/ロケットスポーツ フォード・コスワース/ローラ/ブリヂストン)の代わりとして、今シーズン終了までエントリーする。このウルグアイ出身のドライバーは2分3秒690(平均時速117.817マイル)のタイムを記録して17位という結果だった。
・クラークの予選結果は、彼にチャンピオンシップ・ポイント1点を与え、合計148ポイントで三つ巴のランキング10位タイとなった。彼は今日のパフォーマンスにより、現在ロシュフランズ・ルーキー・オブ・ザ・イヤー賞でリードするウィル・パワーにあと19ポイントと迫った。