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アメリカン・ル・マン・シリーズ・シーズン ウインター・テスト セブリング【初日】フォト&レポート

<US-RACING>

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 100年に一度の危機と言われる今日この頃ですが、今年もデイトナ24時間で無事にアメリカン・モータースポーツのシーズンが幕を開けました。その翌日には同じフロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで、毎年恒例のアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)ウインター・テストがスタート。こちらのスポーツ・カー・シリーズも、開幕に向けて各チームが本格的に動き始めています。みごと快晴に恵まれた初日、1月26日のセブリングは、まだらな雲が時折太陽を遮るものの、一日をとおして抜群のコンディションでした。朝のうち13度と若干冷え込みましたが、時間がたつにつれてぐいぐいと上昇し、冬にもかかわらず26度を記録。さすがサンシャイン・ステイトと呼ばれるフロリダです。王者アウディの撤退で心配したALMSファンも多いと思いますが、なんといっきに3台の新車がデビューしました。アキュラ、BMW、ポルシェがいったいどんなニューモデルを出したのか、早速レポートしましょう。

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 ついにアキュラのLMP1マシン、アキュラARX-02aがデビューしました。いくつかのインターネット・サイトではスパイショットが掲載され、テスト前から注目の的だったマシンですが、ようやくお披露目です。昨年末からUS-RACINGで掲載したホンダ・パフォーマンス・ディベロップメントのチーフ・エンジニア、堀内大資さんのインタビューでは、「新しいアイディアを満載したマシン」ということ。確かにLMP2クラスのマシンよりもノーズが高く持ち上がり、低く抑えられたアンダーボディがからはフロント・サスペンションの形状がよく見えるのが斬新ですね。なぜこんな方法を採用したのか、その秘密はのちほどレポート。最初のセッションでド・フェラン・モータースポーツのマシンが1分45秒053をマーク。LMP2のアキュラを1.683秒も引き離す速さをいきなり見せ、ちょっと驚きです。最終的に初日は1分45秒053までタイムを縮めました。今年のレギュレーションではリアウイングが小さくなっているにもかかわらず、昨年プジョー908のペドロ・ラミーが記録したレース中の最速ラップ、1分44秒536に迫る勢いですから、アキュラのポテンシャルは相当高いといえます。

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 昨年はLMP2クラスのランキング2位という、大活躍を見せてくれたハイクロフト・レーシング。今年はド・フェラン・モータースポーツと一緒にLMP1クラスにステップアップします。引き続きテキーラ・メーカーのパトロンがメインスポンサーとなるのですが、ライム・グリーンのマシンは相変わらず派手で目立ちますね。ドライバーも昨年と同じコンビ。ラストスパートの鬼、デイビッド・ブラバムと、元インディカー・ドライバーのスコット・シャープの二人です。12時間という長丁場となる開幕戦セブリングでは、助っ人として2007年のインディカー・シリーズ&インディ500チャンピオンのダリオ・フランキッティも加わり、準備万端といったところでしょうか。今日は様子見だったのか、合計3セッションで14周しか走りませんでしたが、1分47秒599の3番手タイムをマークしています。

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 昨年、LMP1のアウディを相手に総合優勝を2回も達成したLMP2クラスのARX-01bは、今年も健在です。LMP2から出場するフェルナンデス・レーシングは1分47秒559のタイムをマークし、ハイクロフトのP1マシンを0.04秒かわして2番手に滑り込みました。毎年、LMP1とLMP2クラスの間で激しい総合優勝争いが繰り広げられるALMSですから、P1アキュラ最大のライバルは、P2クラスのアキュラになるかも!? 昨年同様オーナー兼ドライバーのアドリアン・フェルナンデスとルイス・ディアスがドライバーで、開幕戦セブリング12時間では昨年のプチ・ル・マンに出場したミッチェル・ジョルダインJr.のメキシカン・トリオとなります。オーナーのフェルナンデスがジョルダインに、なにやらステアリングの説明をしていましたが、スイッチ類の多い現在のレーシング・マシンは覚えるのが大変そうです。

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 さて、フェラーリVSポルシェの熾烈な優勝争いが展開されているGT2クラスにも注目しましょう。ご存知の方もいると思いますが、今年からドイツの雄BMWがALMSに参戦します。オペレーションを担当するのはインディカーでもおなじみ、レイホール・レターマン・レーシング。ドライバーにはアメリカのスポーツカー・シリーズで実績を積んできたビル・オーバーレンとジョーイ・ハンドが選ばれました。「チームはこのテストに向けて一生懸命作業を進めてきたんだ。3日間のテストで様々なデータを得られると期待しているよ」と、オーナーのボビー・レイホールは気合十分です。日本で見慣れた3クラスとはまったく違い、エンジン・ダクトやオーバーフェンダーは、GT2ならではのデザイン。いろいろな種類のマシンが走り、混戦が予想されるGT2クラスなかで、BMWがフェラーリとポルシェの2強に加わっていけるか注目ですね。ポルシェの新車は明日レポートしましょう。

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 初日の合同テスト終了後に、午後7時30分からアキュラのLMP1マシン、ARX-02aの正式な発表会が行われました。ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント社長、エリック・バークマンが最初の挨拶を行い、アドリアン・フェルナンデス、ハイクロフト・レーシング・オーナーのデイトン・ダンカン、ジル・ド・フェランと、2009年にアキュラのマシンで出場するチーム・オーナーが挨拶しました。エンジンとシャシーの説明のあとは、展示されているARX-02aのカウルやパーツをはずして、マシン細部を公開。ALMS参戦3年目を迎えるアキュラの意欲作の全貌が明らかにされました。

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 マシンの細部を見ていきましょう。まずフロント・ノーズをはずしたマシン正面です。フロント・タイヤが異様に大きく見えますが、これは広角レンズでとっているせいではありません。実はリア・タイヤと同じ幅のものが採用されていたのです。ほんとうにびっくりしました。アキュラのNAガソリン・エンジンがアウディのターボ・ディーゼルに対抗する最大のポイントは、このフロント・タイヤのワイド化のようです。パワーや直線スピードで優位に立つターボ・ディーゼルは重量が重くコーナリングが得意ではありません。そこでアキュラはARX-01時代から得意としていたコーナリング・スピードに磨きをかけるために、幅広のフロント・タイヤを採用したのです。空力面でも攻めのデザインを採用し、レーシングカーで最もダウンフォースを稼ぎ出すボディ底面へ積極的に空気を取り入れるため、ノーズが高く持ち上げられました。空気の流れを阻害してしまうフロント下側のサスペンション・アームはモノコックに直接マウントされる手法、いわゆるゼロ・キールというF1でもおなじみの手法が採用する徹底ぶりです。

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 コックピットはLMP2のARX-01と同じように右側で、左側にP1用のリストリクターがついています。ハイテク化された現代スポーツカーならではのステアリングには、無数の操作系のスイッチが並んでいました。

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 エンジンはP2クラスからボア・アップされた4リッターの自然吸気を採用。ターボ・チャージャーがないため、アウディやプジョーのようなタービンに空気を送るペリスコープ型吸気口はありません。そのため、流れるような美しいボディデザインとなっています。随所にアキュラ独自のデザイン思想が盛り込まれたARX-02a。今回のテストで勢いをつけて、開幕戦からデビュー・ウインを狙ってほしいですね。