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アメリカン・ル・マン・シリーズ 第1戦 セブリング【三日目】フォト&レポート

<US-RACING>

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昨日に続き、セブリングは快晴となった。決勝をいよいよ明日に控えたアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)は、最終プラクティスのみで金曜日の日程が終了。ALMSの走行後は続々とサポート・レースが行われた。ツーリング・カー・レースのSPEEDワールド・チャレンジに始まり、アメリカ版ポルシェ・カップのIMSAチャレンジ、ヒストリック・トランザム、ロータリー・エンジンを積む異色のフォーミュラ・シリーズのスター・マツダ、ALMSの入門シリーズであるIMSAライト、入門フォーミュラのスキップ・バーバー・ナショナルと、午後6時30分までレースが目白押しとなっている。観客は様々なタイプのレース・シリーズを、一日で満喫することになるだろう。

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ALMSの走行は午前9時55分からの1時間のみ。各チームは明日の決勝に向け、最終チェックを行っていた。トップ・タイムをマークしたのは、やはりプジョー。昨日の予選は不運なハプニングによって、ポール・ポジションが幻と消えてしまったが、マシンの状態はまったく問題ないようだ。今日はステファン・サラザンに替わってニコラス・ミナシアンが、1分43秒978のトップ・タイムを記録。ゆるぎないプジョーのスピードに、死角はないのだろうか

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追いつけそうで届かないプジョーの背中。今日も0.259秒まで迫るが、結局プジョーを上回るほどの決定的スピードはなかった。しかし、昨日のプラクティスではプジョーを出し抜いているため、アウディにも一日の長があるはずだ。もしプジョーに不安があるとするならば、おそらく信頼性だろう。昨年のル・マン24時間でも速さを見せながら、信頼性に泣き、勝利を逃している。その点アウディには、2000年から2007年までセブリングを8連覇している実績に裏打ちされた信頼性がある。果たしてアウディはプジョー相手にどんな戦略で戦うのか注目だ。

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日を追うごとに速さを増すペンスキーのポルシェRSスパイダー。今日はライアン・ブリスコーの6号車が1分44秒581をマークし、LMP2クラス・トップの総合3位に入った。続いて7号車も総合4位につけ、ペンスキーは2台揃ってLMP1クラスの2号車アウディを上回る。アキュラ勢トップのフェルナンデス・レーシングには、1秒690もの大差をつけ、決勝への準備は万全のようだ。昨年のレースはバッテリーのトラブルから大きく後退し、アキュラを取り逃がしたペンスキー。今年はどんな結末が待っているのだろうか。

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アキュラ勢はフェルナンデス・レーシングの総合6位が最高位だった。アンドレッティ・グリーン・レーシングは総合8位、ハイクロフト・レーシングは今日の走行を見合わせている。ここに来てポルシェに溝をあけられている感があるアキュラ勢だが、フェルナンデスは決勝に向けて、それほど心配していないようだ。「予選のことはもう忘れて、今はレースに集中しているよ。チェックリストに載っている項目は全て確認しているし、マシンもとても乗りやすくなっている。決勝に向けて良い感触を得ているんだ。レースは長くてスリリングなものになるだろう。昨年のレースより順位を上げ、トップでレースを終えたいね」とフェルナンデス。レースは蓋を開けて見なければわからないが、アキュラ勢が昨年見せた快進撃の再現を期待する。

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レギュラー・シーズンはコルベットのみが参戦しているGT1クラスだが、今年のセブリングにもアストン・マーチンが参戦し、同クラスを盛り上げている。また、お馴染みのブリティッシュ・グリーンが映えるイギリス・メーカーは、今シーズンからGT2クラスにも参戦。こちらは、イギリスの元上院議員であるポール・ドレイソンと、イギリスのGTやツーリングカーでタイトルを獲得した実績のあるブレウェル・モータースポーツとがパートナーシップを組み、ドレイソン・ブレウェルとしてフル参戦する予定だ。計画ではアストン・マーチンのヴァンテージで参戦することになっているが、マシンは鋭意製作中ということで、今回はGT2クラスの参加資格があるDBRS9を暫定的に走らせている。ニューマシンの登場は早くとも第3戦以降となるそうだ。

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昨年、セブリングを含む4戦に参戦したGT2クラスのロバートソン・レーシングは、パノス・エスペラントGTLMからフォードGTへスイッチしてきた。ドライバーを務めるのはオーナーのデイビット・ロバートソンとその奥さんアンドレア・ロバートソン、そしてデイビット・マリーの3人。フォードGTといえば、1960年代にフォードが打倒フェラーリを命題に作り上げたル・マン用コンペティション・モデルであるGT40を、現代風に解釈して開発されたマシンとして知られている。今回セブリングを走るフォードGTは、流れるような美しいボディ・ラインはそのままに、オーバーフェンダーとエアロパーツを装着することで、よりスパルタンな印象を与えるマシンに仕上げられた。残念ながら初レースということもあって、昨日の予選は31位。完全なプライベーター・チームのため多くを望めないが、新世代フォードGTの活躍を今後期待したい。ちなみに昨年までロバートソン・レーシングで使われていたパノスは、同チームから売りに出されている。

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レースの充実振りもさることながら、ALMSはホスピタリティも充実している。こちらはパトロンのホスピタリティ。昨年インディカーの会場で見たときにも、その規模に驚いたが、ALMSに来てさらに規模が大きくなっている気がした。今回パトロンはこのホスピタリティだけではなく、パトロン・ガールとALMSドライバーのバレーボール対決、ビキニ・コンテストやライブ・コンサートなど、レース以外のイベントを積極的に開催し、観客を楽しませている。

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もちろんメーカー系のホスピタリティも充実している。アウディのホスピタリティはなんと2階建。今年はプジョーが参戦するためなのか、昨年の1階建て造りからバージョン・アップした。F1のモーター・ホームが良い例となるが、ヨーロッパ系のチームはホスピタリティなどの外観に、とても気を使っていることがわかる。会場の雰囲気はアメリカン・オープン・ホイールのそれとは、まったくと言って良いほど違う。

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プジョーもアウディに負けていない。2階建てではないものの、トレーラーを中心にして両サイドへ大きなテントを広げ、巨大なホスピタリティ・スペースを確保している。コース上で激しく火花を散らすプジョーとアウディだが、そっくりそのままホスピタリティ・エリアでも、バトルが繰り広げられているように感じてしまった。

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またプジョーは、他のチームがトレーラー式のガレージを使うところを、テント式の豪華なガレージを設営。パドック・エリアでもひときわ目立っていた。明日はいよいよ決勝。果たして誰が12時間後に栄光のトップ・チェッカーを受けるのだろうか。