Roger Yasukawa's

残り7戦でタイトルの行方は? 佐藤琢磨が勝てそうなレースは・・・

画像8月に入り、2011年シーズンも残り7戦となりました。これまでのレースの流れを見ると、ランキング2位のウィル・パワーに38ポイントの大差をつけているダリオ・フランキッティが有利に感じますが、最終戦までタイトル争いはもつれ込むのではないのかと予想しています。昨年の折り返し点ではウィルが追われる立場でしたが、今年は逆転。今回のコラムでは、これまでのレースを振り返りつつ、シーズン後半戦を占ってみることにしましょう。
 

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開幕前の僕の予想では、ウィルが開幕からロード&オーバル両方で圧倒的なスピードを見せつけるだろうと考えていました。もちろん、その背後にはダリオがぴったりつけて、昨年のようにこの二人がシリーズ・タイトルを争うシナリオを想定。しかしダリオは開幕戦セント・ピーターズバーグでみごとな勝利を飾ってから、コンスタントにトップ5フィニッシュを続け、シーズン半ばでこれだけのポイント差を築くとは予想していませんでした。前半戦を振り返ってみて、このポイント差を表現するとしたら“さすがベテラン”という一言に尽きます。
 

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昨年に引き続き、今年もダリオVSウィルというイメージになっていますが、実際のところダリオは、チームメートのスコット・ディクソンでさえ寄せ付けないほどの速さと、安定性を維持しています。かつてスコットはチームメート・キラーと言われていたほどで、トーマス・シェクターやダレン・マニング、ダン・ウェルドンなど、一緒になったチームメートはうまく実力を発揮できない時期がありました。今年はその立場が逆転してしまったように感じるほど、ダリオの走りが突出しているように思います。
 

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一方のウィルは、テキサスの第2レースでオーバル初優勝を飾ったものの、去年と比べてミスが多くなっているように感じています。特にオーバル・レースでポイントを引き離されてしまった上に、得意とする市街地のトロントではリタイアしてしまいました。昨年以上に安定感の無い走りが後半戦の巻き返しを難しくさせる恐れがあるので、残りのレースは勝てない展開であっても表彰台を目指さないと、チャンピオンを獲得するのは難しそうです。
 

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ランキング3位にはスコットがつけていますが、ダリオとのポイント差は106ポイント。よほどのことがない限り、残り7戦で逆転するのは不可能と思われるだけに、スコットはダリオをサポートしつつも、今年はまだ勝てていないので毎回勝ちを狙うレースをするでしょう。
 
4位には、開幕直前にシートが決まったトニー・カナーンが入っています。ミルウォーキーやアイオワでは勝利を目前にし、あと一歩足らずにレースを制することができなかったのは残念。ベテランらしい走りでKVロータスのチームを引っ張っていて、今季2度ポール・ポジションを獲得しているチームメートのTakuにとっても、強い味方になっていると言えます。
 

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ランキング5位には、地味〜に淡々と上位フィニッシュをこなしているオリオール・セルビアがいます。毎回首位争いに関わってくることはなくても、ちゃんとこの位置を確保しているのはさすが。コンスタントにフィニッシュすることが重要であることを、まさにオリオールが証明してくれているような感じです。
 

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ということで、ここからは今シーズン後半戦の話になりますが、残りの7戦はロード&ストリートが4戦に対して、オーバルが3戦。インディ・ジャパンがロードに変更されたことによって、ウィルにとって吉とでるのかどうかが見所になると思います。全体的に見るとオーバルのレースに関しては、ガナッシ勢に軍配が上がっているだけに、オーバルが少なくなってダリオは不利かと思いきや、今年はロード、オーバルに関係なくコンスタントに速いので、どちらでも来いという感じかな?!?
 
昨年の後半戦とはまったく異なり、追う立場となったウィルとしては、レースを勝ちにいかなくてはいけない反面、リタイアに繋がりそうなリスクの高い戦略は回避しなければなりません。チーム・ペンスキーとしても、2006年にサム・ホーニッシュJr.がタイトルを獲得してからシリーズ・タイトルを逃したままなので、今年はかなり気合が入っていると言えるでしょう。
 

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それを裏付ける出来事として、今までずっとエリオ・カストロネベスのレース・ストラテジストだったティム・シンドリックが、トロントからウィルの担当になりました。ティムはロジャー・ペンスキーの右腕とも言える人です。ペンスキー・グループのレース部門であるペンスキー・レーシングの社長である彼が12号車の担当になるということは、それだけウィルに期待をかけていると言っても過言ではありません。
 

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チーム・ペンスキーは2006年にタイトルを獲得して以来、2008年から3年連続でガナッシに奪われ、ダリオが2007年にアンドレッティ・グリーンでチャンピオンになった年も含めると、4年連続で王座を逃していることになります。タイトル奪還を目指し、レースが無いオフ・ウィークも懸命にマシンの開発に専念していることでしょう。
 

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タイトル争いのキーとなるのは、恐らく次の4レースになると思います。まずは今年初開催となるボルチモアの市街地レースと、急遽ロード・コースでの開催となったインディ・ジャパンで、データがまったくありません。さらにニュー・ハンプシャーの1マイル・オーバルと、ラスベガスの1.5マイル・オーバルは久しぶりの開催となり、最新のデータがないだけにまったく予想がつかない展開も考えられます。
 
単純に考えればボルチモアとインディ・ジャパンはウィル、ニュー・ハンプシャーとラスベガスはダリオが有利となるので、この4戦以外の3戦で、いかにウィルがダリオとのポイント差を減らすことができるかがポイントとなるでしょう。ちなみに昨年のミド-オハイオ(ロード)を制したのはダリオで、ソノマ(ロード)はウィルの圧勝、ケンタッキー(1.5マイル・オーバル)はエリオが勝ちました。
 

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20ポイント程度の差であれば、最後まで誰が勝つか予想できない・・・と言えるのですが、さすがに38ポイントともなるとダリオが有利なのは間違いありません。しか〜し、昨年ソノマが終わった時点でウィルは、ダリオに59ポイントもの差を築いていましたよね。そしてわずか4レースでダリオは逆転することに成功しました。
 
だからこそ、“Never say Never”なのです。絶対という保障はまったくないだけに、ダリオも最後まで気を緩めるわけにはいけません。ほんと、ベテランのダリオはミスが少ないだけに、厳しいな〜とは思いますが・・・。個人的には、今年こそウィルとチーム・ペンスキーに勝利の女神が微笑んで欲しいなと思いつつ、シーズン後半戦を見届けようと思っています。
 

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最後に、今季2度もポールを獲得したTakuはすごいですね! なかなか結果に繋がらず、歯がゆく感じているみなさん、まだ7戦もあるので、最後までぜひ応援してあげてください。参戦2年目となり、オーバルでもロードでも活躍するTakuは、残り7戦で絶対に表彰台、いや勝つチャンスだってあると思います。
 
僕が期待しているのは、ニュー・ハンプシャーです。今年のKVのショート・オーバルのマシンはすごく調子が良いので、アイオワでのリベンジも可能だと僕は信じています。それに、表彰台の頂点に立つときは僕もスポッターとして彼をサポートし、その場に立会いたいという、自分自身の思いもあります。
 
これからの7戦、タイトル争いをする二人は各レースを大事に戦っていかなくてはいけませんが、チャンピオンシップ争いから脱落してしまったドライバーの中には、大きな博打をしてでも勝ちたいと考えているドライバーがたくさんいると思います。まったく予想できない、おもしろい展開のレースが起こることも、十分にあると言えるでしょうね。ほんとうに楽しみです!