Roger Yasukawa's

Takuの初PPのカギとなったコールド・タイヤでのダッシュ

画像オーバル3連戦を終え、ようやくホッと一息できたのもつかの間、今週末のトロントから再びロード&ストリートが始まりますね。昨年までは3週連続でレースが続いても、軽いフットワークでいけたのですが、今年は3週目になるとかなり辛く感じます。老いぼれてきた証拠でしょうか・・・・?!?(笑) 特にナイト・レースはインタビューやレポートを終えると深夜なので、ほとんど寝る間もなく空港に向かわないといけません。これはかな〜りつらい。ん〜ドライバーで居た時の方が楽だったな・・・・・。
 

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3連ちゃん最後のレースとなったアイオワでは、Takuが日本人として記念すべきインディカー・シリーズの初ポールを獲得! スポッターとしてTakuをサポートする僕も、自分のことのように嬉しかったです!! レースは残念ながら表彰台を目前にクラッシュで終ってしまいましたが、テキサス、ミルウォーキーと今年はものすごく進化しているので、後半戦のオーバルでは必ず表彰台に上がってくれるでしょう!
 
ある意味、オーバルで良いパフォーマンスを発揮しているKVロータスのチーム体制を考えると、インディ・ジャパンがロード・コースになってしまったのは非常に残念。もちろんTakuはロードでも活躍してくれると思いますが、6回参戦した僕にとっても最後のインディ・ジャパンですし、今年はオーバルで一緒に戦いたいと思っていたので・・・・・・。
 

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さて、今回はTakuの初ポール・ポジションを記念し、どうやって彼がポールを獲得したのか、その状況を解説したいと思います。まずはじめに、オーバルでポールを獲得するための基本的な条件として、ルーズ(オーバーステア)のクルマをねじ伏せるテクニックが絶対不可欠だということを覚えておいてください。
 
どんなコースでも、計測が始まる前のウォームアップの間に、タイヤの内圧を理想とするところまで上げなければなりません。今シーズンの中で最小のアイオワは0.875マイルで1周が17秒ほどですから、およそ30秒〜45秒で理想との内圧に上げなければならず、そのためにはコースに進入したら直にコールド・タイヤでプッシュしなければならないのです。
 

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みなさん、今年に入ってからTakuがレース中に抜群のリスタートを決めているのをご存知ですか? オーバルを1年間戦って得た経験はここにも生かされていて、彼はコールド・タイヤでのアタックを得意とし、毎回自信をもってプッシュしています。
 
今回の予選でも出だしからプッシュしていったTakuは、ウォームアップ・ラップで他の選手をはるかに上回るスピードで走っていました。つまりアタック・ラップを開始する頃には、タイヤの内圧が理想的なポイントまで到達していたということです。ここで重要なのは、早い段階で内圧を上げすぎてしまうと、2ラップのアタックが終わるまでに新品タイヤのスィート・スポットを超えてしまい、逆にグリップを失ってしまう恐れがあります。今回Takuは、その絶妙なスポットを超えることなく、維持し続けることができたのです。
 

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その背景には、予選の序盤にアタックしたチーム・メートのトニー(カナーン)からのフィード・バックも大きく影響し、トニーはアタックした際、予想よりもルーズだったことを伝えたのでしょう。トニーの前にアタックしたディクソンも最後までルーズになってしまい、めずらしく下位グリッドに沈んでしまったように、あまりにルーズなマシンだと、ねじ伏せるどころか最後までその状態が続くことになり、内圧を上げるどころではなくなってしまいます。
 
ウォームアップから予選アタックに突入したTakuのマシンは、路面に吸い付くかのように滑らかな走りを披露し、スピードは一人だけ飛び抜けて両ラップとも180mph平均を超えるスピードを叩きだしました。まったく他を寄せ付けないスピードを獲得できたのは、Takuのドライビングはもちろん、チーム戦略も良かったと僕は見ています。
 

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今年のオーバルでKVは、昨年よりもかなり予選をアグレッシブに攻めていて、特に今回は最初のプラクティス中に予選のシミュレーションを3度も行なっていました。普段は2回の予選シミュレーションで本番に挑んでいるところ、今回はプラクティス終了間際にニュータイヤを投入して、最後の微調整を行なったのです。この3度目のアタックをしたことによって、Taku本人もコールド・タイヤでの走りを十分にシミュレートできたこと、そして何よりもエンジニアにとって重要な細かいデータが採集できたと思います。
 
オーバルの予選はドライバーの技量も必要ですが、それと同じくらいにエンジニアの鋭い勘が必要です。空気温度、路面温度、湿度、風向きなどの様々な要素を取り入れて、ダウンフォースの量やドラッグ(空気抵抗)とのバランス、ギヤ比、タイヤの内圧を設定します。一番大切なエンジンとトランスミッションが適切な温度にするための設定なども、ほとんどが経験と感覚で、様々なデータを頼りにこの数値を決めなければなりません。特にトランスミッションの温度を適切な設定にしておくことによって、駆動系にかかる負担が減り、よりスムーズにリア・タイヤが前に蹴りだしてくれます。
 

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このように色んな要素が必要とされるオーバルの予選は、ある意味もう一つのレースと言えるでしょう。レース・セッティングとはまったく異なる内容で、予選で速いマシンを作るということは、ドライバーのテクニックとフィード・バック、そして長年にわたって築かれたエンジニアの勘も重要となるのです。
次戦からはロード&ストリート・コースが続きますが、オーバルの予選に対して、ロードでは特にドライバーの技量が要求されます。久しぶりのロードを楽しみにしているTakuは、必ずロードのレースでも良い走りを披露してくれるでしょう!
 

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今回は予選について解説しましたが、早くTakuが表彰台の頂点に立つ日を楽しみにしています! 
 
いよいよ後半戦、残りのレースもGood Luck Taku!!