Roger Yasukawa's

開幕戦で見えた2011年のインディカー・シリーズ

画像2011年インディカー・シリーズが、ついにセント・ピーターズバーグの市街地コースで開幕しました。新たなシーズンを迎え、移籍したドライバーや新規カラーリングで挑むチームも多く、新鮮に感じた開幕戦でしたね。昨年はレース当日に前代未聞の豪雨に見舞われ、決勝は月曜日に順延となってしまいしたが、今年は連日快晴に恵まれたレース・ウィークエンドでした。
開幕前の一番大きなニュースは、やはり大御所ベテラン・ドライバーのトニー・カナーンが、KVレーシングから参戦を発表したことです。最後のさいごまで交渉し続けたトニーにとって、ようやく努力が実った感じで、ライバルのドライバーもトニーのシート獲得を歓迎していました。トニーがKVレーシングに加入したことによってチームのポテンシャルがさらに高くなり、我らがTakuにとってもプラスになることでしょう。
今回のコラムでは、波乱の幕開けとなった開幕戦を振り返ってみたいと思います。
まず僕が気になったのは、今年から予選のタイヤが各ラウンド1セットと限られ、必然的にレッドで予選を走らなければならなくなりました。セッション途中でタイヤを交換することができないので、ある意味各ラウンドが一発勝負のタイム・アタックになってしまったと言っても過言ではありません。
レッド、ブラックに限らず、どんなコンパウンドのタイヤでも最初の2〜4ラップがスィート・スポットなだけに、昨年のようにまずはブラックでアタックし、コース・コンディションの様子を見て・・・という戦略を今年は取ることができなくなりました。

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それはつまり、レッド・タイヤを中心としたマシンのセット・アップを作り上げなければならないことを意味していて、当然のことながらレースにおいてもレッドをメインに使用することになります。ところが、3セットしかないレッドをプラクティスで事前に使用できないことから、いかにブラック・タイヤでロスの少ない効率的なセット・アップを進められるかが大きな課題となってきました。
昨年は開幕からレッドでもブラックでも、ウィル・パワーが断トツの速さを見せていましたね。今年の開幕戦を見た限り、それほど他のドライバーとの差が大きくなっていなかったので、ロードや市街地コースで誰が勝つか、予想できない展開になっていくような気がします。もちろん、そうじゃないとおもしろくないんですけど!(笑)

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次に気になったポイントは、スタート直後にトップ・コンテンダーのドライバーが巻き込まれたスタートについてです。今年からは最初のスタート時と同様、再スタートの時も2列に並ぶダブル・ファイルのリスタートが導入され、同時にグリーンフラッグを振られるポイントがだいぶスタート・ラインに近づくことになりました。オーバルでは良いと思っていたのですが、市街地のコースでは多重クラッシュの原因になりそうだという予想が、的中してしまった感じです。
特にセント・ピーターズバーグは、幅広いフロント・ストレートに対して1コーナーがタイトで、20台以上ものマシンがいっきに進入しようとすると、誰か一人が小さなミスを犯しただけで多くのドライバーを巻き込んでしまいます。さらに、ブレーキング・ポイントの周辺には滑走路の線があり、太い白線の塗料がスリップの原因となるので、普段のブレーキング・ポイントと同じようにブレーキを開始しても、マシンが止まらない場合があったりするのです。

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今回は昨年のソノマ以来、ほとんどのドライバーにとって約6ヶ月ぶりのロード/市街地のレースだったわけで、最初のスタートはいつも以上に慎重だったはずですが、いつもと違うグリーンのタイミングだったせいか、エリオの判断ミスによって多くのドライバーが戦線離脱となってしまいました。その後のダブル・ファイルのリスタートでも1〜2コーナーで接触が相次ぎ、セント・ピーターズバーグの特徴からして、今回新しいリスタート方式を新しく採用するには最悪のコースだったと思います。もしかしたら次の常設ロード・コースであるアラバマでは問題が生じないかもしれませんが、その結果次第では再検討が必要になるでしょう。

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レースはディフェンディング・チャンピオンのダリオ・フランキッティがベテランらしい走りを披露し、昨年市街地で無敵のスピードを見せたウィルを突き放して優勝しました。ウィルはブラック・タイヤでのバランスを思うように引き出せていなかったものの、しっかりと2位でゴールしてポイントをゲット。無理をしない安定した走りを見せたウィル、ベテランのような“味”のある走りを今年は見せてくれそうですね。

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3位でゴールしたのはKVに移籍したばかりのトニーで、終盤にHVMのシモーナ・デ・シルベストロとバトルを繰り広げてくれました。トニーが22歳の女の子に負けてしまうのか、みなさんもドキドキしたと思いますが、新チームでのこれからを考えれば絶対負けられなかったはず。片やトニーにエンジニアを奪われたシモーナちゃんとしても、やる気満々といった感じで好ファイトでしたね(笑)。

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そして、5位で自己ベストを更新してゴールしたのは、Takuでした。Takuは3月11日に起きた東日本大震災の被災者の方々を思い、“With You Japan”を立ち上げて走りました。彼の走りに勇気づけられたみなさんも多いと思いますし、次戦のアラバマは初めて予選トップ6に入った得意なロード・コースです。メカニカル・トラブルに見舞われた昨年のリベンジを晴らすためにも、熱い走りを期待したいですね!

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さて、最後になってしまいましたが、この場を借りて改めて東日本大震災の被災者の方々へ、お見舞いを申し上げたいと思います。一日でも早くみなさんの生活が元に戻れるよう、アメリカから少しでもご協力できることをいつも考えて、応援し続けたいと思います。
みんながんばれ! We are with you!!