Roger Yasukawa's

ステップ・アップにはインディ・ライツが一番

画像2009年インディカー・シリーズも、気がついたら3分の1が終了。インディアナポリス500のポール・デーから数えると、5週間連続で予選やレースが続き、先週末は久しぶりのオフでしたね。

ドライバーやチーム・スタッフにとっては、シーズン中盤から後半戦までの体力を養うための、大切な休日になったと思います。とは言っても休めたのは週末だけで、ほとんどのチームは先週のテキサスのレース後、すぐにテストをしていました。

ルールでテスト日数の制限があるだけに、各チームはそれぞれのプログラムに沿ってシカゴやワトキンズ・グレン、そしてリッチモンドなどでテストを実施。チームにとって、シーズン後半戦に使用する大切なデータを採集するテストとなったことでしょう。

先週末はレースがなかったので、今回はインディカー・シリーズへのステップ・アップ・カテゴリーである、インディ・ライツのシリーズやドライバーについて、少し紹介したいと思います。

インディ・ライツは1986年(当時の名前はアメリカン・レーシング・シリーズ)にスタートし、インディカーへの登竜門として多くの優秀なドライバーを輩出してきました。シリーズ・タイトルを取った主なドライバー・リストをみると、ポール・トレイシー、ブライアン・ハータ、グレッグ・ムーア、トニー・カナーン、クリスチアーノ・ダ・マッタ、オリオール・セルビア、スコット・ディクソン、タウンゼンド・ベルなどなど。

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日本人ではインディ・ライツで初優勝を遂げた野田秀樹選手や、2勝した服部茂章選手、3度表彰台に立った服部尚貴選手などが参戦していましたね。昨年、日本人のインディカー・レース最高位フィニッシュを記録したヒデキも、2007年にランキングに2位につけていますが、この時はインディ・プロ・シリーズと呼ばれていました

実はこのインディ・ライツ・シリーズ、CARTが2001年いっぱいで運営を終了することになり、その主要なスタッフがIRLへ移籍して2002年にスタートしたのがプロ・シリーズなのです。当時、ニッサンのインフィニティ・エンジンを使用していたことから“インフィニティ・プロ・シリーズ”とも呼ばれていて、インディ・プロ・シリーズとなったのは2006年のことでした。

IRLのステップ・アップ・カテゴリーとして再出発したプロ・シリーズでしたが、当時はできたばかりで全体のレベルが低く、インディ・ライツの優秀なチームやスタッフがアトランティックへ移行したため、僕はアトランティック・シリーズに参戦。チームメイトのライアン・ハンター−レイらと戦っていました。

インディ・ライツの名前が復活したのは昨年、2008年からのことで、チャンプ・カーとIRLが合併したからです。CART時代と同じようにファイアストンがスポンサーとなり、“ファイアストン・インディ・ライツ”として再び大きな注目を集めるようになってきました。

ここ2〜3年はヨーロッパや南米から速いドライバーが参戦。以前のように、インディ・ライツという名前が相応しい登竜門シリーズになったのですが、ではなぜインディ・ライツが他のステップ・アップ・カテゴリーよりも、インディカーの登竜門として相応しいか、簡単に説明しましょう。

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最大の理由としては、やはりオーバルのレースが中心だからです。US Racingをご覧の方には今更言うまでもありませんが、オーバルのレースは経験がすべて! ロード・コースに関してはF3やGP2出身の方が、インディ・ライツよりも多くの経験が得られるかもしれませんが、ことオーバルに関しては、実際にオーバル・コースのレースに出て経験を積まないと、結果に繋がりません。

特に、僕のコラムを読んでいただいている方には、オーバルが他と違うゲームなのだということを、ご理解いただけていると思います。インディカー・シリーズは全17戦のうち、オーバルが10戦もあるだけに、オーバルでポイントを稼げないとランキング上位につけることはできません。それだけオーバルは重要であり、ステップ・アップにはベストなシリーズだと言っても良いです。

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現在、6戦が終わった時点でルーキー・ポイントのトップは、昨年のインディ・ライツ覇者でもあるラファエル・マトス。ペンスキーの2軍チームでもあるルクソー・ドラゴン・レーシングに所属しているとはいっても、F1経験のあるロバート・ドーンボスや、F3でマカオを勝ったマイク・コンウェイを差し置いてルーキー・ポイントを突っ走っています。これからロード・コースのレースが続くものの、ロング・ビーチでの快走を見る限り、ラファエルがルーキー賞を獲得するのは堅いと言えそうです。

そんな、若手ドライバーを育てているインディ・ライツ・シリーズですが、インディカーのチームにとっても、ライツのチームを所有したり、合併することによって大きなメリットが得られます。それはインディライツのチームを持つことで、プライベート・テストが可能な日数(通常は3日間)を最大6日も増やせるからです。

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ライツのドライバーにインディ・カーのテストをさせるのがIRLの目的で、ボーナス・デーはライツのドライバーが半日担当することになり、一石二鳥のシステムと言えそうです。現時点でインディ・ライツのチームを所有、もしくは合併しているチームはパンサー・レーシング、AGR(AFSとの合併)、HVM(MCRとの合併)などが、このシステムを使ってテスト日数を有向活用しています。

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では今季インディライツに参戦している中で、注目のドライバーはいったい誰か? 僕が気にしているのはAGRの兄弟チームでもあるAFSから参戦し、ランキング1&2位を独占するJRヒルデブランド(写真右)とセバスチャン・サーヴェドラ(写真左)です。

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その他に、次のダニカを目指す女性選手が二人も参戦しています。その中でも有望なのは、ホンダにCART時代の初優勝をもたらしたアンドレ・リベイロがマネージメントする、アナ・ビアトリズですね。彼女は資金難で参戦を中断していますが、なんとかスポンサーを獲得して復帰し、ステップアップを目指して欲しいところです。走りはダニカを上回るかもしれませんよ!

ヒデキの活躍を見てのとおり、このシリーズはインディ・カーへのステップ・アップとして最適なので、ぜひ日本からも挑戦して欲しいですね。費用に関してはピンキリですが、フル・シーズンの相場は$700