Roger Yasukawa's

開幕戦から大荒れとなったインディカー! ロングビーチは元チャンプカー組みが優勢?!

画像セント・ピーターズバーグで開幕を迎えたばかりのインディーカー・シリーズ。寒いインディアナポリスに住むドライバーやスタッフにとっては、長い冬眠から脱出したかのように、開幕戦が行われる温暖な気候のフロリダ州に来ると活き活きとしています。ロサンゼルスに住む僕としては、フロリダ州はアメリカ本土の正反対で移動に5時間以上もかかるので、あまり好きな土地ではありません・・・。

09年シーズンがスタートし、開幕戦を見る限り今年は最終戦まで、誰がチャンピオンの座を奪い取るかがまったく予想できないシーズンになりそうですね。開幕戦で最後にキッチリとまとめて、トップでチェッカーを受けたのはライアン・ブリスコー。ペンスキーのチーム力をあらためて実感するレース内容でした。

あまり元気がないな、と感じたのはスコット・ディクソンと武藤英紀。両選手は最大限のパフォーマンスを発揮できず、一緒に絡んだ場面もあって、悔しいレース内容になってしまったのではと思います。その反面、予想以上の走りをしたのはライアン・ハンター-レイとジャスティン・ウィルソン。二人ともロード・コースは得意としていたので、ある程度の期待感はあったものの、まさか優勝争いに食い込んでくるとは思っていませんでした。

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とくにライアンに関しては、ヴィジョン・レーシングとの契約を発表したのが、レース・ウィークの月曜日。多少の準備はしていたでしょうが、土壇場でクルマを用意して走ったことを考えると、ライアンの適応性の高さを実感しますね。ライアンは僕がフォーミュラ・アトランティックを走っていた時のチームメイトで、バーバー・ダッジ・プロ・シリーズに参戦している頃から仲が良く、レース後には祝福のメールを送っちゃいました。チームメイトだった7年前より、レース構成の考え方や最後までしっかりとクルマを大事に労っているところは、ドライバーとしてかなり成長したと思います。ライアンは基本的にオーバーステア気味のセット・アップを好むドライバーで、速いクルマを与えれば十分に優勝争いに食い込めることが証明されましたね。

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ジャスティンに関しては、前回のコラムでストリート/ロードで有力と書かせていただきましたが、レース・ウィークエンドをとおして一番安定してトップ3に入っていました。ジャスティンが走るデイル・コイン・レーシングは、これまで最小限の予算で無理をして2 台体制で走る事が多かったのですが、今年はしっかりと2台分の予算が集まるまでは、あえてジャスティンだけに集中しようと決断したことが良い結果に繋がっているのだと思います。オーバルでのパフォーマンスはまだまだですが、ロード・コースでは表彰台の常連になりそうです。

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開幕戦のレース内容は、“なんだか荒れたレースだな”というのが僕の感想です。しかし予選タイムをみると、トップから20位までの差はわずか1秒! となれば当然レースもそれだけコンペティティブになる=レースが荒れると言えるのではないでしょうか。だからこそ、今シーズンのロードや市街地のレースからは目が離せなくなりそうです。

開幕から1週間空いて、第2戦の戦いの場は、僕の地元でもあるロング・ビーチに移ります。僕が産まれた1977年にはレースが開催されていて、僕が初めてレースの現場に足を運んだのは、と言っても自分で歩いて行ったわけではないのですが、わずか生後6ヶ月の時の78年でした。それだけ思い入れのあるレースなだけに、今年は参戦に向けて頑張っていたのですが、今の時点では断念しなくてはいけないことがとても悔しいです・・・。

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そんな話はさておき、ロング・ビーチのコースは2002年にフォーミュラ・アトランティックで走った事があります。30年の歴史の間に何度かコース・レイアウトが変わっていますが、2000年前後からは同じレイアウトでレースが行われています。

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モナコGPやセント・ピーターズバーグの様にヨット・ハーバーや海岸沿いの通りを駆け抜けるレイアウトで、コースのど真ん中にはコンベンション・センターやイベント・スペースが設けられ、レースとは別にたくさんのイベントが常に行われています。今では市街地レースのビジネス・モデルともなっていて、週末の間は多くのファンやハリウッド・セレブがレース観戦に訪ずれ、彼らはここでパーティをやって盛り上がるのです。

コースマップ
http://www.gplb.com/downloads/09lbcircuit.pdf

コースの特徴は、セント・ピーターズバーグに似ています。低中速の直角コーナーと、2つのタイトなヘアピン(ターン2&ターン11)でできているコースで、市街地コースの中でもいたってシンプルなレイアウトだと言えます。このロング・ビーチに関しては、とにかくトラクションがかかりやすいセット・アップにするのがポイントです。

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最終コーナーのターン11はものすごくタイトで、ハンドルを持つポジションを持ち替えてハンドルを回さないと曲がりきれないくらい窮屈です。しかしハンドルの蛇角が増えるほど、加速時のアクセル操作をていねいに行わないと後輪がホイール・スピンを起こし、アクセルを踏みすぎればスピンしてしまう場合があります。要するに、ステアリングを少しでも回している以上、アクセルを思いっきり踏めないということです。だからこそ、いかに速くコーナーを脱出し、ハンドルを真っすぐの位置に戻してアクセルを全開にできるかが、勝負の決め手となります。

ロング・ビーチのコースで唯一安全なオーバーテイク・ポイントは、長いフロント・ストレート・エンドのブレーキング・ポイントとなるので、ターン11は一番遅いコーナーであるものの一番重要なコーナーでもあります。もう一つのパッシング・ポイントはターン9ですが、バック・ストレートはそれほど長くないので、ターン6〜8の区間で相手のミスを誘い、追い越すタイミングを自分から作ることがキーとなってきます。

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スタートやリスタート時にターン1の進入で、よく事故が多発する事があります。3台まで並べるフロント・ストレートからいきなりタイトになる1コーナーの出口は、まるでビール瓶の様に先が細くなるので、時には譲り合ってコーナーに進入しないと大きなアクシデントになることがあります。実際に僕が02年にフォーミュラ・アトランティックのレースに出た時は、スタート直後に大クラッシュがあり、10位から2位までミラクルなジャンプ・アップができたのでした。ラッキー!?!(笑)

では、最後にロングビーチGPの僕の予想ですが、やはり元チャンプカー組が前にくるのではと思います。その理由としては、ほとんどのIRLチームは2002年以来ロング・ビーチでレースをしていないので、最新のデータは持っていません。そんな中ペンスキーとAGRに関しては、昨年までALMSに参戦していたことでベース・データは持っているので、上位に食い込んで来ることは間違いないでしょう。

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以上のことを踏まえて、開幕戦であまりパッとしなかったのですが、昨年のロング・ビーチ覇者であるウィル・パワーを優勝候補にあげます。今年ペンスキーからエリオの穴埋めとして大抜擢されたウィルですが、ロング・ビーチまでにはエリオの脱税容疑の裁判にも判決がでていると思います。同じドライバーとしては無罪であってほしいと祈るばかりですが、判決がどうであれ参戦することが決まっているウィルにとってはキャリアで一番大事なレースとなるので、プレッシャーを感じているはずです!

まだまだシーズンは始まったばかりですが、今年も色んなドラマが生まれそうですね!!