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シーズン後半はさらに混戦!?リッチモンドで見た伏兵達の活躍

画像 伏兵陣の快走で見応えのあるレースとなったリッチモンド。いつもの顔ぶれだけではないトップ争いが、新生インディカー・シリーズを大いに印象付けてくれました。

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 最多記録タイの9回ものフルコースコーションが出され、大荒れとなったリッチモンド。実際、300周中102周もがコーションラップだったんですから驚きでしたね。クラッシュ数がもちろん多く、完走は26台中半分以下の12台。同一周回フィニッシュはたったの8台という結果が、いかに大荒れのレースだったかを物語っていると思います。僕も長年インディカーレースを取材してきましたが、これほどクラッシュが多発したレースというのはあまり記憶にないですね。それだけクラッシュが多かったものの、怪我を負ったドライバーがひとりもいないことも特筆に価しますし、シリーズの安全性対策が正しい方向性に向かっていることを示していると思います。とはいっても、1週前のアイオワではフルコースコーションが6回出ましたが、そのコーションラップ数はたったの57周。同じ1マイル以下のショートオーバルでも、ここまでレース内容が異なってくることを見て、改めてオーバルレースの奥深さを実感させられましたね。

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 さて、そんな大波乱のリッチモンド。優勝こそトニー・カナーンが今季初勝利を挙げ、トップ4まではいつもどおりの顔ぶれとなったものの、レース全体ではルーキーやチャンプカー組といった伏兵陣の快走が目立ちました。こういった新興組の押し上げがレースをよりコンペティティブなものとし、シリーズ全体のレベルアップに繋がっていくので大歓迎です。最初に魅せてくれたのがグラハム・レイホール。第2戦セント-ピーターズバーグですでに初優勝を挙げているので、伏兵という言い方が正しいかどうかは微妙なところですが、ただオーバルではここまでクラッシュが多く、やはりまだまだ経験不足を露呈していたことから、優勝争いをできるようになるまでには多少時間はかかるだろうと思っていました。しかし、リッチモンドでは予選で2列目3番グリッドを獲得すると、レース序盤は常に6番手につけ上位を虎視眈々の狙っている快走を見せてくれました。何より、毎周のラップタイムが非常に安定しているのには驚きましたね。急速にオーバルの走りをマスターしてきているようです。最後は133周目に単独クラッシュを喫してしまったものの、今後さらにオーバルレースでの可能性を示してくれた走りでした。一方で、チームメイトのジャスティン・ウイルソンもミルウォーキーに続く7位フィニッシュ。予選でのスピードなどはグラハムに比べまだアジャストしきれていないようですが、最後までしっかり走りきってポイントを獲得し続けているあたりはさすがベテラン。実際、ランキングでもグラハムのひとつ上を行く16位。チームメイトに比べ多少時間は掛かるかもしれませんが、その高いポテンシャルを感じさせました。

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 リッチモンドで一番光っていたのは、文句なしにジェイミー・カマラ。昨年まで武藤英紀と共にインディ・プロ・シリーズ(当時)を戦っていた27才のブラジリアンで、今年コンクエストから念願のインディカーのシートを獲得したルーキー・ドライバーです。そのカマラが、レース中盤に34周ものリードラップを奪いました。最初はピットストップのタイミングを外してトップに浮上したのですが、その後もトップ勢を従えて堂々のリードラップを奪っていた走りは本当に鮮烈でした。特に、カマラの師匠ともいえる同郷の大先輩カナーンの追撃にもまったくひるむことなかった度胸も素晴らしかったですね。レース後、カナーンが「ジェイミーには恩をあだで返された(笑)。でも、素晴らしい走りだったよ」と冗談を交えながら走りを絶賛しているときに、表情は本当にうれしそうで、弟分の成長を心の底から喜んでいましたね。グラハム同様、カマラも最後は単独クラッシュして若さを露呈したものの、今後に繋がる快走だったと思います。また、チャンプカー勢最上位5位でフィニッシュしたオリオール・セルビアも経験豊富なベテランらしい走りでしたね。序盤からトップグループで走行を重ね、大荒れの展開にも冷静に対応し、結局ダニカ・パトリックやマルコ・アンドレッティらを上回る5位フィニッシュ。オーバルコースにまったく対応できていない同僚のウイル・パワーとは対照的ですね。チャンプカー組では、グラハムと共に、オーバルコースで一番優勝に近い存在と言えそうです。

 他にも、開幕戦から毎戦驚かせてくれるEJビソはリッチモンドでもトップ10フィニッシュとその安定感は健在でしたし、ブルーノ・ジュンケイラも予選で9番グリッドを獲得するなど遅ればせながら上位に顔を出してきました。デイルコインのチーム力には疑問符がつくものの、実力者のジュンケイラあたりがもっと上位につけてくると、レースはより白熱したものになっていくはずです。最終的な順位こそ“ビッグ3”が上位を独占する状況に変わりはないものの、新興勢力が急速に力を付け始めてきたことを印象付けたリッチモンド戦でした。今後はロードコース戦も多く残っていることから、あっと驚くウイナーが誕生する可能性も十分ありそうです。新生インディカー・シリーズの本当の争いが、これから見られそうです!