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ついに開幕!今年も見所満載のインディ500

画像 いよいよ開幕した伝統の第92回インディアナポリス500マイル。インディカーシリーズ最大にして、全米中が注目する1年に1度のレース祭典は、今年も話題豊富です。そこで、今年のレースの注目点をちょっと見ていきましょう。
 今年で92回目を迎える伝統のインディ500は、先週末に行われたルーキー・オリエンテーション・プログラムでついに幕を開けました。毎年インディ500の開幕には本当に興奮するのですが、今年もいざ走行しているクルマを見ると、「ああ、今年も開幕したんだなぁ」と、改めて胸が高まってくるのを感じます。3週間もかけて行われる伝統のレースは、やはり他のレースとはまるで違う独特の雰囲気がありますし、これは世界広しと言えどもインディでしか体感できないもの。今年もまた、この雰囲気を味わうことができるかと思うと、今から本当に楽しみです。

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 さて、そんな今年のレースですが、話題は例年以上に豊富です。まずは、何といっても今年のレースが、シーズン前のチャンプカーとの統合により、12年ぶりに“真の意味でのインディ500”となることです。シリーズ分裂前最後の年となった1995年のインディ500は、あのジャック・ビルヌーブが優勝した歴史的なレースとなりました。それから12年、紆余曲折のあったオープンホイール界ですが、今年晴れてまたひとつのシリーズの下で、世界最高のオーバルマスターを決するレースとなったことは、とても喜ばしいことです。ここ数年は、「33台のグリッドが埋まるのか?」という声が毎年のように聞こえてきたものですが、今年は統合の効果もあって38台がエントリー。これで、第2週目に行われるインディ名物「バンプデイ」が俄然面白くなってきます。33台の決勝枠を巡る38台のアタック合戦は、恐らく近年にない激しいものになるのは間違いないでしょうし、涙あり、笑顔ありの様々なドラマが見られることでしょう。また、ここまでオーバルレースでは苦戦してきたチャンプカー組にとっても、インディ500はそれを巻き返すチャンスになるはずです。3週間の長丁場で決勝まで走行機会が多いインディ500では、チャンプカー組もしっかりマシンを作ってくるはずです。なかでも、ニューマン・ハース・ラニガンと、ウイル・パワー擁するKVレーシングの2チームは要注目ですね。特にウイル・パワーは先のルーキー・オリエンテーションでも武藤英紀を上回るラップを叩き出し、早くも適応能力の高さを見せています。チャンプカー組の逆襲にも注目してみたいですね。

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 とはいっても、現実的な優勝争いとなるとやはりビッグ3(AGR、ペンスキー、チップ・ガナッシ)に絞られることでしょう。その中で、今年一番の注目はダニカ・パトリックです。インディジャパンでの涙の初優勝が記憶に新しいダニカ。“優勝”というプレッシャーから開放され、今年は例年とは違い気持ちに余裕を持ってインディ500に臨める点は非常に大きなアドバンテージになるはずです。もともとインディのコースを得意としているダニカですから、今年はAGRのマシンもかなり戦闘力があるようですし、優勝の可能性も大いにあるでしょう。もしインディ500ウイナーになったら、それこそ全米中が大騒ぎすることでしょうね。ダニカ同様、いや、それ以上に僕が注目しているのはマルコ・アンドレッティです。セント-ピータースバーグ、インディジャパンと残念な結果に終わったマルコですが、ここインディ500はダニカ以上に得意にしているコース。2年前のインディ500デビュー戦でチェッカー直前までトップに立っていたあの走りは僕の中で鮮明な記憶として残っていますし、去年もダン・ウェルドンに接触されるまではトップを争っていたマルコ。今年はプラクティス初日にいきなりトップタイムをマークしており、やはりインディでのマルコはひと味違います。偉大な父マイケルが達成できなかった悲願成就に向け、今年はやってくれそうです。個人的には、マルコを本命に推したいですね。

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 もちろん、武藤にも大きく期待しています。インディ500をAGRというビッグチームで戦えるのは本当に素晴らしいことですし、チームリーダーのトニー・カナーンはもちろん、前述したマルコやダニカもインディのコースではマシンの作り方を熟知しています。彼らとデータを共有していけばおのずとマシンのセットアップも前進していくでしょうし、ルーキーの武藤にとってはまたとない体制です。カンサス戦後、「個人的にはインディ500に特別な思い入れはないんですが、チームはすごく意識しているので、レースが近づけば自然と僕もそういう気持ちになっていくんだと思います」と語っていた武藤ですが、走行を重ねるに従って気持ちも高まっていっているはずです。いきなり優勝というのはさすがに厳しいかもしれませんが、ぜひトップ争いを展開して、見せ場を多く作ってほしいですね。また、ロジャー安川はまだチーム体制が決まっていないようですが、インディジャパンで走ったベック・モータースポーツはエントリーリストには入っているので、あとは契約が最後の詰めの段階なのではと思います。ポールデイと予選2日目後から参加する「セカンドウイーク」組になるでしょうが、そこはベテランのロジャー。インディの走り方も熟知していますし、ぜひ決勝の33台のグリッドを獲得してほしいですね。

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 例年以上に豪華な顔ぶれとなった今年のインディ500ですが、ひとつ残念なのは、あのポール・トレイシーが入っていないこと。ただ、エントリーリストを見るとペンスキーが77号車として3台目をエントリーしています。当初はNASCARに去ったサム・ホーニッシュJrが乗るのではと噂されていましたが、本人がその噂を完全否定。となると、ひょっとしてペンスキー&トレイシーの強力コンビが復活? なんてことを期待しているの、僕だけですかね……。まだまだサプライズがありそうな予感です。