Kazuki Saito's

“チャンプ・カー北の国へ” 日本初・公道グランプリ開催への道! 第33歩>>裏方の努力なくしてレースなし

初めて実感した「舞台裏」の大切さ 
日本人が求めるクオリティは高い
 今年、初めてインディ・ジャパンの舞台裏を見て驚いたのは、なんといってもそのクオリティの高さだった。アメリカと同じレースを開催していても、現地のコースとツインリンクもてぎは、似て非なるもの。ホスピタリティが充実していると言えばいいだろうか。来たお客さんをもてなすという意味で、スタッフから施設にいたるまで、きめ細かい配慮が行き届いている。
 どんなものでもそうだが、日本人が要求するレベルというのは高く、大勢の観客に満足してもらうのは極めて難しい。何の不満もなく、イベントを楽しめて当たり前。できなければ非難され、大事なお客さんを失ってしまうことになる。北海道小樽グランプリの場合、すべてが仮設となるだけに、どれだけ日本人の要求に応えることができるか、これからじっくりと検討しなければならないだろう。最初は初開催ということで許してもらえたとしても、不備が続けば必ず観客は離れる。市街地レースという珍しさだけで、引っ張ることはできない。
 これまで、毎年メディアとしてレースばかり観ていただけに、このような舞台裏の状況など、ほとんど気にしたことがなかった。観客なくしてイベントとは言えず、それを支える裏方の努力なくして、レースというのは成り立たないと思う。その事実に、いまさらながら気付いたわけだ。モータースポーツのライターとして、この10年何を観てきたのかと、猛省するしかない。
 それにしても、日本でまったく馴染みのなかったオーバルを作り、10年もレースを開催してきたということは、とんでもないことだ。そのクオリティもそうだが、やはりホンダのような大企業でなければ、不可能だったと思う。しかし誤解のないようにひとつだけ言わせてもらいたいのが、大企業とはいえ、働いているのは同じ人間であり、オープンに至るまでの様々な苦労を見てきた僕は、当時、そこにホンダという後ろ盾をほとんど感じることはなかった。なんとか問題をクリアし、開業に漕ぎ着けようと奮闘していた人々の情熱を、今も思い出す。
 小樽の資本は小さい。だが市民の熱い思いは同じだ。

筆者近況
先週末は200万人以上を動員する北海道最大のイベント、YOSAKOIソーラン祭りを視察しました。1992年から開催して今年でちょうど15年目を迎えたこのイベントは、長谷川 岳さんという方が始めたのですが、以前ブログで紹介したとおり、この小樽グランプリは長谷川さんが初期に関わっていたのです。今年は札幌市内の31ヶ所で開催されていて、あっちこっちで道路を占有していたのは圧巻でしたね。
(オートスポーツ誌 2006年6月29日号に掲載)