Interview

HPD堀内大資氏インタビュー〜2008アメリカン・ル・マン・シーズン・レビュー〜Vol.2

<US-RACING>
先週の木曜日からお送りしているホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)のチーフ・エンジニア、堀内 大資氏インタビューの第2弾。2回目の今回は来シーズンからデビューするLMP1クラスのマシンとエンジンの詳細について迫った。アメリカン・ル・マン・シリーズの最高峰クラスに挑むアキュラは、いったいどんなマシンになるのだろうか?(インタビュアー:齊藤広之)

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すでにシーズンが終了し、来年に向けた活動が始まっていると思いますが、注目されるLMP1はどのようなマシンになるのでしょうか?

堀内 大資氏(以下:HD):「LMP1マシンのARX-02aはまったくの新車になります。エンジンについては基本的にP2の排気量アップという形で、P2の3.4リッターからP1の4リッターとしました。新しいマシンに合わせたモディファイを加え、P1のレギュレーションで定められたリストリクターを装着していますが、目標に近いパワーはでています」

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排気量アップでLMP1クラスのエンジン・レギュレーションに対応するということですが、具体的にどの点が変わっているのでしょう?

HD:「エンジンブロックやシリンダーヘッドに関してはP2のエンジンを踏襲していますが、排気量を3.4リッターから4.0リッターに上げるために、ボア×ストロークを変更しています。ボア(ピストンとシリンダーの径)を変えるためにピストンとシリンダーを新しくし、ストロークが変わるのでクランク・シャフトも新しいものです。エンジンブロックはP2と同じものを使っているため、クランクのセンターからピストンの一番上の部分まではP2と同一となり、コンロッドの長さが変わっています。ピストン、クランク、コネクティング・ロッドが4.0リッター用に変わりました」

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まったくの新車となるLMP1シャシーは、LMP2マシンと比べてどのような点がかわるのでしょう。クローズド・ボディになるなど見た目の大きな変化はありますか?

HD:「これまでのP2マシンはクラージュのモノコックを使い、その他すべての空力パーツやサスペンションなどを自前で製作していました。今回のP1はモノコックも自社開発となります。全てが新しい部品になっていますので、シェイクダウンから来年の開幕に向けてあらゆることを確認しなくてはいけません。P2で得られたデータやノウハウをP1に反映させた上、新しいアイディアも取り入れるチャレンジをしています。クローズド・ボディになるといった見た目の大きな違いはなく、オープン・ルーフでアキュラのマスクをしているLMP1のマシンとなります」

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来シーズンはレギュレーションでリア・ウイングの幅が狭くなりますが、マシンに及ぼす影響はありますか?

HD:「そうですね。ただし、プロトタイプ・スポーツカーはオープン・ホイールに比べて圧倒的にダウンフォースを生みやすい形状になっています。フロントの形状で大部分のダウンフォースや空気抵抗が決まってきますので、ウイングが小さくなることの影響はそれほど大きくはないと思っています」

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来年からはLMP1へ進出すると同時に、LMP2にも継続参戦するということで、二つのクラスに参戦するわけですが、HPD内のチーム体制に何か変化があるのでしょうか?

HD:「基本的にアメリカン・ル・マンは同じ担当者でP1とP2をやっていきます。ただし、P2に関してはこれからさき、HPDとして事業化を考えていますので、レース開発の主流はP1に移行します。次期インディカー・エンジンの開発や、次世代のALMSについても同じチームでやっていくことになるでしょう。コストアップを避けるために、効率のよい開発を実践しています」
(つづく)

この続きは2009年1月8日にお送りする予定です。