<US-RACING>
2週にわたってお送りしてきたホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)のチーフ・エンジニア、堀内 大資氏インタビューの第3弾。最終回となる今回は、今シーズンからインディカーに参戦している武藤英紀選手や、ホンダがインディカーに参戦し続ける意義をうかがった。そして激闘の2007年シーズンの総括を語っていただいた。
2011年には再びインディカーで開発競争が始まります。今後の展開として、競争の場を求めて始められたアメリカン・ル・マン・シリーズのプロジェクトに、何か変化はあるのでしょうか?
堀内大資氏(以下:HD):「基本的にアメリカン・ル・マンの方針は変えないつもりです。IRLはコスト面から開発競争を抑える方向へレギュレーションをもっていこうというアイディアが出ていますから、両方のカテゴリーをやりぬくということが理想です」
今シーズン、ホンダのスカラシップを受けてきた武藤英紀選手がインディカー・シリーズにデビューしました。第8戦のアイオワで日本人最高位の2位を獲得し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーにも輝きましたが、同じ日本人としてエンジニアの堀内さんはどう評価されていますか?また、過去の日本人ドライバーと比較してどういった違いがあるでしょう。
HD:「武藤選手はアメリカのレースに適した才能のあるドライバーだと思います。オーバルでいきなり走れるドライバーという点で、過去の日本人ドライバーにいなかったタイプではないでしょうか。今後ももっとIRLで活躍して、もてぎで優勝してくれると良いですね」
合併によってこれからアメリカン・オープン・ホイールはかつての活気を取り戻していくことと思いますが、ホンダとして今後どのようにインディカーとかかわっていくのでしょうか?
HD:「ホンダはオープン・ホイール・レーシングで勝ち続けたいという想いがあります。アメリカのインディカーはどうしても勝ちたいレースですし、今後も続けていきたいレースだと思います。昔、インディに参戦する準備をしていたころの話ですが、CARTのプロトタイプ・エンジンを本田宗一郎さんに説明する機会がありました。そのとき宗一郎さんに、『自動車レースいうのはスピードの競争をしなくてはいけない』と言われました。その言葉がとても印象に残っていて、今でもインディ500へ挑戦することにつながっています。今後もアメリカのレース=インディ500を、ホンダとしてどんどん続けていくべきだと思っています」
では最後に、劇的な幕切れとなった2008年のインディカー・シリーズを総括していただきたいと思います。
HD:「2008年はインディカーとチャンプ・カーが統合したことで、今まである程度マンネリ化していたレースが、おもいっきり飛躍したのではないかと考えています。レベルが上がって、インディカーのレース自体が面白いものに変わってきました。エンジンを供給する立場としては、ここ数年のワンメイク・レースの実績を踏まえ、安定したエンジン供給とレース中のトラブルをなくすという点で、非常にノウハウがあがってきました。今シーズン、ホンダ・エンジンを搭載したインディカーは440レース、スタートを切りました。レースでの使用距離の積算は 166