Interview

武藤英紀、凱旋インタビュー「来年はまず1勝を目指します」

<US-RACING>
9月7日のシカゴランドで2008年シーズンが終了したインディカー・シリーズ。シーズン最終戦の興奮がまだ覚めない9月10日、日本期待のルーキー武藤英紀が、ルーキー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを手に凱旋帰国を果たし、ホンダ本社で共同記者会見を行った。今シーズンから名門アンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR)でインディカーにフル参戦する武藤英紀。突然のシリーズ合併によりチャンプ・カーから強力なライバルがルーキー・タイトル争いに加わったなか、武藤は予選トップ10が8回、決勝では7回トップ10に入り、第8戦アイオワでは日本人初の2位を獲得するなど、初年度から大活躍してみせた。シリーズ終盤は苦戦が続き、チャンプ・カー勢からの猛烈な追い上げにあったが、見事にルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。激しい戦いとなった今シーズンを振り返った。

武藤英紀(以下:MH):今こうして1年を振り返ると、ほんとうに浮き沈みの激しいシーズンだったなと改めて思います。アイオワで自身初の2位表彰台を獲得し、そこから波に乗っていけると思っていたのですが、そのあとはなかなか思うような結果を残せず、ストレスが溜まるシーズンの終わりになりました。でも最後に、目標としていたルーキー・オブ・ザ・イヤーが獲得できた点については、良かったと思います。1年で悔しい思いをたくさんしたなか、来年につながる多くのことを学びました。

Q:多くのことを学んだというなかで、成長した部分と課題となった部分をそれぞれ教えてください。

MH:成長したと思うことは、チームとのコミュニケーションやエンジニアとのやり取りにおいて、英語力が向上したとことです。オーバルでは予選の上位に食い込めるようになってきましたし、予選に向けてのマシン・セットアップが自分でもわかってきたと実感しています。課題となっているのは、トラフィックのなかでの動きですね。乱気流をうまく理解できないままシーズンの終わりを迎えてしまいました。

Q:ルーキー・イヤーということでシーズン当初はエンジニアの意見を優先することがあったと思いますが、シーズンを通してエンジニアとの一体感は生まれましたか?

MH:そうですね。シーズン序盤では僕が「もう少しフロントのグリップが欲しい」と言えば、エンジニアは僕がどれくらいグリップを欲しがっているのかを把握できず、3必要としているところを5と捉えてしまう行き違いがありました。それが今ではお互いのバランスが取れるようになり、シーズン終盤はかなりうまくいっていたと思います。

Q:ピットの出入りについても課題があったということですが、それについてはどうですか?

MH:シーズン序盤は苦戦していましたが、第14戦ケンタッキーではアウト・ラップとイン・ラップが最速でしたし、最終戦シカゴランドでもプラクティス中のアウト・ラップとイン・ラップは僕がトップでした。残念ながら最終戦はアンダー・イエローのピット・インだけだったので、速さを活かすことができませんでしたけど、ピットの出入りについてはだいぶ自信がついてきました。

Q:前半戦はアイオワでの2位を含めて良い流れできていたと思いますが、後半戦で苦戦した理由は何だったのでしょうか?

MH:チーム全体でセットアップに苦しんでいて、まだ原因がうまくつかめていない部分があります。それが今一番の問題だと思っていますね。

Q:シカゴランドでは激しいデッドヒートの優勝争いとなり、タイトル争いもきわどいものとなりました。トップ2のディクソンやカストロネベスと武藤選手との間にレベルの差を感じましたか。今シーズン戦ってみて、来年はタイトル争いに加わっていく自信はあるでしょうか。

MH:今はその自信はないですね。彼らは数々の優勝を重ねていますし、彼らのレベルに近づいていくには、自分がまず1勝をして、次の勝利に向かってさらなる努力を重ねていく必要があります。1勝をあげることで、彼らに少しでも追いつけるのかなと思っています。

Q:来年、1勝目を挙げる自信はありますか?

MH:はい。その自信がなかったら、ここにはいません。

Q:では、1勝するためには何が必要だと武藤選手は考えていますか?

MH:オーバルではかならず走りづらいスティントがありますので、その時にいかにして順位を落とさないかということがあります。今年は乗りづらいスティントでいつも順位を落としてしまったので、それが来年の課題になります。

Q:改めてルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した喜びを聞かせてください。

MH:最終戦が良い結果であればもう少し喜べたと思うんですが、レースが電気系トラブルという形に終わってしまったので、獲得した実感があまりありません。

Q:チャンプ・カーとインディカーが合併した初年度の新人王という点についてはどう思いますか?

MH:そうですね。周りの人には、今までで一番ルーキーにとって難しいシーズンだったと聞いているので、誇りに思ったほうが良いといわれています。

Q:第2戦ではチャンプ・カー勢のグラハム・レイホールが優勝し、シーズン序盤からルーキー・オブ・ザ・イヤー争いにライバルが多いことは分かっていたと思いますが、シーズン後半に向かってチャンプ・カー勢の追い上げが激しくなっていくなかで、焦りなどはありましたか?

MH:シーズン中はあまりルーキー・オブ・ザ・イヤーのことを意識したことがなく、もっと早い段階でルーキー・タイトルを決まることができると思っていました。これほどタイトル争いがもつれるとは思っていなかったです。僕たちにはオーバルでのアドバンテージがあったなかでも、シーズン終盤に落としたレースが多かったため、ポイント差を縮められてしまいました。それでも特に焦りというものはりませんでした。さすがに最終戦で電気系のトラブルが出たときは焦りましたけどね。

Q:AGRというトップ・チームで1年を戦ったわけですが、改めてチームの印象をお願いします。

MH:今年はチャンピオンを逃したので一流チームとは言えないんですけど、もう少しチームの結束力がなければ、チャンピオンにはなれないのかなと思いました。ですが、個々に持っている力は大きいので、みんなの力がうまくあわされば、またチャンピオン・チームになれると思いますね。

Q:シーズン中はピット戦略がうまくいかない場面もありましたが、シーズンを戦い終えて武藤選手の中でピット戦略の引き出しは増えましたか?

MH:作戦はチームにまかせっきりになっています。ただチームの人が僕の走りを理解して作戦を立てるようになってきましたので、シーズン中盤からはピット戦略がうまくいっていたと思いますね。

Q:チームとしての課題は言えないということでしが、武藤選手自身は来年に向けてオフシーズンの間をどう過ごすかというプランはありますか?

MH:できるだけ車に乗る時間を増やしたいですね。それはカートでも、入門フォーミュラでも良いと思いますが、自分でそういう機会を作るようにして、少しでも勘が鈍らないように努力したいと思います。

Q:インディ500の予選では、車内調整をもう1ラップ早くやればもっと前のポジションに行けたという発言がありましたが、シーズンをとおしてレース中の車内調整というのはなれましたか?

MH:いいえ。どこのコースへ行ってもインディカーで走るのは初めてでしたから、コースが違えば調整するタイミングや場所も違ってきますので、今年の経験が来年に活きると思います。

Q:表彰台を獲得した後と前では、レースに対する受け止め方が変わりましたか?

MH:自分自身では何も変わっていません。ですが、僕の名前を呼んでくれるアメリカ人のファンが増えたかなと思います。

Q:インディカー・シリーズはオーバルのほかにストリートや空港などの仮設コースがあります。そういったコースはテストの機会がないですし、結果を見てもまだまだこれからだと思いますが、仮設コースを走ることに関してはどう思いますか?

MH:タイムを気にせず、一台で走ればすごく楽しいと思いますが、実際には競う相手がいて、順位が下だとストレスが溜まります。でも、純粋に走る楽しさというのは感じました。市街地もそうですし、特にエドモントンはエンジョイしましたね。

Q:体力的にはどうでしたか?

MH:そうですね。第2戦のセント・ピーターズバーグが一番タフだったかもしれません。僕のマシンの車高が低く、雨の中でのコントロールを含めて、精神的にも体力的にも疲れましたね。

Q:バンピーな路面への対応はどうですか?

MH:マシンのセットが決まれば良いですが、今シーズンはなかなかうまくいきませんでしたね。

Q:エンジニアから良いセットアップを引き出せたということはありましたか?

MH:今年に関してはみんなで悩んでいましたね。オフ・シーズンに悪い点を振り返って、何か対策をしないと今年より悪くなってしまうと思います。

Q:今シーズンを戦って、ご家族からの応援もあったと思いますが、励みになったような言葉はありましたか?

MH:何かひとつということはないですけど、僕のウェブサイト宛にファンのひとがメッセージをくれたり、色々な人が応援してくれたことが力になりました。

Q:この後はサーファーズ・パラダイスのレースと来季につながっていくわけですが、最後に今後の抱負をお願いします。

MH:サーファーズ・パラダイスに関してはノーポイント・レースなので、チームのみんなとエンジョイして良い結果に結びつけば良いと思っています。来年はかならず1勝して、そこからランキング上位を目指します。