今年最初のロードコースとなった第3戦アラバマで、去年に引き続きライアン・ハンター-レイが2連勝、通算12勝目を達成しました。予選3位からスタートした彼は、チームメートのジェイムズ・ヒンチクリフを4周目にパス。目の前でミスを犯したポール・ポジションのウィル・パワーを抜いて16周目にトップに立ち、悪天候によって100分のタイムレース(90周から69周に短縮)となったレースで今季初優勝をマークしました。
「ほんとうはロング・ビーチがこのような素晴らしい結果になるべきだった。けどそれは今日だったんだ」とレース後に語ったハンター-レイ。前戦のロング・ビーチで2位を走りながら、無謀なパスによってチームメートのヒンチクリフを巻き添えにクラッシュ、ともにリタイアを余儀なくされていました。「元気を取り戻すのに、これ以上の方法はないね。素晴らしいよ!」と大喜びのハンター-レイ。「アンドレッティのワンツーでほんとうによかった。マルコも素晴らしい仕事をして、2位に入ってくれた。ロング・ビーチ後の1週間はほんとうに長くて、一刻も早くレースカーに戻りたかったんだ。レースではウェットとドライの両方をドライブしたが、チームはどちらでも僕が必要としているクルマにしてくれた。今日はミスしやすい状況で、すべてうまくいくことができたし、スリルがあったね。勝ててほんとうに良かった」
22周目のコーション中にほぼ全車がドライ・タイヤに換えた中、ウェット・タイヤのままセバスチャン・サーベドラが前を走り続けたことについては、「(パスするのを)ずっと我慢したよ」とハンター-レイ。するとその横にいたチームオーナーのマイケル・アンドレッティが、「学んだじゃないか!」と語り、記者会見場が笑いに包まれました。マイケルは「4台とも予選でトップ9に入った。ライアンは素晴らしいレースをしたし、9番手から追い上げていくマルコは見ていて楽しかったよ。たくさんのクルマをパスしたからね。素晴らしい追い上げだった。ワンツーは立派だ。ホンダ・グランプリでホンダが勝つのは、とてもわくわくする」と喜びを語っています。
2位はマルコ・アンドレッティで、昨年のサンパウロ以来となる表彰台獲得です。予選9位からスタートした彼は、4周目に6番手まで上がるも、17周目に再び9番手へ。特筆すべきはその追い上げで、22周目にレッド・タイヤに変更して以降、ウェットからドライへと変わっていく難コンディションの中、怒涛のパッシングを披露。35周目に2番手まで大躍進してフィニッシュしました。
「ラジオが壊れて使えなかったから、先が見通せなかった。自分の目標に向かって、集中して走るしかなかったよ」とマルコ。そう、今回彼はチームとの無線なしで戦っていたのです。「予選ではベストラップを台無しにして、スピードを見せることができなかった。こうして9位から追い上げることになったわけだけど、クルマは素晴らしかったね。ライアン(ハンター-レイ)がここで2勝したのもすごいよ。彼のクルマには歯が立たなかったが、最後の5周はとても良かった」。チームオーナーで父親のマイケルも「マルコは誇りに思うよ」とべた褒め。「とてもアグレッシブだったし、後半はペースもしっかりしていた。パワーもうまくパスしたし、ディクソンのプレッシャーにも耐えていた。ディクソンは勝つために、何でもやってくるのは知っていたはずだからね」
4年連続で2位フィニッシュしていたスコット・ディクソンは予選5位からスタートし、一時6番手までダウンするも3位でフィニッシュ。ここで唯一、5年連続の表彰台獲得です。「今日は興味深い一日だったね。雨でレースが遅れていく中、誰もが少し緊張しながら、何をやる必要があるかを理解しようとしていた。ここでウェットで走ったのは一度だけだけど、クルマはとても良かった。しばらくの間すごく濡れていた部分があったが、全体的にかなりうまくいったよ。2回目か3回目のリスタートで、いつものようにエリオが飛び出したのに、ペナルティがなかったのはがっかりだ。マルコとはいいバトルができたけど、あれ以上僕はできなかったね。ワンツーでフィニッシュしたアンドレッティ・オートスポーツを祝福するよ」
雷雨によって2時間半遅れでスタートした今回。ポールシッターのパワーはスタートから快調にトップを走行していたのですが、15周目のターン5でコントロールを失い、まさかのオーバーランを喫してしまいました。「我々のクルマはウェットでほんとうに速かったけど、ターン5でトラブルに陥ったよ」とその時の状況を説明するパワー。「徐々にブレーキング・ポイントを奥にしていったら、行き過ぎて濡れた部分につかまってしまったんだ。ドライになってからは、ダウンフォースがきつ過ぎたのかもしれない。コースオフした分を取り戻すことはできなかった」。5位でフィニッシュしてランキング・トップの座を守りましたが、優勝したハンター-レイが18点差まで迫っています。
予選14位から決勝に臨んだ佐藤琢磨は、スタート直後にターン1でカルロス・ムニョスがハーフ・スピンしたことで前車が急減速し、避けようとしてスピン。エンジンがストールして最後尾まで順位を落としました。その後最初のピットを終え、23周目には17番手までアップしていたのですが、26周目の再スタートでライアン・ブリスコーと接触して再度スピンを喫し、同一周回の最後尾となる20番手までダウンしてしまいます。コーション中の32周目に2度目のピットを終えた琢磨は、周回を重ねるたびに順位を上げ、39周目には13番手までジャンプ・アップ。48周目に最後のピットを終え、最終的に13位のままゴールしました。
「ここはけっこう追い抜きが難しいコースですし、14番手のスタートだったので、雨のコンディションで上にあがりたかったというのはすごくありました。僕としては雨が降っている中で、スタートしたかったです」とレース後に本音を語った琢磨。その気持ちとは裏腹に、主催者は観客にとって危険な雷雨が去るまで待つこととなり、雨が完全に止んだ状態でのスタートとなりました。「路面にはまだ十分な水が残っていたので、水しぶきはすごく、1コーナーやバックストレートはまったく見えなかったです。前で体制を崩したドライバーがいて、前方視界がない状況でいきなり前が迫ってきたので、とっさに危機回避したというか、ブレーキを踏んでハンドルを切り、そのままスピンしたということです」
「その後同一周回で復帰できたのですが、ウェット・タイヤがオーバーヒート状態になり、雨が降っていないと、路面が多少濡れていても踏ん張れないんですね。クルマがどんどん滑って行く状態で、ラインも一本でしたし、最初は我慢のスティントでした」と琢磨。2回目のコーションが発生したタイミングでピットインし、レッド・タイヤに交換して第2スティントに臨むことに。「スリックに換えてからは、リスタートで追い上げることができたんですけど、ブリスコーと残念ながら接触してしまい、また最後尾まで落としてしました。ドライではトップ・クラスのマシンではありませんでしたが、そこそこのペースで走ることができ、13番手で追い上げたところで時間切れでした」
ウェットの状態で一時7番手を走行していたロシア人ルーキー、ミハイル・アレシンは21周目にセバスチャン・ブルデイに追突されてスピン。周回遅れでレースに復帰した彼は63周目に自己ベストを出して追い上げていたのですが、66周目に単独クラッシュしてまたもコーションとなり、レースはイエローのままフィニッシュすることになりました。
マイケルが言うとおり、ホンダがタイトル・スポンサーとなっているアラバマ・グランプリ。ホンダのアラバマ工場の地元ということもあり、毎年多くのホンダ関係者が集まっていたのですが、エンジン・バトルが再開した2012年以来、2年連続でシボレーの後塵を拝していました。ホンダは今シーズンからツイン・ターボ・エンジンを投入し、開幕から2戦連続でポールを獲得していながら、勝利には恵まれず。今年からホンダ陣営に復帰したかつてのワークスチーム、アンドレッティ・オートスポーツが3戦目でついに初優勝を遂げ、2重の喜びを味わったことでしょう。
今シーズンの初優勝を獲得したハンター-レイは、マシンから降りて喜びを爆発させてましたね。ロング・ビーチのレース後に多くの関係者やファンから「あんたが悪い」と言われたらしく、さすがに気にしていたようです。前回はチームメートだけでなく、他のドライバーも巻き込んだので、勝ったから帳消しにとはいきませんが、そう簡単にできるものでもありません。そこには予測不可能な悪天候や、ウェットからドライに変わる難しい路面コンディションという要素もあったわけで、これもひとつのドラマかなと思うのです。激しい雷雨となった今回、レースがスタートできるのかどうかわからなかったこともあり、ほんとうに長い一日でした。というのもメディアセンターのインターネットが朝から不通となっていて、オフィシャルの大本営発表以外に情報を仕入れることができなかったんですね。その隙に30分だけ、これまでなかなか行けなかったバーバーさんのミュージアムを駆け足で回ったのですが、かつてバイク雑誌にいた僕にとって、最高のミュージアムでした! 次回は必ず一日早く入り、しっかりとこの目に焼き付けたいと思いますよ。
●決勝リザルト
●決勝ハイライト映像
●決勝ハイライト映像リミックス
●各ドライバーのオンボード映像