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コンウェイが40回目のロングビーチ・ウィナーに。佐藤琢磨はアクシデントに巻き込まれてリタイア

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記念すべき40回目のロング・ビーチのウィナーに輝いたのは、マイク・コンウェイでした。予選17位からの優勝は2000年のポール・トレイシー以来で、このコースで最も低いスタート位置からの勝利です。彼はスタートしてすぐに、前の佐藤琢磨に追突してフロントウィングにダメージを負い、19番手までダウンします。2回のピットで走り切る作戦だったチームは、22周目という早い段階でコンウェイを1回目のピットに呼び寄せ、ブラックからレッド・タイヤに換えてペースアップ。レースの折り返しとなる41周目には、9番手までポジションを上げました。
 

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53周目に最後のピットを終え、14番手でコースに復帰した彼の前方では多重クラッシュが発生、ピットからの無線が間に合って無事に回避することができました。グリーンとなった64周目に4番手で再スタートし、翌周にプッシュトゥパスを使ってウィル・パワーをパス。ついに2番手まで上り詰めたのですが、彼は冷静でした。前を行くスコット・ディクソンが燃料で厳しい状態にあると気付き、ピットに確認。予想どおりディクソンは残り2周でピットに入らなければならなくなり、労せずしてトップに立ったコンウェイは、真っ先に40回目のチェッカーを受けたのです。
 

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「17番グリッドからスタートし、毎回すべてのポジションで戦わなければならなかった。チームの戦略もよく、いいタイミングでピットへ呼んでくれて何台かパスすることができたし、リスタートでもポジションをアップできたよ。チーム全体の素晴らしい仕事だった」とコンウェイはレースを振り返ります。このロング・ビーチは2011年のアンドレッティ時代に初優勝したコースで、その時は20番手まで落ちてからの勝利でした。彼は翌年AJフォイト・レーシングに移籍したのですが、2010年インディ500で大クラッシュに見舞われて以来、オーバルには馴染めなくなってしまい、オーバルのレースから引退すると発表。オーバルを走らない=フル参戦の道を自ら閉ざしたのですが、昨年デイル・コイン・レーシングからデトロイトの市街地コースにスポット参戦する機会を得た彼は、みごと優勝したのです。今シーズン、エド・カーペンター・レーシングのオーナー、カーペンターがオーバルに専念する決断をくだし、ロード&ストリートにコンウェイを起用。「エドに、ほんとうに感謝している。このポジションに入れてくれたファジーズ・レーシングのみんなにもね」とコンウェイ。「とても素晴らしいコンビネーションだと思うし、みんなすごくエキサイトしている。すぐに勝てたことで、報われたのは素晴らしいことだよ。エドはオーバルで最高の走りをしてくれるだろうし、5月のインディがほんとうに楽しみだ。このようなチームの一人であることは素晴らしいね」
 

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2位でフィニッシュしたパワーも同様に予選下位、14番手からの追い上げでした。開幕戦を制した彼は今回も早目のピットインを行い、コンウェイと同じくブラックからレッドへと変更。上位勢が次々とピットへ入る中でスパートをかけ、32周目には4番手まで浮上していました。幸運だったのは目の前で立て続けにクラッシュした3台に巻き込まれなかったことです。「前にいたハンター-レイがインに行って僕も続いたんだけど、彼らはぶつかってヒンチクリフも巻き込まれ、僕はすり抜けることができた。滅多にないギフトを手に入れたよ。ありがとうってね。信じられない展開だった」とパワー。「14位からトップ5まできたからハッピーだ。2位でOK。ディクソンがいなくなった後、マイク(コンウェイ)はすごく速くなったよ。もしプッシュトゥパスがもう1回残っていればパスしようとしたのは間違いないけど、ターン1でクラッシュして終わっていたかもしれない。ま、いい一日になったね」
 

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昨年、インディ500という大舞台でインディカー・デビューを果たし、2位でフィニッシュしたカルロス・ムニョスが、フル参戦2戦目で3位フィニッシュしました。同郷コロンビアのヒーロー、ファン・パブロ・モントーヤを最後まで抑えきることに成功。「本来のやり方で3位を得たわけではなく、たくさんのアクシデントによるものだけど、これがレースだ」とムニョス。「何だって起きるんだ。特にこのコースで、インディカーでは何だって起きるよ。ほんとうに素晴らしいレースだったし、とてもハッピーだ」
 

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2008年のチャンプカー以来となるスタンディング・スタートが採用された今回。9回目のロング・ビーチで初めてポールからスタートしたライアン・ハンター-レイは、2010年に続く2勝目を狙い、快調にレースをリードしていました。54周目に最後のピットを終えたのですが、彼よりも1周後にピットへ入ったジョセフ・ニューガーデンがピットアウトすると、目の前でコースに復帰。タイヤが温まっていないニューガーデンの真後ろにつけたハンター-レイは、ターン2、3と立ち上がりでニューガーデンがホイールスピンしたのを見てターン4でインに飛び込んで追突し、チームメートのジェイムズ・ヒンチクリフが巻き込まれただけでなく、後続のエリオ・カストロネベス、佐藤琢磨、トニー・カナーンらも次々とヒットする多重クラッシュに発展しました。これまでに何度も同様の無謀なパスを繰り返しているハンター-レイ。「巻き込まれたみんなにはすまないと感じている」と言いながらも「レーシングドライバーは瞬間的にチャンスだと判断したら行くよ。勝ちたいからね」とコメント。また同じことを繰り返すつもりでしょうか。
 

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予選15番手の佐藤琢磨はブラック・タイヤでレースをスタートしましたが、ターン2でコンウェイに突っ込まれ、その反動で前車に追突するなどして20番手までポジションをダウン。6周目という早い段階でピットインすることを決めたものの、ウィングの交換に手間取って周回遅れの最後尾まで転落してしまいます。
 

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しかし新品のレッドに履き替えた琢磨は、トップ・グループと遜色ないスピードでどんどん追い上げ、6番手で最後のピットへ。3位に入ったムニョスのすぐ後ろでコースへと復帰したのですが、多重クラッシュに巻き込まれて左前のタイヤをヒット。無念の戦線離脱を余儀なくされたのでした。
 

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「(クラッシュに関して)何も情報がなく、何も見えませんでした」と琢磨はその時の状況を振り返ります。「ターン4から5にかけてずっと曲がっていて、ぎりぎりの外側を行くラインなので、そこを内側に行くというのは非常に難しいです。コースも狭くなって見にくいところで、最悪の状態でした。コーナーに入った瞬間に目の前に見え、できる限りの減速をしたんですが、間に合わなかったですね。そこをうまく抜けられたらなあと思うと、残念です」
 

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40回目のロング・ビーチ・グランプリが終わりました。この写真はレース前にトヨタのペースカーを撮ったもので、先頭がプリウス、2番目が75年の初開催時のセリカ、そしてLFAとまるでトヨタの歴史を見ているようですね。トヨタがスポンサーとなったのは80年のことで、以来アメリカで最も長い歴史を誇る市街地レースに発展。CART時代にトヨタはここで勝つことはできませんでしたが、インディカー参戦をやめた現在もこうしてスポンサーを継続していることは、ほんとうに素晴らしいと思います。40回目のレースもスポット参戦のドライバーが予選17位から勝つというドラマチックな展開となり、ファンも満足したことでしょう。今回の佐藤琢磨は残念ながらアクシデントに巻き込まれましたが、40回という歴史をこうしてあらためて見ると、このロングビーチで勝利したことはとても尊いことだと思えてきます。来年のレースが今から待ち遠しいですね!
 
●決勝リザルト

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●決勝ハイライト映像