INDY CAR

第15戦インディ・ジャパンのベスト・ショット&撮影裏話!

13年間ツインリンクもてぎのオーバル・コースで毎年撮影を続けてきただけに、その撮影ポイントに関してはね、そりゃあよく知っていましたよ(といってもお決まりのポイントですけど)。でも今年はそれこそ最初で最後のロード・コースでの開催となって、正直、戸惑ったのなんの。
 
だって、今まであんなに通ってたのに、一度もロード・コースでレースの撮影をしたことがなかったんです。1年を通してシーズン中はほとんどアメリカでインディカーを撮影してきましたから、フォーミュラ・ニッポンやGTといったロード・コースでのレース開催時に日本にいることは少ないし、チャンスもまったくなかったんですね。
 
今年の初夏、もてぎでのロード・コース開催が決定した時、アメリカ人のカメラマンに「撮影したことあるか?」と聞かれても「いんや、ねぇんだ」って答えるしかなく、むしろ僕自身も誰かに聞きたかったくらいですから。
 
ということで木曜日の午後には現地入りしてね、コースを下見しようとビクトリーコーナーに向かってからトンネルをくぐって90度コーナー、そしてヘアピンとV字コーナー、S字カーブと歩いていったら日が暮れちゃって。戻らなければならないのに真っ暗になって、どうやったら帰れるのかわからなくなっちゃったんです。そう、いい歳して完璧に迷子ですよ。
 
それでも遠くに光るグランド・スタンドのライトを目指し、90度コーナーの内側の観客席フェンスをよじ登ったりして、なんとか見覚えのあるオーバル・コースのターン1側にあるグランドスタンドまで到着。生還できてよかったー、という安堵感でいっぱいになりました。
 
この調子じゃあ先が思いやられるなってことでね、翌朝、明るいうちに残りの130Rからトンネルくぐって第5、第4、第3、第2、第1コーナーとちゃんとチェックし、スケジュールどおり午後から撮影に入ったのです。
 
まあ、距離感とか光の方向などのだいたいはつかめましたが、やはり“郷に入れば郷に従え”ということわざどおり、撮影経験のある先輩カメラマンの方々からもちゃんとアドバイスをいただきしたよ。ほんとお世話になりました。
 
決勝レースは撮影できるポイントが限定されるため、それまでにあのコーナーの外側やヘアピンに行くのがセオリーってことで、3日間で行く撮影ポイントを、決勝で撮る場所から消去法で引いていくわけです。レース中にはまず遠くて行けないところに、プラクティスの間で行かないといけないとかね。初日はコースマップとにらめっこしつつ、撮影に行きましたよ。
 
そのおかげでなんとか初日の撮影も順調に進み、2日目の2回のプラクティス、予選といったスケジュールでどこに撮影に行こうか先輩方のアドバイスを元に悩んでいると、あるマル秘撮影ポイントが話題に上がり、ぜひそこに行きたいということになったのです。
 
そこから撮影するには、ただ行けばいいという場所ではなく(それだと誰でもできちゃうわけですから)、脚立に立ってフェンス越しに撮影しなければなりません。そんな脚立なんて、フォトホールの位置が高いホームステッドには持って行くものの、まさか今回必要だとは思ってもいなかったのでね、脚立を持っている先輩方との交渉となったわけです。
 
口外禁止、他言無用、他のカメラマンや一般客に感づかれないことを条件に脚立が入っているクルマごとお借りし、「もしバレたら五体満足な姿でアメリカに戻れなくなるよ」と念を押され…というのは冗談で、気持ちよく貸していただきましたよ。
 
詳しい場所はマル秘なので今回お伝えできないのですが・・・・・・そこはマシンを上空から俯瞰撮影できるところでして、ロード・コースでは珍しい画というか写真というか、オーバル・コース上からロード・コースを通過するマシンを撮影できる、もてぎならではのポイントとでも言えばいいでしょうか(あ、わかっちゃった?)。
 
インディカー写真
 
そんな先輩方の温かいご好意に甘えることができたのでね、今回はそのマル秘ポイント、トンネルの上から(あ、いっちゃった)撮影したのが今回選んだ写真です。佐藤琢磨がちょっと攻めすぎて、コースからはみ出した瞬間なんですが、今回のブラック・タイヤはまったくの新スペックだったそうで、みんなグリップ不足で大変だったようです。
 
決勝レースでも先輩方のアドバイスのおかげでね、段取りよく撮影することができました。感謝です。ただ、せっかく撮影ポイントがわかったものの、インディ・ジャパンのロード・コース開催が最初で最後かと思うと、なんだかやるせないというか、切なくなってしまいますよね。
 
レース後の記者会見でホンダの伊藤社長が「今回が最後とは思っていない」と語っていたそうです。ぜひインディ・ジャパンが復活し、このツインリンクもてぎで再びインディカーを撮影できる日が来ることを、願いたいと思います。
 

画像

 
Photo & Text by Hiroyuki Saito
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 70-200mm f/2.8L IS ?USM
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/500
絞り値: F8.0
測光方式: 評価測光
ISO感度: 100
焦点距離: 200.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
 
※第15戦Pick the Winnerのプレゼントはこちらの写真となります。