INDY CAR

第12戦ニュー・ハンプシャーのベスト・ショット&撮影裏話!

インディカー写真
 
なんと2度目のPick the Winner当選者なしといった事態が発生したのでね、今回はレースにまつわるベストショットを選んでみなさんにお伝えしようと思います。
 
ホンダがCARTに参戦して2年目の1995年に初優勝を飾ったニュー・ハンプシャー・モーター・スピードウエイ。もちろんその名前は知っていたのですが、僕自身取材に行くのは今回が初めてだったので、どのようなコースなのか興味がありました。
 
取材初日は初の撮影だけに、コースの撮影スポットを探索。コースの形状はミルウォーキーを少し細長くしたような感じでバンク角度もそれほどなく、同じ1マイルでもさらに難しいショート・オーバルといった印象でした。
 
撮影に関してはコースの内側からだと各ターンで撮影できたのですが、ターン2の下にトンネルがあるため、ターン2からバック・ストレートはフェンスで遮られてアクセスすることができないんですね。でもレース中はそれほど欲張らなければなんとかなるくらい、インフィールドに撮影場所がありました。
 
コースの外側も比較的フォト・ホールは豊富だったし、ターン2のアウトサイドに設置されていた大きな広告ボードの裏側の上にも、梯子をよじ登って行ける撮影場所があるではないですか。ここから俯瞰でマシンを撮影することもできたりして、けっこう楽しいコースでした。
 
今回のニュー・ハンプシャーは初めてだったこともあり、いろいろ試行錯誤してかっこいい写真を撮影するといったことよりも、なんだかレースで起きたハプニングの方が多かったのでね、どちらかというその“瞬間を撮る”といったことが多かったような気がしますよ。
 
たとえば、その広告ボードの頂上に登って撮影した練習走行でのピッパ・マンのクラッシュや、レースのスタート直後のバック・ストレートでマイク・コンウェイとグラハム・レイホールがクラッシュ。そしてレース中盤、リードしていたダリオ・フランキッティと佐藤琢磨のリスタートでのクラッシュといったハプニングなどなど。
 
1マイルのショート・オーバルだったので、上のほうにいれば比較的どこからでもその瞬間を抑えることができたのですが、実は今回の極めつけはこれらのクラッシュではなく、個人的にはウィル・パワーの怒り沸騰シーンでした。
 
終盤に雨が降り続いてコーションとなり、その後リスタートするのかどうかといった場面でした。もうレースも終盤だし、路面もかなり濡れているからリスタートはないだろうってことで表彰台に向かって歩いていると、なんといきなりレースがリスタートしたんです。
 
この状況でか? と思っていたら案の定、ダニカ・パトリックがスピンし、ウィルや琢磨を巻き込むクラッシュが発生。リスタートは大混乱になってしまいました。するとウィルがフロント・ストレートで停車したマシンから飛び降り、ピット・サイドにいた僕の方に駆け足で向かってくるじゃないですか。で、目の前を通り過ぎてガレージの方に向かっていったと思ったら、なんとUターンしてグローブを脱ぎながらまたピットの方に戻ってきたんです。
 
するとペンスキーのPRを担当しているメリル・ケインや、インディカーのセキュリティーのドン、チャールズなんかもウィルの方に集まってきてね。「なんでこんな状況なのにリスタートをしたんだ!」って怒りながらヘルメットを脱ぎ、興奮しているウィルにメリルは「まあ、落ち着け」と。しかしウィルの興奮はまったく収まらず、ヘッドソックスをメリルに叩きつけちゃってね。
 
その場にたまたま居合わせた僕は、その様子をしっかり撮影するしかないなってシャッターを切り続けたのですが、ウィルの怒りはファインダー越しにもかなり伝わってきました。結局、怒り心頭のウィルはガレージの方に向かいながら、テレビに撮影されているのを分かった上で禁断のポーズをお茶の間のみなさんにお見せすることになったのでした。
 
その結果、ソノマのレースウィークエンドを迎える直前になって、3万ドルの罰金もしくはそれに見合う奉仕活動をしなければならなくなったウィル。けっこう高くついたかもしれないけど、命をかけた真剣勝負だし、ウィルにとってはチャンピオンを争っている最中だという意味でも重要だったので、彼にとっては当然のアピールだったのかもしれません。
 
13年ぶりの開催となったニュー・ハンプシャーでのレースは、いろいろな意味で波乱の展開となりましたが、来年は雨やハプニングの少ないレースになることを期待したいなと思いますよ。
 
というわけで今回のベストショットは、ウィルが怒っていた時の写真を選んでみました。当選者もいなかったのでね、たまにはマシン以外の、そのときの状況が伝わるようなものもいいかなって。
 
Photo & Text by Hiroyuki Saito
 
●撮影データ
機種: Canon EOS-1Ds Mark ?
レンズ: Canon EF 24-105mm f/4 L IS USM
ストロボ: Canon スピードライト580EX ?
撮影モード: シャッター速度優先AE
シャッタースピード: 1/250
絞り値: F6.3
測光方式: 評価測光
ISO感度: 400
焦点距離: 24.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート