INDY CAR

第4戦ブラジルのベスト・ショットです!

インディカー写真今年、2年目の開催を迎えた第4戦サンパウロ。開幕戦だった昨年は初開催でいろいろとトラブルがあり、今年はその反省点を改善して無事レースが開催されたのですが、残念なことに決勝日は雨に翻弄されることになりました。
昨年のセントピーターズ・バーグも暴風雨のため順延しましたが、ストリート・コースでの順延って、10年以上やっててそれが初めてだったんです。こんなこともあるんだなって感じで、オーバルの順延とは違い、なんか釈然としないまま翌日のレースを迎えたような気がします。
それ以来、オーバル以外でも雨は油断できないなって思っていましたよ。でもね、そう毎年あるもんでもないだろうって、高をくくっていたら今年のサンパウロも雷雨で順延ですから。まあ、これからはストリート・コースのレースでも、一日分予備の仕事着を持っていかないとなって決心したレースとなりました。はい。
ダウンタウン郊外に設置された仮設コースは、サンパウロのグアルーリョス国際空港から西南方向へ20キロほど、ダウンタウンの中心地から北に約3.2キロの場所にあります。空港から比較的近いようにも思えるかもしれませんが、時間帯によっては東京やロサンゼルスよりもひどい渋滞のため、到着する時間がまったく読めないんです。僕の場合、今回午前10時くらいに空港を出発して、サーキット内のホテルに到着するまで2時間以上かかりました。ちなみに混んでいなければ40〜50分くらいだそうです。
このコースは、毎年大規模なカーニバルのコンテストが行われているメインロードをスタート&フィニッシュラインとして使っています。昨年、路面が滑りすぎてレース前夜に急遽路面を削って対応したのですが、今年は最初から滑らないように工夫されていました。両サイドに観客席が設置さているので、決勝には毎年多くのファンがそのグランドスタンドを埋め尽くしていますよ。コース・マップはこちら。(コース・マップ上で右クリックし、「新しいウィンド」で開いて見ながらご覧ください)
その後、とってもタイトなターン1〜2のシケインを通過後、すぐターン3〜4といった少し下りの緩やかなシケインを通って、2番目に長いストレート(後半は若干緩やかなカーブ)に出ます。少し進むと右側にピットロードの入り口があることを確認しますが、基本的にはターン5のブレーキング勝負までフルスロットルです。
このターン5のインサイドには昨年通ったシュラスコ・レストンランがあるのですが、今年はレースウィークエンドの営業をしていませんでした。やはり、開催期間中は外部からお客さんが入れませんからね。日曜日のレース後はコースが開放されて営業するという情報が入ったのですが、レースが順延したので開放されなかったようです。月曜日の夕方には空港に向かったのでね、とうとう今回はシュラスコを食べることができませんでしたよ。残念。
おっと話がコースアウトしました。さてさて、右曲がりのターン5から短いストレートを通過して、さらに右に曲がるターン6があり、コーナーを過ぎたあたりからピットアウトしたマシンの出口が右側に出てきます。グリーンの状況でコースに出るマシン、そして通過するマシンは細心の注意が必要なコーナーです。
その後、左、右、ちょっといって左、さらにもうちょっといって右って感じでストリート・コースらしい直角コーナーのターン7、8、9、10と続きますよ。今年はこのターン周辺の道路も舗装をしており、30センチくらい新しいアスファルトで盛り上げてありました。見た目は綺麗でしたが、元の道路を削って平らにしない限り、凸凹な道はやはり平らになるなわけではなく、走行しているマシンはけっこう跳ねていましたよ。
ともあれ、ターン10を過ぎるとこのコースで1番長〜いストレートになります。なんか以前、オーストラリアで開催されていたサーファーズ・パラダイスを思い出すような長いストレートです。でも、サーファーズ・パラダイスではストレート途中にシケインが設けられていましたが、ここはターン11のヘアピンまでホットロッドもびっくりの直線番長です。そしてこのコースで3番目に長いストレートとなるメインストレートに戻り、チェッカーフラッグを受けるといったコース・レイアウトですね。
簡単に言うと3本の長いストレートがあって抜きどころ満載なコースでして、ドライバーたちのコメントを聞く分には、とても楽しいストリート・コースだったようです。今年は。実際優勝したウィル・パワーは「世界に誇れるストリート・コースだ」とか、3位に入ったライアン・ブリスコーは「世界でもベストといえるストリート・コースだ」なんていっていますからね。
それじゃあ、撮影する側から見てどうかというと、ちょいと微妙かなと。サーファーズ・パラダイスのようなリゾートホテルが立ち並ぶゴージャスな感じでもないし、ロングビーチといった港街、トロントといったいかにも街中といった雰囲気があるわけでもないのです。確かにサンバ通りはありますが、スタートを俯瞰で撮ったときだけですからね。それって分かるのは。
ただ、路面の凹凸が多いことと、縁石が結構大きいのでマシンが跳ねるような躍動感のある写真はよく撮れます。そういった意味では他のストリート・コースにも引けを取らないです。あと、今回インディカーでは珍しい雨の走行シーンも撮れたので(できれば毎年レースデイだけは快晴がいいなぁ)、それもまた必要なシーンと思って撮影させてもらいました。はい。
それでは、そろそろ今回のベストショットの写真説明をさせていただきますよ。今回はやはりトップを走行し、作戦さえビシっとはまれば優勝していたはずの佐藤琢磨を選びました。
この写真はリスタート時にトップを走行していたウィル・パワーをターン1への進入前に抜いて、ターンインする直前の写真です。ここから琢磨が、雨のレースをまさに水を得た魚のようにリードする快走が始まったのです。撮影していた場所はメインストレートエンドの正面で、実はここに撮影用のスタンドが設置されていたのですが、3メートル先にあるフェンスに撮影用の穴が開いていなくてね、撮影できないとあきらめていたポイントでした。
主催者は穴を開けたくなかったのでしょう。フェンスが写真に写りこまないよう、黒のスプレーで塗っておくからと言われていたのですが、それはレンズとフェンスが近ければちかいほど有効。今回、その間隔が離れていたので、あまり現実的な撮影場所ではなかったのです。
でもね、イエローコーションになって撮影場所を移動していたら、もうリスタートですよってときにたまたま僕が居たのは、そのメインストレートエンドの正面付近だったんです。フェンス越しだけど撮ってみるかと、フォト・スタンドに上がって黒スプレーで塗られた部分を通してレンズを覗いたら、フェンスはかろうじて写りこまなかったものの、やはり間に障害物があるのでオートフォーカスの反応が鈍いわけです。
リスタートのグリーンフラッグが振られ、フォーカスをトップのウィルにあわせると、ピントが手前のフェンスにきちゃう。あらら、やばいやばいと思いながら押しなおし、なんとかウィルに合ったと思ったら、うわー、琢磨がウィルの前に出てきた! ってことですぐに琢磨に合わせなおしてシャッターを切りました。
そのあとはもう夢中で琢磨にフォーカスをあわせ、「ストレートエンドをまっすぐ突っ込んで来ないでよ〜」って願いつつ、ターンインしたマシンを見えなくなるまでロックオン。トップ集団がいなくなったところでやっと我に返り、思わず「おー!」とうなりましたよ。コースサイドにあるスクリーンでリプレイを見ていると、隣にいた地元のブラジル人も「サトウ!」なんつって興奮しててね、いやはや久しぶりにしびれるパスだったなと思ったのでした。
トップを独走する琢磨を撮影しつつ「この調子なら優勝できるんじゃないかい?」と、期待は否が応にも膨らみはじめます。その後ウィル・パワーやライアン・ブリスコーがピットに早い時点で入っているのに対し、琢磨はいつピットに入るのか、様子を見ていたのでしょう。イエロー待ちなんだろうなって思っていたのですが、あんなに荒れていたレースはその後、うそのようにスムーズに流れ、結局、琢磨はレース終盤にグリーンの状況でピットイン。後退を余儀なくされたのでした。
作戦が裏目に出、念願の日本人初優勝はお預けになってしまいましたが、今回の琢磨の走りを見ていたら、そう遠い日ではないように感じましたね。今回のようにまたロードかストリート・コースで雨が降ってくれるといいのかな? なんて思ったサンパウロのレースでした。
Photo & Text by Hiroyuki Saito
●撮影データ
機種: Canon EOS-1D Mark ?
レンズ: Canon EF 400mm f/4.0 DO IS USM
撮影モード: シャッタースピード優先AE
シャッタースピード: 1/800
絞り値: F5.6
測光方式: 評価測光
ISO感度: 400
焦点距離: 400.0mm
オートフォーカスモード: AIサーボAF
ホワイトバランス: オート
※第4戦Pick the Winnerのプレゼントはこちらの写真となります。