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インディカー・シリーズ 第16戦 デトロイト【予選】フォト&レポート

<US-RACING>

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エリオ・カストロネベスとスコット・ディクソンのガチンコ対決となったデトロイトの予選は、ディクソンがカストロネベスを0.4788秒引き離し、今シーズン6度目のポール・スタートを獲得した。第2セグメントから火花を散らしていた両者のタイム・バトルは、ファイアストン・ファスト・シックスの4ラップ目にディクソンが1分12秒2861を記録して決着。カストロネベスはこのタイムを上回るべくセッション終了までアタックを続けるが、最後までディクソンを越えることはできなかった。「チームは戦略に多くの時間を費やしてきたからレースには自信があるよ。僕達はまだ余裕があるし、ピットの出口に近いピット・ポジションは有利になると思う。燃料をセーブして走ることもできるだろうから、明日のレースは勝ちに行くよ」とすでに決勝を見据えるディクソン。今日のポール・ポジションで、2003年以来となる自身2度目のシリーズ制覇が見えてきた。

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惜しくもディクソンにポールをさらわれたカストロネベス。第1、第2セグメントともにトップ・タイムで通過するが、肝心のファスト・シックスでディクソンを抑えることができなかった。マシンを降りたカストロネベスは、ヘルメットを被ったままタイミング・モニターを見つめ、「あともう少しだった」とでも言うようにモニターを指差す。ヘルメットを外すといつものように明るくインタビューに応じるカストロネベスだったが、その表情には悔しさが表れていた。「最高のマシンだったんだけどね。全力を尽くしてアタックしたが、ディクソンとの差を縮めることができなかったよ。予選2位という結果は悪くない。むしろとても良い結果なんだ。明日は優勝のためにすべてをかけるよ」と気持ちを切り替えるカストロネベス。タイトル争いを考えても明日の決勝ではなんとしてもディクソンの前に出なくてはいけない。

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ストリート・コースではやはりチャンプ・カー勢が台頭してきた。このデトロイトは2001年までチャンプ・カーが行われていたことでも知られるコースだが、当時とはコースレイアウトも異なり、コース未経験のドライバーも多い。そんな中でもファスト・シックスには3台のマシンが残り、デトロイトの経験のあるオリオール・セルビアがディクソンとカストロネベスに次ぐ3位を獲得。4位にジャスティン・ウイルソン、6位には第2戦セント・ピーターズバーグのストリート・コースで優勝したグラハム・レイホールが入り、チャンプ・カー勢の底力を見せつけた。「この結果を残せてとても嬉しいよ。もちろんスコットにはまったくかなわなかったし、彼がどうしてあんなに速いのかも分からない。でも、KVレーシングがトップ・チームに近づいているということを証明できたことが嬉しいんだ」とセルビア。明日の決勝でチャンプ・カー勢はディクソンとカストロネベスのトップ争いに割って入れるだろうか?

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武藤英紀はデトロイトのバンピーな路面に苦しみながらも、午前のプラクティスでは昨日より1秒以上タイム・アップする。良い感触を得て臨んだ予選は、4周目にプラクティスのタイムを上回る1分14秒2584を記録。さらにタイムを縮めたい武藤だが、第1セグメントの第2グループはクラッシュが相次ぎ、コーションによって思うようにアタックできずにいた。残り2分で再開されたセッションでは渾身のアタックを見せ、今週末のベストタイムとなる1分13秒9010を記録するものの、惜しくも上位6台には入れず、第1セグメントで敗退。厳しい戦いが続いているが、明日の決勝は16番手から粘り強く上位を目指して欲しい。

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「予選セッションの最終ラップにミスしてしまい、チームには申し訳なく思います。ベスト・タイムをマークしようとプッシュしていたのですが、うまくいきませんでした。マシンは昨日よりも良くなって、第2グループのトップ5には入れると思っていたので残念ですね。明日はできるだけポジションを上げて上位でフィニッシュしたいです」

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アレックス・タグリアーニにインディカー参戦のチャンスがついに巡ってきた。現在はNASCARのカナディアン・タイヤ・シリーズに参戦しているタグリアーニ。第13戦エドモントンの前座で行われたレースでは見事に優勝して存在感をしめしていたが、今年のロング・ビーチを最後にオープン・ホイールのレースからは遠ざかっていた。しかし、先週のインフィニオンで左手を痛めたエンリケ・ベルノルディが、今週末の出場を断念。所属するコンクエストレーシングは代役としてタグリアーニを指名し、予選日のプラクティスから急遽レースに出場することになった。「説明できないほど嬉しいよ。今週末コンクエスト・レーシングをサポートし、初めてインディカー・シリーズでレースできることになったんだからね。僕に何ができるかを証明する最高の機会になると思う。残されたセッションで初挑戦となるシリーズの未経験のマシンを学ぶのは簡単なことでないと分かっている。でも、僕はベストをつくしてコンクエスト・レーシングをサポートするよ」と喜ぶタグリアーニ。予選は第1セグメントで敗退して21位に終わったが、明日の決勝で追い上げを誓う。

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第2戦以来となるストリート・コースのデトロイト。コースの両脇をコンクリート固められたコースは、ほんのささやかなミスでもウォールに当たってしまい、プラクティスからウォールの餌食となるドライバーが絶えなかった。最高のアタックが求められる予選では、限界を超えてしまうドライバーが現れ、ウエルドン、パワーがウォールに左リアをヒット。トーマス・シェクターとブルーノ・ジュンケイラはマシンを大破させるほどのクラッシュを演じてしまった。昨年の決勝ではクラッシュが相次いで、6回ものコーションが発生しており、今年の決勝でも波乱のレースとなるか注目だ。

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朝のうち深い霧に覆われていたデトロイト。10メートル先も見えないほどの濃霧は、インディカーのプラクティス開始時刻となる午前8時30分になってからも晴れることなく、セッション開始が遅らされた。ドライバーとマシンはすでにピットで準備を整え、天候の回復を待っていると、次第に霧が消えていき、30分遅れの午前9時にようやくプラクティスが開始された。霧が晴れると上空には青い空が広がり、強い日差しがさんさんと照りつけ、気温も24度まで上昇。昨日とは打って変わる絶好の観戦日和に、訪れた観客はタイトルをかけたカストロネベスとディクソンの壮絶な予選バトルを心行くまで楽しんでいった。