<US-RACING>
インフィニオンで猛威をふるうペンスキー。エリオ・カストロネベスが1分16秒9027をたたき出し、今シーズン4回目のポール・スタートを決めた。ファイアストン・ファスト・シックスが始まると真っ先にコースインしたカストロネベスは、1周目からスパートをかけ、3周目に最速ラップをマーク。その後、ライバル達は何とかカストロネベスのタイムを破ろうと再三にわたってアタックするも、最後まで彼を上回るドライバーは現れなかった。「火災事故を乗り越え、チームは信じられないくらい見事な仕事をしたよ。こんな風に立ち直れるのがペンスキーなんだ。彼らを誇りに思うね。明日に向けてハードに働いて、良い結果を残したい」と大喜びのカストロネベス。タイトル争いに踏みとどまるために、なんとしても勝利が欲しい。
カストロネベスに唯一肉薄できたのは、チームメイトのライアン・ブリスコー。ファスト・シックスの2周目に、ベスト・タイムの1分16秒9185をマークしてトップに立つが、すぐさまカストロネベスが0.0158秒上回る。ブリスコーも7周目までアタックを重ねるものの、ついに自己ベストを破ることができず、そのまま2位に終わった。ペンスキーは今シーズン3回目のフロント・ロー独占を達成。水曜日に起きたトランスポーター火災のアクシデントを忘れさせる爽快な予選結果となった。「僕達がロード・コースのベスト・マシンであることを証明できたね。セント・ピーターズバーグを除けば、常にフロント・ローにいるんだから、これはほんとうに良いことなんだ。エリオとはお互いに助け合っているし、チームも一生懸働いてくれたおかげで、素晴らしい結果をもたらせたよ」とブリスコー。磐石の態勢を築くペンスキーは決勝でも安泰か?
予選3位に入ったチャンプ・カー勢のウィル・パワーは、第2セグメントをトップで通過し、初めてのポール・ポジションに期待がかかった。ファスト・シックスを向かえると、2周目に1分17秒0875のタイムをマークし、トップのカストロネベスとの差を0.1048秒まで詰める。さらにペースを上げてアタックを続けるパワーだったが、勢いあまってコース・オフするミスを犯し、万事休す。結局2周目に記録したタイムがベストとなり、ペンスキーの壁を越えることはできなかった。「良かったと思うよ。やるべき事はやりとおせた。明日はイエローがたくさん出て、長いレースになるだろうね。僕達はいろいろな戦略を知っているから、上手く出来ると思うよ」と自信を見せるパワー。ペンスキーの牙城を崩すチャンスを見出したい。
チャンピオンシップ・リーダーのディクソンは5位に終わった。昨シーズンはこのインフィニオンを含め、ロード・コースで3勝という圧倒的な強さを誇ったディクソンだが、今年はエドモントンの1勝だけに留まり、波に乗り切れていない。6位に終わった初日のプラクティスから順位を上げたとはいえ、今日の予選では一度もトップ争いに絡むことなく終わっているのは気がかりだ。「予選結果にはちょっとがっかりしているよ。マシンはかなり安定していたから、最後のアタックで車高を下げたんだけど、それで方向性を失ったみたいだ。明日は体勢を立て直し、多くのポイントを獲ることができると思う」とディクソン。明日のレースでディクソンが優勝し、カストロネベスが9位以下でフィニッシュすれば、自身2度目のチャンピオンを確定させることが可能だが、今日の結果では難しいかもしれない。
メキシコ観光協会からのスポンサー資金がストップし、財政状態が悪化しているとささやかれるパシフィック・コースト・モータースポーツ。デビュー・レースのミルウォーキー以来、下位に低迷し続けてきたが、このインフィニオンではプラクティスから見違えるような走りを見せていた。迎えた土曜日の予選でもドライバーのマリオ・ドミンゲスが快走を続け、見事に初めての第1セグメント突破。今シーズン・ベストの11位から明日の決勝をスタートする。「トップ11に入れてとても嬉しいよ。シーズンのベストだし、第2セグメントに進出できたことも素晴らしいね。この結果で僕達が全力を尽くしていることを示せたと思う。チームの地元でトップ10フィニッシュを狙うよ」と意気込むドミンゲス。このレースをきっかけに大きな飛躍を果たしたいところだ。
午前のプラクティスで10位に入り、調子を上げていた武藤英紀。ところが第1セグメント開始早々にまさかのスピンを喫し、ターン3のコース上で立ち往生してしまう。これでフルコース・コーションが発生し、武藤はペナルティにより予選ラップのうち上から2番目までを抹消されるハンデを背負った。気を取り直して再び予選アタックを行おうとしたときには、別のドライバーがイエローを起こす不運も重なる。結局、十分なアタックが出ないまま時間が過ぎ去り、無情の第1セグメント敗退。20番手の後方からスタートを強いられるが、レース・セット・アップには手ごたえを感じているため、決勝での巻き返しが期待される。
「予選中にスピンしてしまったターン3が、チームメイトよりもコンマ2秒ほど遅かったんです。そこでタイムを詰めようと、ドライビング・スタイルを大きく変えてアプローチしたことがあだになりました。予選で時間がないということもあったんですが、もう少し様子を見ながら走り方を変えていけば良かったと思います。あのスピンで流れが変わり、かなりとっちらかってしまいました。最後は燃料を多く積んで1周目からアタックする必要があって、タイヤの良いところを使えないまま終わりました。決勝のマシンは良いと思うので、それほど心配はしていないです。やれることをやるだけです」
朝のうち曇り空だったインフィニオン・レースウエイは、昨日同様肌寒く、15度に冷え込んでいた。午前のプラクティスが後半に差し掛かると、しだいに雲が流れ出して気温も27度まで上昇。青い空のもとで予選が行われた。1968年に開業したインフィニオン・レースウエイ(旧称シアーズ・ポイント・レースウエイ)は今年で40周年。全米でもっとも稼働率が高いといわれるこのサーキットは、40周年にあわせて施設の改修工事が行われ、コースはもちろんのこと、コース脇の芝生にも手入れが行き届いていた。自然の地形を活かした起伏に富むレイアウトは2005年のインディカー開始以来、毎年違うウイナーが誕生しており、今年は誰が栄冠をつかむのだろうか?