INDY CAR

武藤英紀は痛恨のスピンで予選20位

<2008 IRLインディカー・シリーズ第15戦インフィニオンPEAK Antifreeze & Motor Oil Indy Grand Prix of Sonoma County>
【日 程】2008年8月22〜24日
【開催地】カリフォルニア州ソノマ
【コース】インフィニオン・レースウェイ
【距 離】ロードコース:2.26マイル(3.636km)
【天 候】23日:快晴/気温27℃
【時 間】午後1時15分〜(日本時間24日午前5時15分〜)

■■■8月23日予選■■■
<ワイン産地に位置するアップダウンの激しいコース>
 インフィニオン・レースウェイはカリフォルニアワインの産地、ナパバレー、ソノマバレーのサンフランシスコ側の入口にある。ぶどう畑が延々と続く丘陵地帯だけにアップダウンの激しいレイアウトで、標高が最も低いターン10と最も高いターン3aでは高低差が約42mもある。ドラッグレースにも使用されるメインストレートに続くのは急勾配のS字セクションで、その先には一気に下る高速コーナーがセットで待ち受け、ピットから最も遠いセクションにはヘアピンを配置。そのあとには左右に緩やかに切り返す連続ハイスピードコーナーが続き、最後にもう一度ハードブレーキングの必要なヘアピンが待ち構えている。各コーナーは、高速・低速、フラット・上り勾配・下り勾配と極めてバラエティに富んでいるため、マシンセッティングは非常に難しく、その重要性は高い。
 さらに、オーバーテイクのチャンスを増えるようにと、今年はコース北端のヘアピンにつながるストレートが右に湾曲するものから完全な直線へと改修。ピット前のヘアピンとふたつのハードブレーキングゾーンを持つコースに生まれ変わった。

<電気系統のトラブルでプラクティス1回目は走行不足>
 アンドレッティ・グリーン・レーシングの武藤英紀は、昨年出場していたIPSインディ・プロ・シリーズ(現インディ・ライツ・シリーズ)でここを走っている。しかし、インディカーでこのチャレンジングなサーキットを走るのは今週末が初めてとなった。
 コースに持ち込まれたマシンはアンダーステア傾向で、武藤の好みに仕上げるため、セッティングの調整を重ねていきたいところだった。ところが、プラクティス1回目の途中で電気系統にトラブルが発生。武藤は十分に走り込むことができなかった。ラップタイムは1分19秒1142がベストで、27台出走の中で17番手だった。

<プラクティス2回目でタイムを大幅アップ>
 アンダーステアが解消された望むセッティングが決まれば、一気にラップタイムを縮められる。そう確信していた武藤はセッティングを変えてプラクティス2回目に臨んだが、今度はオーバーステアになったため、オーバーの度合いを減らしていく方向で調整を繰り返した。気温が上がったため、走行コンディションはプラクティス1回目より悪くなっていたが、武藤は自己ベストを1分17秒9811まで大きく縮めて10番手につけ、この日のプラクティス総合でも10番手となった。

<予選でスピンを喫し20番グリッドが確定>
 走行2日目、予選日のプラクティス3回目で武藤は1分17秒2722まで自己ベストを短縮。1分16秒台へと食い込める感触もつかんでいた。ポジションは10番手と変わらなかったが、予選に向けて大きく前進した。
 その後、小さなセッティング変更を施し、予選のアタックに向かった武藤だったが、アタック1周目のターン3でスピンし、赤旗を出す原因を作ってしまった。これで武藤は、ルールによりベストのラップ2周を没収されることになり、グループ2で上位に食い込むことはほぼ不可能となった。結局、同グループの10番手となり、予選第2ステージへと進むことができず、明日のスターティンググリッドは20番と決定した。
 このスターティンググリッドなら、フルコースコーションを活用するなど作戦をフルに使ってアドバンテージを手に入れる戦いが求められる。コース改修がなされたとはいえ、オーバーテイクが難しい状況は大きく変わっていない。直前を走るマシンのペースが上がらない場合には、ピットタイミングをずらしてコースの空いているところへと復帰し、自己ベストを連続して出せる環境を自ら作り出す必要がある。とはいえ、予選までのセッティングから見ても決勝では高い戦闘力を確保できそうで、武藤のモチベーションは高い。

■■■コメント■■■
<武藤英紀>
「決勝用セッティングはうまく仕上げられると思います」

「コースの前半部分でタイムロスしていることがチームメイトたちのデータなどから分かっていたので、予選では新しい走行ラインを試したのですが、それが良くなかったですね。そこでスピンをしてしまいました。これにはセッティングも影響していて、朝のプラクティスからほんの少し変更しました。その結果、ハンドリングは自分たちの考えていた方向とは違い、アンダーステアが少し強くなっていたんです。朝のままのセッティングでいったほうが今日の予選は良かったんだと思います。
 予選のコースコンディションでは、午前中と同程度のタイムを出せそうでした。予選が終わったから言えることですが、午前中と同じタイムが出せていれば、第2ステージに進むことができていました。プラクティスと同じタイムを出すという考え方で予選に臨むべきだったのかもしれません。
 フルタンクでの走行は明日のファイナルプラクティスで行います。決勝用セッティングはうまく仕上げられると思いますので、ピットタイミングなどの作戦を駆使してポジションを上げ、上位でフィニッシュできるよう全力で戦います」

<レイ・ガスリン:レースエンジニア>
「走行経験がないコースだけにトライしてみたが……」

「ヒデキは今日の予選でミスを犯してしまったが、今年の彼が置かれている状況がとても厳しいものであることを理解してほしい。IRLは、なぜかヒデキにはテストを許可してくれない。もちろん、ヒデキには3人チームメイトがいて、どこで差を縮めるべきかをデータから知ることができる。しかし、走行経験がなかったり少なかったりというコースでは、タイムを縮めるためにドライビングスタイルの変更をトライする場面も出てくる。今回の予選がそうだった。
 現在、チャンプカーから加入したチームとドライバーにはインディカーでの経験がないという理由でテストの機会が与えられているが、コースに対する経験がないという点ではヒデキも同じ。テストの機会があれば、また結果も変わってくるはずだ」

■■■予選結果■■■
2.26マイル(3.636km)                  出走27台

順位 No.  ドライバー     タイム    平均速度mph(km/h)

1位  3   H.カストロネベス  1’16.9027   107.809(173.502)
2位  6   R.ブリスコー    1’16.9185   107.787(173.466)
3位  8   W.パワー      1’17.0875   107.551(173.087)
4位 11   T.カナーン     1’17.1286   107.493(172.993)
5位  9   S.ディクソン    1’17.6682   106.746(171.791)

20位 27   武藤英紀      1’18.0038   106.287(171.052)

※全車シャシー:ダラーラ/エンジン:Honda/タイヤ:ファイアストン