INDY CAR

伝統のオーバルでライアン・ブリスコーが初優勝 武藤英紀は12位でフィニッシュ

<Honda>

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2008年6月1日(日)
決勝
会場:ミルウォーキー・マイル
天候:晴れ
気温:19〜21℃
シリーズ最大のイベントであるIndy500を終えたばかりのIRL IndyCarシリーズだが、休む間もなく第6戦がウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された。その舞台となったのは、1903年に初めての自動車レースを行ったミルウォーキー・マイルだ。世界で最も長い歴史を持つサーキットは、第1回Indy500の8年前からレースを開催し続けてきている1マイルのオーバルで、今では「伝説のオーバル」と呼ばれている。

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ウィスコンシン州最大の都市であるミルウォーキーの郊外に作られたショートオーバルは、バンクの傾斜が9.25度と小さくフラットで、繊細なマシンセッティングを求められる。また、コーナー進入時にはブレーキングが必要とあって、高速型オーバルとは異なるスキルを使っての戦いが演じられる。快晴に恵まれたレースデイには、長い伝統に支えられたコースに多くの観客が詰めかけ、午後3時過ぎにスタートしたインディカーによる高速バトルを楽しんだ。
マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)がデビュー3シーズン目にして初めてポールポジションを獲得し、予選2番手にはルーキーのグラハム・レイホール(ニューマン・ハース・ラニガン・レーシング)がつけた。アメリカの有名レーシング・ファミリー出身の若手が26台の先頭を切り、225周のレースはスタートした。しかし、レースのイニシアチブを握ったのはIndy500を制したばかりのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、アンドレッティはハンドリングが悪化して後退、レイホールは130周目にターン4で壁にヒットした。
ディクソンを追ったのはエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)、ダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)、2年連続ミルウォーキー・ウイナーのトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)、そしてライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)だった。
この中からブリスコーがレース終盤にスピードアップ。ディクソンが周回遅れに引っ掛かった一瞬の隙をついてトップに立った。そのあとも2人は激しいバトルを続け、ディクソンは最後の逆転のチャンスが訪れるのを待ってブリスコーの背後にピタリとつけていた。ところが、残り3周となる223周目、7位を争っていたエド・カーペンター(ビジョン・レーシング)とアンドレッティが接触。そこにヴィットール・メイラ(パンサー・レーシング)が突っ込んでフルコース・コーションとなり、レースはペースカー先導のままゴールを迎えた。ブリスコーはディクソンの攻撃を封じ込めたことにより、デビュー25戦目にしてIndyCarシリーズ初勝利を手に入れた。3位でゴールしたのはカナーンだった。
武藤英紀(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、予選でのマシンセッティングに失敗して14番手からスタート。レースでのマシンは調子がよく、序盤に9位までポジションを上げた。しかし、バトル中にタイヤかすに乗って12位までポジションダウン。そこから1台ずつオーバーテイクして再び9位までポジションを回復して、フィニッシュを目指した。
もうゴール目前というとき、武藤のすぐ前で7位の座を争っていたアンドレッティたちのアクシデントが発生。武藤は7位でゴールできるところだったが、周回遅れのウィル・パワー(KVレーシング・テクノロジー)がイエローとなってもスローダウンせずに、追突して来た。武藤は、コース外側の壁と止まっていたカーペンターのマシンにヒットし、12位まで順位を落としてゴールすることとなった。
コメント

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ライアン・ブリスコー(優勝)

「勝利によって得られるフィーリングは本当にすばらしい。今回は僕にとって初めてのインディカーでの優勝なので、なおさらそう感じるのかもしれない。先週のIndy500ではトップ5フィニッシュを狙えたが、ピットでのアクシデントによってリタイア。しかし、がっかりしている時間などなく、ミルウォーキーに集中しようと考えた。去年のチームのデータから見て、僕らはミルウォーキーでマシンを戦闘力のあるものに仕上げられる自信を持つことができていた。チームのためにも勝利を挙げることができ、最高にうれしい」

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スコット・ディクソン(2位)

「僕らのマシンは速く、レースを完全に支配していた。しかし、ロングランになったとき、その終盤でのハンドリングが今ひとつだった。今日のレースではライアン・ブリスコーのすばらしいドライビングをたたえるべきだろう。彼とのバトルはとてもエキサイティングで、僕も大いに楽しむことができた。優勝できなかったのは残念だが、価値あるシリーズポイントを積み重ねることはできた」

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トニー・カナーン(3位)

「今日のライアン・ブリスコーは後方グリッドからのスタートだったが、コース上ですべてのマシンをオーバーテイクしていった。そんな彼の勝利に『おめでとう』と言いたい。今日の僕らのマシンは優勝できるものに仕上がっていなかった。だから3位でも満足している。タイトルを獲得するためには、トップ3でフィニッシュし続けることが大切だ」

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武藤英紀(12位)

「最後に自分のすぐ前でアクシデントが起こり、順位をさらに上げてフィニッシュできると思ったとき、スローダウンしなかったマシンが後ろからぶつかって来ました。それでも最後まで走りきれて12位でフィニッシュできたので、あのままリタイアとなるよりはよかったと思います。ターン1でアウトに行ってダストに乗り、3台に抜かれましたが、それ以外はいいレースを戦えていました。1つずつ順位を上げていき、多くの収穫が得られたレースにできました」
エリック・バークマン|HPD社長

「初優勝を飾ったライアン・ブリスコー、そして彼を支えたチーム・ペンスキーをたたえたい。今年初めてのショートオーバルでのレースとなった今回、予選では若手ドライバーが速さを見せた。しかし、レースではシリーズのトップコンテンダーたちがトップ争いを演じた。すばらしい天候にも恵まれたレースには、IndyCarシリーズが新しい時代を迎えて発展を続けていることもプラスとなって、多くの観客が集まってくれていた」