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インディ・カー・シリーズ 第4戦 カンザス【予選日】フォト&レポート

<US-RACING>

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圧倒的なスピードを見せ付けたチップ・ガナッシ勢のスコット・ディクソンが、今シーズン2度目のポール・ポジションを獲得した。前戦のもてぎでは燃費作戦に敗れて3位となってしまったが、優勝した開幕戦ホームステッドからここまでのオーバル2戦はいずれも好成績を残しているディクソン。ウォーム・アップ・ラップでそれまでトップだったライアン・ブリスコーの平均スピード211.979mphを軽く上回ると、予選ラップは213.9マイル台のスピードを安定してマークする。4周目は214mphを越える圧巻のスピードで、平均213.956mphは文句なしのトップ・スピード。この速さに迫れたのはチームメイトのダン・ウエルドンだけだった。「面白くなってきたね。ダンと二人でフロント・ローからスタートできるのは嬉しいね。このポジションをレースの最後までキープしたい。今朝は僕たちよりダンのほうがコンマ1秒速かったと思うけど、僕たちはこの予選に向けてバランスを変えたんだ」とディクソン。このままの勢いで、早くも今シーズン2勝目を手に入れてしまうのだろうか。

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白熱の2位争いをダン・ウエルドンが制し、チップ・ガナッシが2003年のミシガン以来となるフロント・ロー独占を果たした。この日最後のアタッカーとして登場した昨年の覇者は、ウォーム・アップ・スピードでディクソンを上回る速度で駆け抜けると、213マイル台で予選ラップをまとめあげ、213.641mphの平均スピードを記録。エリオ・カストロネベス、マーティ・ロス、トーマス・シェクター、ダニカ・パトリックと入れ替わりが激しかった2位のポジションをゲットしたが、ディクソンにはあと0.3マイル届かなかった。「チップ・ガナッシ・レーシングにとっては良い日になったね。もう少しアグレッシブに攻めればよかったかもしれない。やるべき作業を沢山こなして、明日はもっと競争力が増すはずさ」とウエルドン。予選2番手からカンザスでは誰も成し遂げていない2年連続優勝を目指す。

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前戦インディ・ジャパンで悲願の初優勝を遂げたダニカ・パトリックの勢いはまだまだ続く。優勝の喜びもつかの間、もてぎからわずか1週間でカンザスのレースがあり、すでに彼女はいつもどおりストイックで近寄りがたい雰囲気に戻っていた。アンドレッティ・グリーンのチームメイトがスピード・アップに苦しむなか、彼女だけは別格のスピードを見せ、予選は213.225mphの平均スピードを記録。チップ・ガナッシの二人以外に213マイル台に到達したのは彼女だけだった。「良い状態でカンザスに来れたわ。今日は走り始めから良かったし、マシンはほんとうに良いバランスよ。うまくいけば、前にいる赤白のマシンをトップから追い出せるはず。私のクルーはとても一生懸命作業をこなして、今週のマシンを仕上げてくれたわ」と強気のパトリック。早速2勝目を狙う機会が訪れた。

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ルクソー・ドラゴン・レーシングからスポット参戦するトーマス・シェクターが、いきなり4位に入る驚異的な走りを披露した。昨年までヴィジョン・レーシングのエースとしてインディカーを戦ってきたシェクターは、今年からチーム・ペンスキーのオーナー、ロジャー・ペンスキーの息子であるジェイ・ペンスキーが共同オーナーを務める同チームに移籍。ウィルス・セキュリティ製品が日本でもお馴染みのシマンテックのスポンサードを受け、このカンザスとインディ500、インフィネオンに出場を予定している。昨年のインディ500でライアン・ブリスコーを5位へ導いたポテンシャルの高い同チームとはいえ、スポット参戦で百戦錬磨のレギュラー陣を上回ったのは、圧巻の一言。ステアリングを握るシェクター本人も驚きを隠せないようだ。「ほんとうに嬉しいよ。チームのみんなは素晴らしい仕事をした。開幕からここまでレースが出来なかったわけだけど、今はとても良い状況にいる。明日のレースが楽しみだし、インディ500も期待できるね」と大喜びのシェクター。好成績を残して、フル参戦を掴みたい。

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好調が続くヴィジョン・レーシング。開幕戦の予選失格騒動、もてぎではピット・レーンでの同士討ちなど、何かと話題を提供してくれているヴィジョン・レーシングだが、オーバルに限ればエド・カーペンターが開幕戦5位、もてぎ6位と、今年は成績が安定している。今日の予選は5位にA.J.フォイト4世、6位にカーペンターが入り、ペンスキーの2台を上回る活躍を見せた。チップ・ガナッシ、アンドレッティ・グリーン、ペンスキーと並んで、ヴィジョン・レーシングが4強を形成しつつあるようだ。

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進化し続ける中年の星マーティ・ロスが、予選7位という驚きのパフォーマンスを見せた。今年からヴィジョン・レーシングにいたエンジニアが加わり、チームのポテンシャルが上ったということだが、ペンスキー2台の上を行くまでの活躍を予想した人は誰もいなかったはず。予選終了後には喜びのフォト・セッションまであり、この結果には大いに満足のようだ。決勝ではここまでリタイアが続いているが、明日は優勝争いのダーク・ホースとなれるのか49歳のロスに注目してみると面白いかも!?

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このカンザスから再びチャンプ・カー勢が合流し、今週末は27台のマシンがレースに出場する。チャンプ・カーのフィナーレで優勝したウィル・パワーは、ポイント・ランキングを5位に上げてカンザスに乗り込んだものの、やはりオーバルでは劣勢が否めず、結果は18位。チャンプ・カー勢のトップでもアーネスト・ヴィソの17位が最高だった。「良い走りが出来たと思うね。全開で走っていたから、これ以上のことはできない。チームは確実に成長しているし、ホームステッドに比べればかなりマシになっているよ」と相変わらず飄々と話すパワー。混戦を抜け出して少しでも上位でフィニッシュしたい。

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初めての母国レースが悔しい結果に終わった武藤英紀。挽回を誓うここカンザスでは、午前中のプラクティスで3番手スピードをマークし、早速本来の実力を見せてくれた。ところが、午後のプラクティスではギアが突然ニュートラルに入る不可解なトラブルに襲われ、わずか14周でセッションを終えることに。トラブル修復のため、予選シミュレーションが全く出来ないまま予選を迎えた。8番目に登場した武藤は、“当てずっぽう”のセット・アップで予選アタックに挑み、その時点でライアン・ブリスコーに次ぐ暫定2位となる211.346mphの好スピードをマーク。後に登場したライバルによって、結果的に13位まで順位を落とすが、限られた状況のなかでベストを尽くした。決勝のセッティングに不安を残しているものの、明日のレースで上位進出を狙う。

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「ちょっと難しかったですね。思ったよりもタイヤの磨耗が早く、4周目にアクセルを戻してしまいました。今思えば、1周目はもう少しゆっくり走れば良かったかも知れません。狙っていたタイムよりは遅かったです。ブリスコーが思っていた以上に速かったですし、他と比べるとペースが遅かったですね。ギアのトラブルで2回目のプラクティスを走れなかったのがつらかったです。シフトチェンジをしたときに、急にニュートラルに入ってしまうという症状が2回もありました。予選では問題がなかったので、明日も同じ症状がでないことを祈ります。ほぼ当てずっぽうな予選セット・アップだったし、決勝用のセット・アップも出来ていないから、他の3人の意見を参考に、自分が今日得たことを含めて明日に臨みます」

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薄い雲が太陽の光を遮ったカンザス・スピードウェイ。気温は午前9時の時点で7度という冷え込みようで、吐く息も白く、あまりの気温の低さにプラクティスの開始時間が45分遅らされた。時間がたつにつれて気温が上っていたったが、最高でも16度までしか上らず、一日を通して寒いままだった。このカンザスでは2001年の初開催から一度も同一ウイナーが誕生していない。現在参戦中のドライバーではバディ・ライス(2004年)、トニー・カナーン(2005年)、ダン・ウエルドン(2007年)がカンザスを制したことがあり、果たしてこの中からカンザスを2度制す初めてのドライバーが現れるのか、今年も違うドライバーが制するのか注目だ。