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インディ・カー・シリーズ 第15戦 インフィネオン[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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ロード・コース・マスターのスコット・ディクソンが本領を発揮し、インフィネオン・スピードウエイで今シーズン4勝目を挙げた。この日、5番手スタートという少々厳しい位置からの立ち上がりだったディクソン。だが、持ち前の安定感ある走りとチップ・ガナッシの迅速なピット作業によって、ピット・ストップのたびに順位を上げていく。ドラマが起こったのは残り11周となった69周目。アンドレッティ・グリーン・レーシングのダリオ・フランキッティとマルコ・アンドレッティが同士討ちを演じ、フル・コース・コーションが発生する。これで一気にトップとの差を詰めたディクソンは、ウイングにダメージを負うフランキッティを、いともたやすくオーバーテイク。その後はフランキッティをかわしたエリオ・カストロネベスを引き離し、3戦ぶりのトップ・チェッカーを受けた。「正直言って今週末はタフだったよ。僕たちはダラーラのマシンにまだ問題を抱えているんだ。ロード・コースでダラーラを使い始めて1年目だから、特に予選は苦労して5位だった。それでも、勝つことが出来たよ。僕たちが必要としていた優勝だね」とほっとした様子のディクソン。フランキッティが3位になったことで、第5戦インディ500以来となるポイント・リーダーに返り咲いた。しかし、そのリードはわずかに4ポイント。激しいタイトル争いは最終戦までもつれ込みそうだ。

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プラクティスで好調だったエリオ・カストロネベスは2位でレースを終えた。決勝を4番手からスタートしたカストロネベスは、前を走るAGR勢に抑え込まれ、レース終盤までこのポジションに留まっていた。チャンスが巡ってきたのはレース終盤。アンドレッティとの接触でダメージを負ったフランキッティと、フランキッティの遅いペースに詰まっていたカナーンに照準を合わせたカストロネベスは、73周目に2台ともかわして一気に2番手へ躍進した。トップのディクソンを追い詰めるだけの周回数は残されていなかったが、4戦ぶりのトップ3フィニッシュを果たした。「今朝のプラクティスではとても良かったんだけど、レースが始まると違和感があったね。新しいタイヤになると良いバランスなのに、そのあとは少しアンダーステアだった。それでも終盤になる頃にはマシンがかなり良くなったね。次のデトロイトはすばらしい思い出があるから、今よりももう一つポジションを上げられるようにトライするよ」と話すカストロネベス。すでにタイトル獲得の可能性はなくなっているが、CART時代に2連覇している次戦のベル・アイルで、今シーズン2勝目を狙いに行く。

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ダリオ・フランキッティは自ら招いたアクシデントによって、掴みかけていた勝利を逃してしまった。初日から好調ぶりをアピールしていたフランキッティは、後続に大差をつけてポール・ポジションを獲得。決勝でも79周レースの62周でリード・ラップを獲り、今日最も速いドライバーの一人なのは明らかだった。ところが69周目、ピットアウトしたばかりでスピードに乗っていないチームメイトのマルコ・アンドレッティを、ターン2のシケイン頂上でパスしようと試みるも、あえなく接触。アンドレッティはそのままリタイアに追い込まれ、トップを奪ったフランキッティ自身もフロント・ウイングにダメージを負ってしまった。ダメージが最小限だったこともあって、フランキッティはコース上に留まる選択をしたが、イエロー・コーションが解除されると立て続けに、ディクソンやカストロネベスにパスされる。最後はチームメイトであるカナーンのサポートを受けながら、手負いのマシンをフィニッシュまで運んだものの、あまりにも手痛い3位フィニッシュとなった。「接触に関してはスコットと同じような状態になったけど、彼はもうちょっと前にいたから避けられたんだ。マルコの場合は彼が変なところにいたんだ。ピット・ストップの直前にはトニーとも似たようなシチュエーションがあったが、彼は十分なスペースを空けてくれていたよ。VTRを見てマルコとちゃんと話をしたいね。チームメイトだから、お互いに助け合うべきだよ」と接触を悔やむフランキッティ。ポイント・リーダーからも陥落し、残り2戦でディクソンを必死に追いかけることになる。

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チーム・プレーに徹したトニー・カナーンは、フランキッティの後ろの4位でフィニッシュした。昨日の記者会見で「ダリオが前にいればサポートする」と言っていたカナーン。その宣言どおり、フランキッティとライバルたちの間に入ってペースをコントロールする。レース終盤もアンドレッティとの接触でペースが落ちたフランキッティを必死でサポート。スコット・ディクソンとエリオ・カストロネベスは逃がしてしまったが、ホーニッシュJr.などの後続は抑えきり、フランキッティを3位でフィニッシュさせた。「最後の数周はできる限りダリオを守ったんだ。ダリオは何年にも渡って僕に多くのサポートをしてくれていたし、僕はチームのことも考えたね。モータースポーツは個人の力がかなり重要なスポーツなんだけど、僕が今日セブンイレブンのマシンでやったことを誇りに思っているよ。僕にとっては2位や3位、4位になったって何も変らないんだ。チームがチャンピオンシップに勝つことを望んでいるし、ダリオがチャンピオンになれると確信しているよ」とレースを振り返るカナーン。フランキッティはチームメイトの心強いサポートを受け、残り2戦を戦うことになった。

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今シーズン2回目のフロント・ローを獲得したダニカ・パトリック。前回のミド-オハイオではスタート直後にチームメイトと接触してしまったが、今回は無難にスタートをこなして2番手を維持した。レース・ペースも安定していたパトリックは、トップを走るフランキッティと1秒以内のバトルで観衆を盛り上げるが、ピット・ストップでタイム・ロスを喫して6番手に後退。なんとか追い上げて一時は3番手まで取り返すものの、またしてもピット・ストップに手間取ってしまい、結局ポジションを上げられないまま6位でフィニッシュした。「このようなレースではトラック・ポジションが最も大事だわ。マシンはかなり速いのに、問題がないはずのピット・ストップでタイムを失ってしまっていたの。ピット・ストップ毎に何かが起きていたみたいね。毎回ピットで問題が発生していたら、当然レースは優勝できないわ。見直すべきことがあるけど、エンジン・ストールに関しては恐らくマシンの問題ね。2回目もぎりぎり発進できたという感じだったわ」と不満を吐露するパトリック。すでに速さは証明し、課題も見えている。彼女が優勝する日が近いことを改めて感じるレースだった。

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昨年、ここインフィネオンでキャリア初優勝を果たしたマルコ・アンドレッティ。今年も燃費作戦を敢行し、レース終盤の67周目にトップに躍り出た。前の周には自己ベスト・ラップを叩き出し、このまま昨年の再現と行きたいアンドレッティだったが、69周目で悲劇に見舞われる。あろうことがチームメイトのフランキッティがインサイドに飛び込んできて接触。コース外へはじき飛ばされたアンドレッティのマシンは、後ろからタイヤ・バリアに激突し、リタイアを余儀なくされてしまった。「ダリオが十分なスペースを空けて、正々堂々バトルしてくれると思っていたんだ。まさか、あんなことになるなんて、わざとやったのかと思ったよ。燃料をかなりセーブしていて、優勝も見えていたんだ。フェアにバトルすれば、優勝していたに違いないよ」と怒り心頭のアンドレッティ。チーム・オーナーで父親でもあるマイケル・アンドレッティは事故の瞬間、悔しさのあまりピット・スタンドのテントを殴るしぐさがカメラに捉えられた。見えかけていたマルコのキャリア2勝目は、またしてもおあずけとなってしまった。

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曇り空の朝を迎えたインフィネオン・スピードウエイ。昨日と同様、時間とともに雲が流れ、IPSのレースが始まる頃にはすっきりとした青空が広がった。午前10時の時点で16度と肌寒い気温も、インディ・カーのレース中には23度まで上昇。それでも昨日のような蒸し暑さが和らぎ、この三日間で一番過ごしやすい一日となった。フランキッティを先頭に、1-2-3体勢を構築するAGR勢。このまま3年連続でAGRがインフィネオンを制するかと思われたが、その牙城は同士討ちという予想外の形で崩れ去った。

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今シーズン4回目のトップ10入りとなった松浦孝亮。初日こそマシン・バランスに苦しんでいたが、予選前に行った大幅なセッティング変更が今日のレースに繋がった。安定したペースを維持し、ミスなくピット・ストップをこなしたことで、上位陣の脱落とともにポジション・アップ。10位まで順位を上げてフィニッシュした。「最初のプラクティスからかなりオーバーステアだったのですが、エンジニアが今日までに問題を解決してくれました。今日はイエローの回数が少なかったので、改めて予選でのポジションが重要だと思いましたね。レース中にいくつか速いタイムも出ていたから、僕たちはロード・コースで良い方向に進歩していると思います。今週末はとても生産的だったので、次のレースが楽しみです」と語る松浦。次戦のベル・アイルもロード・コースのため、松浦の活躍に期待が掛かる。

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IRLの決勝前に行われたIPSの第2レース。スーパー・アグリ・パンサー・レーシングの武藤英紀は、第1レースのリザルトにより、最後列となる19番手からスタートすることになった。だが、どんな状況でも諦めない武藤は、1周目からいきなり15番手まで順位をあげる離れ業を見せる。その後も攻めの走りで果敢に前車をかわし、レースの残り3周にはトップ10圏内に入ってきた。最後まで攻めの姿勢を貫いた武藤だったが、今日の追い上げはここまで。19番手から10位でフィニッシュした。「予選からいまいち流れが良くなかったので、何とか流れを変えようと思っていました。19番手からのスタートでしたけど、トップ10でフィニッシュできましたし、ランキング2位を争っていたカニングハムを自分で抜くことも出来ました。チャンピオンではないですが、ランキング2位が決定してよかったと思います。ほんとうはあまり喜ぶべき結果ではないと思うんですけど、チームでがんばった結果なので、上手く来年に繋げられればいいなと思います。最終戦はIRLだけに集中していきますよ」と意気込む武藤。レース終了後オーナーのジョン・バーンズが駆けつけ、武藤をねぎらった。IPSのポイント・ランキング2位も確定させ、いよいよ2週間後に念願のIRLデビューを果たす。