INDY CAR

松浦、プラクティスでセッティングを大幅に向上させ、予選12位に

<SUPER AGURI PANTHER RACING>
<2007 IRLインディカー・シリーズ 第15戦モトローラ・インディ300>
【日 程】8月24日〜8月26日
【開催地】カリフォルニア州ソノマ
【コース】インフィニオン・レースウェイ
【距 離】2.26マイル(3.636km)×80周=180.8マイル(290.907km)
■■■8月25日予選■■■
【天 候】快晴
【気 温】28℃
【時 間】13時00分〜(日本時間26日5時00分〜)
<ワイナリーに囲まれたレースウェイ>
 インフィニオン・レースウェイがあるのは、サンフランシスコのすぐ北に位置するソノマだ。ソノマバレー、ナパバレーといえば、カリフォルニア・ワインの産地として日本でもお馴染みであろう。全長2.26マイル(3.636km)の曲がりくねったコースのすぐ隣りにもワイン畑が広がっている。
 インフィニオン・レースウェイは太平洋から深く入り込んだサンフランシスコ湾の北端にあり、海岸線から駆け上がった丘陵地帯に作られている。この地形を利用して設計されたコースはアップダウンが激しく、多くのブラインドコーナーを持つ。そして、観戦スタンドもコースサイドの丘の形状を巧みに使って設営されている。
 カリフォルニアもそろそろ夏の終わりを迎えつつあるが、IRLインディカー・シリーズ第15戦、モトローラ・インディ300の行われた週末は、アメリカ西海岸ならではの眩しい太陽が照りつける好天に恵まれた。海が近いこともあって常に穏やかな風が吹き付ける中、集まったファンはツイスティなロードコースを疾走するインディカーの予選を堪能していた。
<グリップ不足に悩まされたプラクティス1日目>
 松浦孝亮を擁するスーパーアグリ・パンサー・レーシングは、インディアナポリスから遠く離れたソノマへと大きな希望とともにやってきていた。松浦孝亮はロードコースを得意としており、2005年の6位入賞を上回る成績を挙げようと意気込んでいた。しかし、金曜日に行われた2回のプラクティスでは、残念ながら予定していた通りの好感触は得られなかった。2セッションともにリヤのグリップ不足が露呈し、タイムを縮めることができなかったのだ。プラクティス1回目から2回目かけマシンセッティングを変更し、グリップ不足解消を目指した走行に終始することとなった。ベストタイムは1分18秒7252、走行初日の順位は13番手となった。
<プラクティス2回目に向けて大幅なセッティング変更>
 午後に予選がスケジュールされた走行2日目、松浦はディファレンシャルギヤの調整など、大きくセッティング変更を施しプラクティス3回目に臨んだ。サスペンションはピックアップポイントまでも変更し、同時にスプリングからショックアブソーバーまで、前日までとはまったく異なる考え方を基にしたセッティングである。これは大きなギャンブルでもあったが、この変更は正しい判断だった。松浦のラップタイムは1分17秒5828まで一気に1秒以上も縮まったのだ。順位こそ11番手と大きく向上することはなかったものの、上位陣とのタイム差は確実に小さなものになった。
<1周のみのアタックで争われる予選>
 ロードコースでのシングルカー予選は計測が1周しか行われない。ほんの小さなミスが大幅なグリッド後退に繋がるため、ドライバーに課せられるプレッシャーは大きい。松浦は5番目のアタッカーとしてコースイン。タイヤを暖めながら慎重にフォーメイションラップを行い、コンセントレーションを高めてグリーンフラッグを受けた。
 上り坂のターン1へと飛び込んでいった松浦は、右、左、さらに右と続くフロントセクションからひとつひとつのコーナーを全力投入でアタック。ハイスピードで急激に下りながら左旋回するターン6、フルブレーキング必須のU字状のターン7、直角コーナーをふたつ組み合わせたシケイン、さらにはヘアピン状のターン11。いずれもアグレッシブな走りを貫きチェッカーフラッグ。タイミングモニターに掲示されたのは、1分18秒7453というタイムだった。
<滑りやすくなっていた路面>
 予選タイムは午前中のベストを上回ることはできなかったが、これは主に路面コンディションの変化が影響しているものだ。気温の上昇と、予選直前に行われた30ラップのサポートレースによってグリップレベルが下がっていたのだ。出場18台のアタックが終了すると、松浦の順位は12位と決定した。
 ロードレースでは決勝日の朝にウォームアップセッションが設けられる。まだ路面温度が低く、レースコンディションとは大きく異なるものの、30分の走行時間が与えられるのだ。そこでは決勝シミュレーションを行うため、燃料は満タンにし、予選時よりも大きなダウンフォースが得られるよなセッティングを目指す。最後のファインチューニングを施したマシンを駆り、松浦は80ラップの長いレースを戦う。
■■■コメント■■■
<松浦孝亮>
「決勝は我慢強く走り続け、ランキングをひとつでも上げていきたい」
「リヤのグリップが不足し、オーバーステア気味だった昨日に比べ、マシン全体のバランスは格段に良くなりました。大幅に変えたセッティングが、功を奏したようです。スプリングやダンパーだけでなく、ジオメトリーやディファレンシャルも変えてみました。ガラッとクルマを取り換えたような感じでしたね。結果的にオーバーステアが消え、マシンの状態はかなり良くなったと思います。しかし、それでいてもトップとの間に1秒もの差があるのは、彼らと比べで我々のマシンはメカニカルグリップが足りていないんでしょうね。
 決勝では、イエローフラッグが出るタイミングもわからないし、昨年のように終盤に燃料補給が要るような展開になる場合も考えられるので、我慢強く走り続けることが重要になるでしょう。スタートからゴールまでプッシュし続け、ポイントランキングをひとつでも上げられるよう頑張ります。トップ10入りは普通に走っているだけでも可能でしょうから、目標はもっと上位へと食い込んでいくことだと思います」
<ロン・キャット:チームマネージャー>
「レース展開を味方にできる作戦で決勝に臨みたい」
「プラクティス1回目の序盤でマシンのグリップが低いことが判明した。そのセッションを通して、グリップ向上を計ったセッティング変更にトライすることになった。いくつかの改良点が見つかり、プラクティス2回目ではさらなるセッティング変更を行った。それによって若干ではあるがマシンのフィーリングの向上が見られた。しかし、100パーセント満足というレベルに到達せず、思い通りのハンドリングにすることができないまま終了してしまった。プラクティス初日のデータを基に、コウスケとエンジニアリングスタッフたちはセッティングの改善について話し合い、予選日に向けて大幅なセッティング変更にチャレンジするという結論に至った。ジオメトリーを見直しディファレンシャルギヤを変更。サスペンションはスプリングレートやショックアブソーバーのセッティングまでも変えてみることにした。プラクティス3回目を走ったコウスケは、マシンが昨日に比べて遙かに良いフィーリングになったと喜んでおり、予選に向けて小さなチューニングを行うに留めた。
 しかしコウスケが予選で記録したタイムは、自分たちが心から満足のいくレベルではなく、結果は12位となった。それでも、我々は常に優勝を目指し戦っている。コース上で何台かをオーバーテイクすることは可能なはずだし、ピットストップでのポジションアップも果たせるはずだ。作戦によってレース展開を味方につけられるようにしたい。レース展開こそ思い通りにいかなかったとしても、トップ7には食い込んでいきたい。それは十分に可能だと信じている」
■■■予選結果■■■
2.26マイル(3.636km)                 出走18台
順位 No.  ドライバー     タイム   平均速度mph(km/h)
1位 27  D.フランキッティ  1’16.7017  107.951(173.693)
2位  7  D.パトリック    1’17.1486  107.325(172.686)
3位 11  T.カナーン     1’17.1932  107.263(172.586)
4位  3  H.カストロネベス  1’17.2608  107.169(172.435)
5位  9  S.ディクソン    1’17.3379  107.063(172.264)
12位 55  松浦孝亮      1’18.7453  105.149(169.185)
※全車、シャシーはダラーラ、エンジンはHonda
 タイヤはファイアストン