シリーズは残すところ3戦となった2007年のインディカー・シリーズ。その3連戦の緒戦となるインフィネオン・スピードウエイはプラクティスが行われ、ペンスキーのエリオ・カストロネベスが総合トップとなった。前戦のケンタッキーでカナーンとの間に起きた接触事件のペナルティを受け、セッション開始から25分間も走行することが許されなかったカストロネベス。しかし、一度コースに出るとペナルティの影響を感じさせることなく快走を続けた。結局、午前中のプラクティスにマークした1分16秒5298のタイムを上回るものが誰もおらず、トップのまま初日を終えた。「今のところ、チーム・ペンスキーのマシンはちょうど良いセットアップになっているね。アンドレッティ・グリーンのドライバーに囲まれて、ハードに攻められることになると思うけど、今までの感じが良いから明日はもっと良くなるだろうし、タイムも速くなると思うんだ」と話すカストロネベス。今シーズン、14戦中6戦でポール・ポジションを獲得しており、明日の予選でもポールの最有力候補となる。
ポイント・リーダーのダリオ・フランキッティは2位で初日を終えた。ミシガンとケンタッキーのオーバル2連戦では、2戦ともマシンを大破させてしまったフランキッティ。タイトル争いでもディクソンに8ポイント差まで詰め寄られる厳しい戦いが続くなかで、イフィネオンの初日はロード・コース・マスターのディクソンを上回るパフォーマンスを見せた。残り3戦中2戦はロード・コースのため、今シーズン挙げた勝利がいずれもオーバルのフランキッティがタイトルを獲得するには、どこまでディクソンを抑えこむ事が出来るかが鍵となりそうだ。「リッチモンドの時点では65ポイントのリードがあったけど、ケンタッキーではピットでミスを犯して、スコットにアドバンテージを与えてしまったね。かなり接近しているけど、ゲームプランを変えたほうが良いのかな。僕たちにはとにかく優勝が必要だし、ベストを尽くして前にいるようにしたいね」と焦りを見せるフランキッティ。明日の予選でもディクソンより前のポジションを確保したいところだ。
現在2連勝中のトニー・カナーンは今週末も好調を維持し、初日は3位のタイムをマークした。この日、フランキッティと同じセット・アップで37周を走りこんだカナーンは、フランキッティからコンマ2秒遅れの1分16秒8343を記録。シリーズ後半戦に調子を上げ、いまやタイトル争いにも加わってきた2004年王者が順当にトップ3をキープしている。「過去数戦で100ポイントあった差を半分近くまで縮めることが出来ているんだけど、ここからがとても難しいと思うね。ダリオとは同じ道具を使っているわけだし、スコットはとても強くなっている。今はレースに勝つことだけに集中しているよ」と展望を話すカナーン。明日の予選もフランキッティ、ディクソンと白熱した予選バトルを演じてくれるだろう。
前戦のケンタッキーではレース終了後にフランキッティに追突される悲劇に見舞われた松浦孝亮。得意なロード・コースで不運を払拭したいところだったが、今日は13位に留まった。「リアのグリップが足りなくて、今はデフをチェックしています。リアのグリップが全然ないという感じです。あまり良くないですね。去年もここは良くなかったのですが、僕かマシンが合わないんです。僕とヴィットールのマシンが違うから、変えようかと思うくらいに変な状態でした。同じセット・アップにしてもフィーリングが全然違うんです」と厳しい表情を見せる松浦。明日の予選で巻き返しを狙う。
まるで初冬を思わせるくらい冷え込んでいた朝のインフィネオン・スピードウエイ。午前中のプラクティスが始まる頃には26度まで気温が上昇し、歩くと汗ばむほどの陽気となる。朝晩の寒暖差が激しくカリフォルニアらしい天候だった。丘をかけ上げって行くのはAJフォイト・エンタープライズのダレン・マニング。第2戦のセント・ピーターズバーグでは予選トップ5に入る活躍を見せ、元全日本F3チャンピオンの実力を発揮したが、今日は14位に沈んだ。
例年通り、白熱したタイトル争いが繰り広げられている今シーズン。残すは3戦となり、最終戦までにタイトル獲得の可能性があるドライバーが集められ、記念撮影が行われた。昨年も同じインフィネオンで行われたこのフォト・セッションは、ランキング・トップのフランキッティを真ん中に、8ポイント差で肉薄するディクソンと、52ポイント差につけているカナーンが両脇を固める。タイトル獲得の可能性は低くなりつつあるが、ウエルドンとホーニッシュJr.も外側に並び、写真に納まった。チャンピオン争いはあと3戦にどんなドラマが待ち受けているのか、最終戦まで片時も目を離せない。
前戦ケンタッキーのナイトレースで見事にオーバル初優勝を手にした武藤英紀。舞台を得意のロード・コースに移し、プラクティスではまず5番手につける。ところが予選に入ると思った以上にタイムが上がっていかず、今シーズン・ワーストの10位から明日のレースをスタートすることになった。「午後になってから周りのタイムが上がりましたね。ニュー・タイヤを履いたらトラクションが良くなると思っていたのですが、余計に悪くなってしまいました。元々トラクションが悪かったけど、あの車はあまり馬力がないのに凄くホイールスピンするから“何で?”という感じでした。トラクションが悪いのを忘れて他のところに集中すればよかったですね。トラクションばかり気にしてしまいました」と予選を振り返る武藤。悔しい結果に終わったが、決勝での追い上げを期待しよう。
急遽、グランダム・シリーズへの参戦が決まったロジャー安川。デイトナ24時間をともに戦ったサマックス・チームから三日前に参戦の打診があり、チームがスポンサー持込のドライバーを確保できなかったため、昨日の夜11時に参戦が正式決定した。すべてが急だったため、安川はぶっつけ本番で予選に挑むことを強いられ、デイトナ24時間以来となるグランダムのドライブだったためか予選でクラッシュを喫してしまい、17番手からスタートすることになった。「昨日の夜11時に電話が掛かってきて、インフィネオンにきてくれと言われました。朝一番早いフライトでこちらに向かいましたが、ドライブシャフトが壊れていたために練習走行の時間がほとんど取れず予選に出ることになりました。ほんとうにいきなりと言う感じでしたね。グランダムのマシンはインディカーよりかなり重量あるので、15分間で乗りなれるのはすごく難しかったです。ようやくリズムに乗れてきたと思った途端に、コーナーを通り過ぎてスピンしてしまい、それでセッションが終わってしまいました。明日のレースは展開次第だと思いますが、予選に出た人が明日最初にドライブするので、エンゲに引き継ぐまでがんばりたいと思います」と語る安川。明日はインディ、IPSだけでなくグランダムのレースにも注目したい。