INDY CAR

トニー・カナーンが今季3勝目を飾る。松浦孝亮は自己ベストタイの4位でフィニッシュ

<Honda>

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2007年8月5日(日)・決勝
会場:ミシガン・インターナショナル・スピードウェイ
天候:曇り
気温:22℃

ミシガン州デトロイト郊外にあるミシガン・インターナショナル・スピードウェイは、IRL IndyCarシリーズの中でもインディアナポリス・モーター・スピードウェイに次いで2番目に長い全長を持つ高速オーバルコースだ。しかも、コーナーにつけられたバンク(傾斜)は18度と大きく、コース全域にわたっての接近戦が繰り広げられることで人気が高い。

IRL IndyCarシリーズは昨年から出場全車がHonda V-8エンジン「HI7R」を使っているため、パワーは完全なるイコールコンディション。ドラフティングをどれだけ巧みに使ってライバルをパスしていけるかが勝負の決め手となる。全長2マイルのコースを200周して争われるレースではピットストップの回数も多く、クルーたちの仕事ぶりも勝敗に大きく影響する。

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決勝日は朝から雨にたたられたため、正午に予定されていたスタートは夕方の4時50分過ぎまでずれ込んだ。辛抱強く待ち続けたファンの歓声を浴びながら、ポールポジションを獲得したポイントリーダーのダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)を先頭に20台のインディカーはグリーンフラッグを受けた。
前日の予選日よりも明らかに低い気温、逆に高くなっていた湿度、長時間の雨によって流されたタイヤラバーと、各チームともスターティンググリッドに並べるマシンのセッティングには難しい決断を迫られた。このようなコンディションでのレースでは、周回が重ねられるにつれて路面のグリップ力も変化するため、柔軟性のあるセッティングでスタートすることが重要で、レース中にどれだけ的確なセッティング変更を施せるかが勝敗を分ける。
フランキッティはレースでも予選と同様の速さを見せた。ピットでのエンジンストールにより一旦は18位までポジションを下げたが、リスタート後の7周で2位までばん回し、その後のピットストップでトップに返り咲いて見せた。彼は200周のレースのうちの102周をリードして見せた。しかし、フランキッティはトップの座を争っていた144周目のバックストレッチでダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)と接触し、ランキング2位のスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、トーマス・シェクター(ヴィジョン・レーシング)ら7台が巻き込まれる多重アクシデントにより今年初のリタイアを喫した。

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26周にもわたる長いフルコースコーションでコース清掃がなされたあと、171周目にこの日最後のリスタートが切られた。残り30周のスプリントレースだ。リスタートのグリーンフラッグをトップで受けたのはスコット・シャープ(レイホール・レターマン・レーシング)だったが、トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が絶妙のスタートダッシュで3番手から一気にトップへと躍り出た。彼を追うのは、オーバル初優勝を目指すチームメートのマルコ・アンドレッティ。2人の戦いは0.0595秒という僅差でベテランのカナーンに軍配が上がった。予選4番手だったシャープは3位でゴールし、松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選14番手から今シーズンのベスト、そして、キャリア自己ベストに並ぶ4位でフィニッシュした。
カナーンはポイントリーダーのフランキッティ、ランキング2位のディクソンと並ぶシーズン3勝目をマーク。アクシデントに遭ったフランキッティとディクソンのポイント差はレース前の24点から変わらなかったが、カナーンはフランキッティと81点差、ディクソンと57点差に詰め寄り、チャンピオン争いはこの3人による三つ巴の戦いの様相を見せている。

■コメント

■トニー・カナーン(優勝)
「長い時間待ち続け、最後までレースを見届けてくれたファンの皆さんに感謝したい。エキサイティングなレースをお見せすることができたと思う。今年がミシガンでの最後のレースとなるのは非常に残念だ。今日のレースに関して、僕らドライバーたちは1人1人がいかに戦ったかを深く考え直さねばならないと思う。インディカーの安全性は高いが、今日の僕らは本当に幸運だった。レース終盤のバトルには、チームオーダーは一切なかった。勝つのは僕か、あるいはチームメートのマルコ(アンドレッティ)かという勝負になった。イン側のラインを守り通した僕に、マルコは何度かアウトからオーバーテイクを試みたが、僕の方が僅かながら速いマシンを手にしていた」

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■マルコ・アンドレッティ(2位)
「とてもいろいろなことがあった一日だった。僕らのマシンはとてもバランスのいいものに仕上がっていたが、スピードが足りていなかった。そこでピットストップでリアの空力パーツを外すことにした。長い作業時間を要するため、順位は最後尾まで下がったが、コースへと戻るとスピードがグンと上がっていることを感じた。集団の中では速かった僕らだが、レース終盤のトニー(カナーン)との一騎打ちでは、そこまでのスピードを僕らのマシンは備えていなかった。それでも、僕らにはオーバルでも勝てる力があるということが今日のレースで証明されたと思う。オーバル初勝利を今シーズン中に飾ることができると期待している」

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■スコット・シャープ(3位)
「レースが進むに従ってアウト側のラインが速くなっていった。それが僕らにはプラスに働いた。しかし、最後には一番イン側のラインを走った。そして、そこを走っても十分なスピードを保てるマシンだったことが、トップ3フィニッシュにつながった。シリーズランキングを争う上でも大量のポイントを稼ぐことができ、とてもうれしい。最後のピットインのタイミングなど、作戦もピタリと当たったレースだった。チーム全体のハードワークが実っての3位獲得だ」

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■松浦孝亮(4位)
「スタート直後から3ワイド、4ワイドの戦いになっていたので、多重アクシデントが起こる可能性を心配していました。そこで、レース終盤の勝負どころに賭けようと、ずっとポジション争いはせず、しかし、上位陣から引き離されないように走っていました。自己ベストに並ぶ4位でフィニッシュできたことをとてもうれしく思います。ピットストップも速かったし、作戦面でもチームが力を発揮してくれたレースでした。ただ、最後にスコット(シャープ)をパスしてトップ3に入りたかった。ターン1側では僕の方が少し速く、バックストレッチで何度か並びかけるところまではいけたのですが、ターン3側は相手の方が速かった。トップ3に入れなかったのは悔しいですが、このレースをきっかけとして、残るレースでさらに上位のフィニッシュを果たすべく全力で戦っていきます」

■ロバート・クラーク(HPD社長)
「ミシガン・インターナショナル・スピードウェイでのインディカー・レースは今年が最後になる。イベント開催前にそう発表がなされたため、どれだけのファンがレースを見に来てくれるか心配していたが、とても多くのファンが集まってくれた。そして、彼らは雨の中、辛抱強く5時間もレース開始まで待っていてくれた。IndyCarレースに情熱を持ったファンが今日のサーキットに集まってくれたことをとてもうれしく感じた。彼らにとっては、今日のレースはエキサイティングなものであっただろう。しかし、同時にとても危険なレースでもあった。これだけ高速のバトルで多重アクシデントが発生しながら、だれ1人大きなケガをしなかったのは、幸運というほかない。コース全域を全開で走ることができるレースではなく、ドライバーのスキルがマシン間にスピード差を生むレースとなるよう、新しいレギュレーションを作る努力がなされるべきだ」