INDY CAR

インディ・カー・シリーズ 第6戦 ミルウォーキー[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

画像

第3戦のもてぎ以来、今シーズン2勝目を挙げたトニー・カナーン。序盤にトップ争いを演じながら、コーション中のピット・クローズ時にピット・インするミスを犯し、ペナルティを科せられた。隊列の最後尾となったが、なんとかラップ・ダウンを免れたカナーンは、次々に前車を抜き去り、レース終盤には2番手まで巻き返す。202周目にはトップを独走していたカストロネベスがクラッシュしたことで、労せずしてトップへ浮上。レースの残り11周でこの日最後のコーションがとかれると、力強いリスタートを決め、2位のフランキッティを2.5707秒引き離し、ミルウォーキー2連覇を達成した。「必ず一番速いマシンが勝つわけじゃないよ。それはどんなときにも言ってきたことだね。今日は難しいレースだったから、ずっとがんばらなくてはいけなかった。幾つか不運な出来事があって、大きくタイム・ロスしてしまったけど、僕がミスをしたらチームが取り返してくれるし、彼らがミスをしたら僕が取り返した。チームがこんなに強いのはそのおかげなんだ。次のテキサスを楽しみにしているよ」と喜ぶカナーン。自らのミスで勝利を逃したインディ500のリベンジを果たした。

画像

先週インディ500を制したダリオ・フランキッティは2位に入った。この日飛びぬけて速いスピードを持っていたというわけではないが、10番手から確実に追い上げていき、最後のコーション時には4番手つけていた。そして、レース再開された215周からはまさにフランキッティ・ショーとなった。リスタートを上手く決め、216周目にまず3番手のウエルドンをオーバーテイクすると、その3周後の219周目に、2番手のサム・ホーニッシュJr.をアウトから鮮やかにパス。そこからチームメイトのカナーンを追い詰めるまでにはいたらなかったが、わずか10周で2台を抜き去る力走で2位を獲得した。「最初はアンダー・ステアがひどかったね。リスタートのトラフィックでのポジション取りは難しかったけど、トップに追いついてからは、とてもいい感じだったよ。単独での調子は良かったし、ピット・ストップのたびに調整していたのも良かったね」とレースを振り返るフランキッティ。今シーズンの好走とインディ500というビッグ・レースの勝利で、ついにポイント・リーターへ浮上した。

画像

3位はフジフイルムの特別カラーをまとったダン・ウエルドン。4番手からスタートを無難に決めたウエルドンは、序盤から上位陣をピッタリとマークし、チームの素早いピット作業に乗じて93周目と139周目にトップへ浮上する。ところがコーション明けのリスタートで、ウエルドンはポジションを守りきることができない。トップからの2回のリスタートで2度ともカナーンにポジションを奪われただけでなく、最後はフランキッティにもかわされて3位に終わった。「最後のピット・ストップでタイヤを履き替えなかったのは、計算した上のギャンブルだよ。このギャンブルに出なかったらどうなっていたか分からないけど、とにかく僕たちはこのチャンスに掛けたんだ。かなり惜しいところまでいったから、しないよりは良かったんじゃないかな」と話すウエルドン。ファステスト・ラップを記録するだけのスピードを持っていただけに、悔やまれる結果となった。

画像

ポール・ポジションからスタートしたエリオ・カストロネベスは、序盤から他車を引き離して225周中126周をリード。レースを完全に支配し、彼の勝利は確実なものと思われていた。しかしレースが終盤に差し掛かった202周目、ホームストレート内側のウォールに赤と白のペンスキーが無残な姿で立ち止まっていた。原因はチーム独自のモディファイが許されているリアウイングの支柱が突如として破損したため。急激にダウンフォースを失ったマシンがターン4の出口から何度もスピンし、やっとホームストレートで止まったというわけだ。「もう笑うしかないよね。信じられないくらい不運なことだよ。レースにはほとんど勝っていたようなものだから」とがっくりと肩をおとすカストロネベス。予選まで鉄壁の強さを発揮していたカストロネベスは、まったく予期せぬマシン・トラブルで足元をすくわれることになった。

画像

今シーズン・ベスト・グリッドの6位を獲得した松浦孝亮。スタートを問題なく決めてポジションをキープしていたが、タイヤ・プレッシャーのバランスに苦しみ、ペースが一向に上がらない。守り続けた順位も18周目にチームメイトのヴィットール・メイラに奪われてしまい、たった3周で10位まで後退。不運なことに、一回目のピット・ストップでクルーのミスが重なったことで、さらに順位を落として最後尾になってしまう。そこから追い上げを試みたものの、バランスの悪さを解消できず、2週遅れの12位でフィニッシュした
「スタートしたときのタイヤ・プレッシャーが悪かったですね。それが後を引くことになりました。1回目のピット・ストップでタイヤの内圧の変更と、フロントウイングを調整してオーバーステアを解消しようとしたら、今度は大きいアンダーステアになり、2ラップ・ダウンになってしまいました。流れが悪く悔しいレースでした。単独では速いマシンだったのに、タイヤ・プレッシャーのミスとピット・ストップのミスで、流れが悪くなりました。それがなければ、ペース的に6位にはなれていたと思います。ヴィットールよりも単独のスピードは速かったと思いますよ。でも、ミルウォーキーは難しいコースなので、完走できてよかったですね」と話す松浦。予選結果から見れば残念な結果といえるが、確実に復調を見せているため、今後の松浦の活躍に期待しよう。

画像

雨の予報だったミルウォーキーは朝から晴れ間が広がることになったが、気象レーダーでは雨雲が近づいていることが確認され、レースがスタートする3時ごろに雨雲が直撃するはずだった。予想通り午後2時に小雨がぱらついたが、雨粒は大きくなることなく止み、雲は上手い具合にサーキットを避けて行ったようだ。気温は21度しかなかったが、雨が近づいているせいもあって湿度が高く、少し蒸し暑かった。レース中は降ることがなかった雨は、レースが終わるのを待っていたかのように、レース終了1時間後に降り出した。

画像

雨の影響もなく、予定通りスタートが切られた決勝。ポール・ポジションのカストロネベスを先頭に、18台のマシンがターン1へなだれ込んでいく。スタート直後からカストロネベスが後続を引き離し、力強いパフォーマンスを示した。この後、彼がこのホームストレートでマシンを止めることなど、誰が想像しただろうか?

画像

2004年のインディ500ウイナーのバディ・ライスが力走を見せた。デブリによるこの日最初のコーションが発生し、25周目に上位陣がピットへ向かう中でライスとドレイヤー・アンド・レインボールド・レーシング(DRR)陣営はステイ・アウトを選択。これでトップにたったライスは、リスタート後もカナーンなホーニッシュJr.といった強豪の猛攻を退け、37周に渡ってトップを快走した。見事な戦略を組み立てたDRR陣営だったが、今度はピット・ストップのタイミングを誤り、ライスはガス欠に。パワーを失ったマシンはズルズルと後退し、ピット作業を済ませてコースに復帰したときにはラップ遅れとなってしまう。ライスとDRR陣営は挽回を狙ったものの、このラップ遅れを解消することができず、結局、159周目のターン2でウォールにヒットして戦列を去ることになった。今回は残念な結果に終わったが、決して戦闘力の高くないチームで奮闘したライスは、リンカーン・エレクトリック・ハード・チャージャー・アワードを獲得した。

画像

5番手スタートのホーニッシュJr.は、レース終盤に2番手を走行していたが、219周目にフランキッティにかわされた途端、一気に後退してそのままピットに飛び込んだ。「最後の20周くらいで、リアウイングに何か問題が起きたんだ。たぶんエリオに起こった問題と同じものだと思う」とトラブルについて語るホーニッシュJr.。一度はピット・アウトしたものの、トラブルの状況は深刻で、ラスト・ラップに再びピット・インしてそのままレースを終えた。これまでの強さが嘘のようにペンスキー勢はマシン・トラブルに見舞われ、2台揃って掴みかけていたポジションをみすみす逃す結果となった。

画像

ハーレー・ダビッドソン発祥の地として知られているミルウォーキー。現存するアメリカ最古のオーバル・コースであるザ・ミルウォーキー・マイルでのレース・セレモニーでは、ハーレーによるパレードが毎年恒例と成っている。時速300km以上でコースを駆け抜けるインディカーの迫力も圧巻だが、大排気量のアメリカン・バイクが大挙してコースをパレードする光景も迫力がある。ちなみに、ミルウォーキー市内には、ハーレーの本社と100年以上の歴史を誇る同社の博物館があり、多くのファンがこのインディカー・レースに合わせて博物館を訪れるという。

画像

先週のインディ500ではレース中盤にトップ争いを演じたダニカ・パトリック。今日は最後列の17番手スタートから追い上げて一時6位を走行していたが、88周目にポジションを争っていたウエルドンと接触してしまう。致命的なダメージは避けられたものの、ステアリング・ロッドの修復で長いピット・ストップを強いられ、一気にラップ遅れに。それでも、諦めなかったパトリックはラップ遅れを挽回、最終的にトップから8.0205秒遅れの8位でフィニッシュすることに成功した。見事な走りを披露したパトリックだったが、本人はこの結果には納得がいかず、特に88周目のアクシデントには相当ご立腹の様子。「ダリオをパスしてダンの真横に並んでいたわ。コーナーに入ったら3ワイドだと予想していたし、その後無線で確認しながら、いつも3ワイドになるときと同じように自分のラインを守っていた。でもダンがいきなりインに入ってきたのよ」とパトリックはアクシデントの状況を説明する。レース後も怒りが収まらないパトリックは、マシンを降りるとウエルドンに詰め寄り、ちょっとした口論になったようだ。「『何考えてるの?私が見えなかったの?なぜあそこで引かなかったのよ』と言ってやったわ。彼は何も言わなかったけどね」とインタビューに応え、いつも通り強気な姿を見せたパトリック。一方のウエルドンは「レースに勝てないプレッシャーじゃないの」とパトリックの怒りをクールにかわしていた。