＜US-RACING＞
100周のレースのうち、95周をリードする圧倒的なパフォーマンスで、優勝を決めたエリオ･カストロネベス。ポール･ポジションからダッシュを決め、1回目のリスタート後に2番手との差を瞬く間に広げていった。2回目のコーションで、10秒近くあった差は水の泡となるが、ピット･タイミングをずらしてトップに立ったウエルドンを、リスタートで接触しながら交わす果敢な走りでトップをひた走る。5回目のコーションの後、2番手を走るディクソンに追い詰められる場面もあったが、トップを堅持したままフィニッシュ。セント･ピーターズバーグ2連勝を飾った。「今日はあらゆる面で安定していたね。ペンスキー･チームは信じられないくらい素晴らしいよ。冷えたタイヤでは少し苦労したけど、マシンはとても安定していた。ほとんどすべてのことが完璧だった。ギアが少しずつ磨耗し始め、ミスをしないように気をつけなければならなかったから、ギアに負担が掛かるブレーキング･ポイントでは特に注意が必要だったんだ。最高の週末だよ。一生懸命やった成果が出たんだから」と喜びを語るカストロネベス。記者会見の席上でジョークを交えながら、饒舌に話していた。昨年に引き続き、この勢いを持続して、今年のインディ･ジャパンでもフェンス登りを見せてくれるだろうか。
3日間天候に恵まれたセント･ピーターズバーグ。決勝日は3日間の中で最も暑い27度を記録する。スタートは全車クリーンに決めて第1ターンを抜けていったが、ターン4でカナーンとフランキッティが接触したことをきっかけに、5台が絡むマルチカー･アクシデントに発展。1周目からイエローが出る波乱の幕開けに。コンクリート･ウォールで囲まれたストリート･コースにもかかわらず、ひるむことなくアグレッシブに走るドライバー。ところが、アグレッシブすぎて各所で接触、スピンが続出した。そのためレースは合計5回ものコーションが発生し、前座で行われたIPSと同様、大荒れの展開となった。エントリーした20台中、リタイアしたのはエド･カーペンターただ一人だけだが、無傷でフィニッシュしたマシンを探すのが難しいほどのレースだった。
開幕戦を制したウエルドンが9位に沈むなか、第2戦に続いて今日のレースもきっちり2位で締めくくったスコット･ディクソン。チャンピオン･シップでポイント･リーダーに浮上した。「ターゲット･チップ･ガナッシ･レーシングはすばらしいよ。今年たった2レースで2回2位を獲って、ポイント･リーダーになれたんだ。ダン(ウエルドン)は少し難しい一日だったけど、次のレースでは巻き返してくるはずさ。エリオ(カストロネベス)は、僕たちを上回るパフォーマンスだったけど、冷えたタイヤでは僕たちの方が速かったと思う。何のミスも犯さず、クリーンなレースが出来た。いい一日だったよ」と今日のレースを振り返る。他のドライバーが接触やアクシデントで後退するなか、ディクソンは一人だけ無傷でレースを終えた。
昨日の予選でクラッシュしたカナーンは、バックアップ･カーを使用せず、マシンを修復してレースに臨んだ。朝のウォームアップでは壁すれすれのアグレッシブな走りを見せてトップ･タイムをマークし、6番手スタートから優勝を狙ったカナーン。だがスタートして間もなく、1周目のターン4でフランキッティをアウトからかわそうとした際に、勢いあまって接触し、スピンを喫して大きく後退してしまう。しかしカナーンはここから驚異的な追い上げを見せ、次々に順位を上げていった。ホーニッシュJr.、メイラ、マニングといった上位陣のミスにも乗じ、気がつけば3番手を走行。5回目のコーションが明けた後、トップ2を追走して一時はトップと1秒差まで詰め寄るが、追い上げもここまで。予選での高パフォーマンスからクラッシュまで、浮き沈みの激しい週末となったカナーンは3位でフィニッシュした。「昨日の予選中にクラッシュして6番手まで後退したから、僕はチームを助けることができなかった。なぜアクシデントを起こしたかについて、考えることしかできなかったよ。こんなことを言うのは嫌なんだけど、僕たちは勝てるマシンをもっていたんだ。入るべきポジションまで持っていくことが出来なかった。何もないよりは3位の方が良いけどね。次のもてぎに備えるよ」と表情は明るく、3位にも満足そうだったカナーン。次戦、ただ一人過去のすべてのレースに出場している日本で、もてぎ初優勝を狙う。
10番手からスタートした松浦は、いきなり1周目のマルチカー･アクシデントに巻き込まれてしまう。ターン4にアプローチしたところ、ジェフ･シモンズがインサイドからオーバー･スピードで突っ込み、そのまま松浦に追突。スピンした松浦のマシンは後ろからウォールにヒットし、リア･ウイングとサスペンションにダメージを負った。「僕の前でダリオとトニーが接触して、みんなはそれをどけようとしてコーナーに入っていったんですけど、そうしたらジェフ･シモンズが2週連続で僕に絡んできた。2週連続で同じドライバーに接触されるなんて、最悪のシチュエーションです」と、アクシデント後にピットへ戻ってきた松浦。このままリタイアかと思われたが、チームはガレージでマシンを修復し、15周遅れながら松浦をコースに送り出した。29周目に一度スピンを喫してしまうが、1分3秒台の上位陣と変わらないタイムをマークしながら、最後まで走りきった松浦。「バランスは良くなかったけど、何とかいいタイムで走れたし、レースができていたんで、クルーががんばってくれたことに感謝します。クルーのみんなのがんばりと言うか、高いモチベーションには感動しました。15周も遅れていて、その中でどういうレースをやったら良いかわからなかったし、結果は変わらなかったけども、せっかく直してくれたクルーのためにも、自分のがんばりを見せたかったので、自分の持っている残りの力で全力で走りました。このコースはクルマの面で、もてぎに繋がるところはないけど、このレースでチームがひとつになったのは間違いないし、みんなのモチベーションも上がったので、次のもてぎではいい結果を出したいです」と話す松浦。次戦もてぎのレースに期待しよう。
今週末、誰よりも壁際まで攻めていたヴィジョン･レーシングのトーマス･シェクター。アグレッシブな走りが功を奏し、予選を8位で通過する。迎えた決勝は、ホーニッシュJr.やウエルドンといった強豪を従え、見事6位フィニッシュ。エックスラクト･ハイエスト･フィニッシャー賞を受賞した。「OKさ。最終セットのタイヤでは苦しんだけど、全体的に競争力があってよかった。僕たちは良くやったと思う。ホーニッシュの前をキープしてトップ6フィニッシュが出来たことは、チームにとってすばらしいことだよ」と喜びに浸るシェクター。開幕戦8位、セント･ピーターズバーグで6位に入り、まだまだ調子を上げていきそうだ。