<Honda>
2006年6月10日(土)・決勝
会場:テキサス・モーター・スピードウェイ 天候:快晴 気温:30℃
テキサス州フォート・ワース郊外のテキサス・モーター・スピードウェイは、バンクの傾斜角が24度とシリーズで最も急であることが特徴だ。このコースで行われるレースは多くのインディカーが集団を形成しての接近戦となるのが恒例で、何度もインディカー・レースならではのクロース・フィニッシュが実現されてきた。
2006年の第6戦として開催されたボンバーディア・リアジェット500も、スタートからゴールまで息詰まるドッグファイトが続いた。出場全車がHonda Indy V-8を搭載する今年は、その接戦ぶりがさらに激しくなっているが、今回のレースからは出場全車がダラーラ・シャシー使用となったこともあり、チーム間のマシン・パフォーマンスの差がまた一段と小さくなる状況に変わっている。
テキサスでのレースは、今年最初のナイトレースである。スタートは太陽が地平線へと沈む少し前の夜8時。レースは1周の平均時速が208マイルから211マイルで進み、IndyCarシリーズ史上3番目、テキサス・モーター・スピードウェイでのレースとしては最速のペースでゴールを迎えた。
2度のフルコースコーションと、3度のピットストップを含めても平均時速が185.710マイルに達したレースで優勝したのは、予選3位だったエリオ・カストロネベス(マールボロ・チーム・ペンスキー/ダラーラ)だった。2位には0.2402秒の僅差でスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング/ダラーラ)が入り、3位は昨年度シリーズチャンピオンのダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング/ダラーラ)。ポールポジションからスタートした今年度Indy500ウイナーのサム・ホーニッシュJr.(マールボロ・チーム・ペンスキー/ダラーラ)は、最後のピットストップでエンジンストールしたために勝利のチャンスを逃した。
カストロネベスは、これで今シーズン3勝目。第2戦終了時点からポイントリーダーとなっている彼は、今回またポイントリードを広げることに成功した。ポイント2位は、今回2位でゴールしたディクソンで、2人の差は22点である。
予選10位からスタートしたスーパーアグリ・フェルナンデス・レーシングの松浦孝亮は、得意のコースで自信あふれる走りを披露。序盤にトップグループの4位までポジションを上げ、レース中盤には2位を走った。ピットストップのタイミングが悪かったために最終的に8位フィニッシュとなった松浦だが、今後の戦いがますます楽しみになる勢いのあるレースぶりを見せた。
<コメント>
■エリオ・カストロネベス(優勝)
「今日はクルーたちのピットストップが信じられないほどに素晴らしかった。彼らはIndy500でのピットストップ・コンテストで優勝した。その実力が今日のレースでも発揮されていた。最後のピットストップでは、インラップとアウトラップも両方とも良かった。序盤には燃費をセーブしろとピットから指示されていたが、自分としては全開で戦いたかった。しかし、彼らの作戦の良さも最終的に今日の勝利に繋がった。チーム全体でつかんだ優勝だ。チーム・ペンスキーは本当に最高の力を持ったチームだ」
■スコット・ディクソン(2位)
「エリオ(カストロネベス)との間を走っていたトーマス・シェクターが僕を引っ張ってくれたが、もう少しのところで優勝には手が届かなかった。あと1周レースが長かったら、もっとエキサイティングなゴールシーンになっていただろう。エリオと僕に、ダン(ウェルドン)も加わっての3台での優勝争いになっていたはずだ。ダンはものすごいスピードで僕らに迫っていたからね。2位ではあったが、今日のレース内容は非常に良かったし、ポイントもたくさん稼ぐことができた」
■ダン・ウェルドン(3位)
「最後のピットストップでホイールナットを落とすトラブルが起きてしまった。クルーたちは全力を出し切って戦ってくれており、素晴らしい力を発揮してくれている。レースではこうしたことが起こるのは仕方のないことだ。しかし、これだけ激しい戦いが続いているシリーズにおいては、勝利をまたもチーム・ペンスキーにプレゼントしてしまうことなど、もう二度と許すことはできない。これからもチーム全体でハードワークを続けていく」
■松浦孝亮(8位)
「内容は良かったと思います。序盤にみんながハンドリングの悪さに苦しんでいた時、自分たちは非常に良いマシンになっていました。トップグループで戦える力を見せたことで、クルーたちも自信を持つことができたと思います。しかし、1回目のピットストップでウイングセッティングを変更してからは、少しスピードが落ちてしまいましたね。そうした部分で自分たちは、まだまだ力をつける必要があると感じました。今日はピットストップのタイミングが非常に悪かった。特に2回目のピットストップを終えた時に、ダニカ・パトリックがピットインしてきて、彼女との接触を避けるためにピットに3秒ぐらい長く止まっていなければならなかったのは痛かったですね」
■ロバート・クラーク:HPD社長
「テキサス・モーター・スピードウェイには今年も本当にたくさんのファンが集まってくれた。IRL IndyCarシリーズ史上で3番目に速いレースは、テキサス・モーター・スピードウェイにおける最速のレースともなった。Hondaはエキサイティングなレースをエンジンサプライヤーとして支えることができていたと思う。今回のレースではスピードに加え、終盤にはそれぞれのチームの作戦も絡んでくるスリリングな展開となってもいた。
これで6戦が終了したが、すべてのレースでチーム・ペンスキーとチップ・ガナッシ・レーシングが勝利を挙げてきている。しかし、今日のレースで明らかになったとおり、フェルナンデス・レーシングは2台ともに実力を向上させてきているし、ビジョン・レーシングも今シーズンになって力を伸ばしていることが明らかになった。全員が同じパワーのHonda Indy V-8を使うことで、IndyCarシリーズはチーム同士の戦いが去年まで以上にし烈となり、同時にそれぞれのチームのハードワークが実力の接近を果たさせることにも繋がっている。今後さらに多くのチームが優勝争いへと加わるだけの力をつけ、今以上に緊迫した、ファンを楽しませるレースを行ってくれることを期待したい。
その一方で、バディ・ライスにエンジントラブルが発生したことは非常に残念だった。まだその原因は判明していないが、Indy500から投入している新スペックには、これまで何のトラブルも起きていなかっただけに奇妙ではある。組み立て段階で何かがあったのか、一部のパーツの材質に問題があったのか、HPDに戻って速やかに原因を解明したい」
<決勝リザルト&ポイントランキング>
順位 No. ドライバー チーム C/E/T タイム/差
1 3 H.カストロネベス Marlboro Team Penske D/H/F –
2 9 S.ディクソン Target Chip Ganassi Racing D/H/F +0.2402
3 10 D.ウェルドン Target Chip Ganassi Racing D/H/F +0.2981
4 6 S.ホーニッシュJr. Marlboro Team Penske D/H/F +14.5389
5 8 S.シャープ Delphi Fernandez Racing D/H/F +14.5895
6 4 V.メイラ Panther Racing D/H/F +15.9294
7 11 T.カナーン Andretti Green Racing D/H/F +16.1398
8 55 松浦孝亮 Super Aguri Fernandez Racing D/H/F +22.3327
9 20 E.カーペンター Vision Racing D/H/F +22.9791
10 2 T.シェクター Vision Racing D/H/F +1Lap
11 7 B.ハータ Andretti Green Racing D/H/F +11.0953
12 16 D.パトリック Rahal Letterman Racing D/H/F +16.0456
13 27 D.フランキッティ Andretti Green Racing D/H/F +16.2907
14 26 Ma.アンドレッティ Andretti Green Racing D/H/F +20.2466
15 17 J.シモンズ Rahal Letterman Racing D/H/F +2Laps
16 14 F.ジァホーネ A.J. Foyt Enterprises D/H/F +3Laps
17 51 E.チーバーJr. Cheever Racing D/H/F +0.1751
18 15 B.ライス Rahal Letterman Racing D/H/F +130Laps
19 5 B.ラジアー Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +144Laps
順位 ドライバー チーム 総合 ポイント
1 H.カストロネベス Marlboro Team Penske 232
2 S.ディクソン Target Chip Ganassi Racing 210
3 D.ウェルドン Target Chip Ganassi Racing 195
4 S.ホーニッシュJr. Marlboro Team Penske 194
5 T.カナーン Andretti Green Racing 164
6 V.メイラ Panther Racing 152
7 S.シャープ Delphi Fernandez Racing 134
8 松浦孝亮 Super Aguri Fernandez Racing 131
9 D.パトリック Rahal Letterman Racing 125
9 B.ハータ Andretti Green Racing 125
11 D.フランキッティ Andretti Green Racing 122
12 Ma.アンドレッティ Andretti Green Racing 118
13 F.ジァホーネ A.J. Foyt Enterprises 117
14 B.ライス Rahal Letterman Racing 107
14 T.シェクター Vision Racing 107
16 E.カーペンター Vision Racing 87
17 E.チーバーJr. Cheever Racing 82
18 B.ラジアー Dreyer & Reinbold Racing 78
19 P.J.チェッソン Hemelgarn Racing 54
20 J.シモンズ Rahal Letterman Racing 51
21 Mi.アンドレッティ Andretti Green Racing 35
21 R.ブリスコー Dreyer & Reinbold Racing 35
23 M.パピス Cheever Racing 16
24 ロジャー安川 Playa del Racing 14
25 J.ラジアー Playa del Racing 13
26 A.アンサーJr. Dreyer & Reinbold Racing 12
26 R.モレノ Vision Rasing 12
26 T.エンゲ Cheever Racing 12
26 T.ベル Vision Racing 12
26 P.J.ジョーンズ Team Leader Racing 12
26 A.ダーレ Sam Schmidt Motorsports 12
32 A.ルーエンダイクJr. Luyendyk Racing 10
32 S.グレゴワール Team Leader Racing 10
32 L.フォイト A.J. Foyt Racing 10
32 T.メデイロス PDM Racing 10
32 J.バックナム Hemelgarn Racing 10
37 P.ダナ Rahal Letterman Racing 6