INDY CAR

難しいコンディションのレースでスコット・ディクソンが優勝

<Honda>
2006年6月4日(日)・決勝
会場:ワトキンス・グレン・インターナショナル 天候:曇りときどき雨 気温:14℃
 Indy500を終えたばかりの2006年IRL IndyCarシリーズは、休む間もなく第5戦ワトキンス・グレン・インディ・グランプリを迎えた。伝統あるロードコースで開催されたレースは、IRL IndyCarシリーズ史上初めて、ウエット・コンディションでスタートした。

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 スタートして間もなく路面は乾き始めたが、レース中盤からは雨が降ったり止んだりで、常にグリップの低い状態でレースは争われた。スピンやアクシデントが多発し、7回もフルコース・コーションが出される難しい戦いを制したのは、4番グリッドからスタートしたスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング/パノス)だった。彼は2位でゴールしたヴィットール・メイラ(パンサー・レーシング/ダラーラ)に2秒3311の差をつけてチェッカーフラッグを受け、ワトキンス・グレン2連覇を達成した。3位にはバディ・ラジアーに代わってドレイヤー&レインボールド・レーシングのマシンを与えられたライアン・ブリスコーが入賞した。
 ワトキンス・グレン・インディ・グランプリが行われたのは、ニューヨーク州東北部の山間部にある全長3.37マイルの高速コース=ワトキンス・グレン・インターナショナル。1980年まで20年間にわたってF1グランプリを開催していたアメリカでも長い歴史と伝統を誇るロードコース・サーキットだ。多くの湖と緑豊かな山々に囲まれたワトキンス・グレンの村は、1957年に常設サーキットが完成される以前から公道でのレースが行われていた。昨年度はシーズン終盤にスケジュールされたワトキンス・グレン・インディ・グランプリだが、今年はIndy500のすぐ翌週へと移動して話題性がアップした。レース・ウイークエンドを通して天候に恵まれなかったが、それでも熱心なファンがサーキットには集まっていた。
 悪天候の影響により、スターティンググリッドは金曜日のプラクティスタイムによって決められた。ポールポジションを獲得したのはエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー/ダラーラ)。フロントロー外側のグリッドは、トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)のものとなり、2列目イン側の3番グリッドは、Indy500で2位フィニッシュを果たしてルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)が手に入れた。昨年のワトキンス・グレンで優勝しているディクソンは4番グリッド。昨年度シリーズ・チャンピオンのダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング/パノス)は5番手。そして、Indy500で優勝したばかりのサム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー/ダラーラ)が6番グリッドからスタートした。

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 ターン1からターン2は晴れていても、その先のバックストレッチを抜けた後のシケインでは雨が降っている。そんなコンディションでのレースは、ロードレースを得意とするベテラン勢でも路面のコンディションを予測するのは不可能だった。コースの部分によって雨の降る強さが異なることも多かった。ミスなく走り切ることが今回のレースでは最も重要で、それを最も見事に行ったのがディクソンだった。
 ポールポジションからスタートしたカストロネベスはレース終盤にスピンし、結果は7位。2番グリッドからスタートしたカナーンもコースアウトしてマシンにダメージを与え、1周遅れの11位でのゴールとなった。Indy500ウイナーのホーニッシュJr.もスピンで1周のラップダウンに陥り、フィニッシュは12位だった。
 松浦孝亮(スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシング/ダラーラ)は12番手からのスタートで8位までポジションを上げた。難しい路面コンディションでの戦いでマシンのハンドリングにも手応えを感じていた松浦だったが、20周目に切られたリスタート後にメインストレートで1台をパス。さらにもう1台をターン2へと続く短いストレートで抜こうとしたところでスピンに陥り、今シーズン初のリタイアとなった。
<コメント>

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■スコット・ディクソン(優勝)
「順位が目まぐるしく入れ替わるレースで、誰が本当に速いのか最初はわかりにくかった。しかし、自分たちのマシンが非常に良い仕上がりだとレース序盤の戦いで明らかになったので、自信を持って最後まで走り切ることができた。あとはレース展開が自分たちのピットタイミングに対して裏目に出ないことだけを心配していた。最後にリスタートが連続で行われたが、タイヤの温度を保ち続けるのは難しかった。どのコーナーにどれだけのスピードで突っ込んで行けるのかの判断も難しかった」

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■ヴィットール・メイラ(2位)
「今日は誰にとっても本当に難しいコンディションでのレースとなっていたので、2位という結果を得られ喜んでいる。レースを運営する人々にとっても大変なコンディションだったし、レースを見に来てくれたファンにとっても本当に大変なレースになっていたと思う。クルーたちにとってもコンディションは厳しかった。そんな中、今週もパンサー・レーシングは素晴らしい働きぶりを見せてくれた。この力があれば、すべてがうまく行った時に優勝を手にすることができる。僕はそう信じて戦い続けるつもりだ」

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■ライアン・ブリスコー(3位)
「これ以上嬉しいことはない。終盤の戦いでは優勝にさえ近づけたのだから驚きだ。スポット参戦で3位に入賞する戦いができたことは素晴らしいし、ハードワークをこなしてくれたチームのためにも嬉しく思う。正直言うと、今回はトップ10フィニッシュができればいいと考えていた。最後はスリックのままで行くのが結果的に正解だった。雨はコースを避けてくれたみたいだね」

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■松浦孝亮(リタイア)
「ハーフウエットのコースコンディションでマシンのハンドリングが良く、前を行くマシンを確実に抜くこともできていました。しかし、場所によって路面の濡れ具合が違っていたので、経験豊富なドライバーたちでもスピンをしてしまう難しいレースになっていました。1台をオーバーテイクしてターン1に入った後、ホーニッシュJr.の加速が悪かったので彼のインへ入ってパスしようとしたところでスピンをしてしまいました。あそこは舗装のつぎはぎがあるので、グリップが違っていたのかもしれません。本当に残念な結果となってしまいました。次のテキサスは自分もチームも得意なコースなので頑張ります」
■ロバート・クラーク:HPD社長
「今週もHonda Indy V-8にトラブルは一切発生せず、エキサイティングなレースを行うことができた。Indy500から投入し始めた耐久距離を1200マイルに設定したエンジンも、我々の期待していた通りの安定したパフォーマンスを発揮しており、大変喜んでいる。Indy500、ワトキンス・グレンと続けて使用したエンジンをこれからすべて分解してチェックを行うが、大きな問題が発見されることはないだろう。1200マイルにわたって同じパワーを発揮し続けるHonda Indy V-8のスペックは、耐久性とパワーを両立したものにできているようだ。
 優勝したスコット・ディクソン、2位となったヴィットール・メイラに『おめでとう』と言いたい。そして、3位でゴールしたライアン・ブリスコーに対しては、IndyCarシリーズへの復帰を歓迎したい。今日は寒く、雨も降り、大変なレースだった。アクシデントが多発し、フルコース・コーションも多かった。天候がレースにとってベストなものとはならず、サーキットまで足を運んでくれたファンの人たちも思う存分にレースを堪能することはできなかったかもしれない。しかし、ベストと考えられているドライバーでもミスを冒すほど難しい、エキサイティングなレースになっていた」

決勝リザルト&ポイントランキング

順位 No. ドライバー チーム C/E/T タイム/差
1 9 S.ディクソン Target Chip Ganassi Racing P/H/F –
2 4 V.メイラ Panther Racing D/H/F +2.3311
3 5 R.ブリスコー Dreyer & Reinbold Racing D/H/F +2.7999
4 15 B.ライス Rahal Letterman Racing P/H/F +9.2284
5 14 F.ジァホーネ A.J. Foyt Enterprises D/H/F +11.4811
6 20 E.カーペンター Vision Racing D/H/F +12.4427
7 3 H.カストロネベス Marlboro Team Penske D/H/F +13.0455
8 16 D.パトリック Rahal Letterman Racing P/H/F +13.3289
9 8 S.シャープ Delphi Fernandez Racing P/H/F +16.6462
10 2 T.シェクター Vision Racing D/H/F +48.4872
11 11 T.カナーン Andretti Green Racing D/H/F +1Lap
12 6 S.ホーニッシュJr. Marlboro Team Penske D/H/F +8.2027
13 7 B.ハータ Andretti Green Racing D/H/F +12.8591
14 27 D.フランキッティ Andretti Green Racing D/H/F +11Laps
15 10 D.ウェルドン Target Chip Ganassi Racing P/H/F +14Laps
16 26 M.アンドレッティ Andretti Green Racing D/H/F +17Laps
17 51 E.チーバーJr. Cheever Racing D/H/F +18Laps
18 55 松浦孝亮 Super Aguri Fernandez Racing D/H/F +36Laps
19 17 J.シモンズ Rahal Letterman Racing P/H/F +37Laps

順位 ドライバー チーム 総合
ポイント
1 H.カストロネベス Marlboro Team Penske 182
2 S.ディクソン Target Chip Ganassi Racing 170
3 S.ホーニッシュJr. Marlboro Team Penske 162
4 D.ウェルドン Target Chip Ganassi Racing 157
5 T.カナーン Andretti Green Racing 138
6 V.メイラ Panther Racing 124
7 D.パトリック Rahal Letterman Racing 107
7 松浦孝亮 Super Aguri Fernandez Racing 107
9 B.ハータ Andretti Green Racing 106
10 D.フランキッティ Andretti Green Racing 105
11 S.シャープ Delphi Fernandez Racing 104
12 F.ジァホーネ A.J. Foyt Enterprises 103
13 Ma.アンドレッティ Andretti Green Racing 102
14 B.ライス Rahal Letterman Racing 95
15 T.シェクター Vision Racing 87
16 E.チーバーJr. Cheever Racing 69
17 B.ラジアー Dreyer & Reinbold Racing 66
18 E.カーペンター Vision Racing 65
19 P.J.チェッソン Hemelgarn Racing 54
20 J.シモンズ Rahal Letterman Racing 36
21 Mi.アンドレッティ Andretti Green Racing 35
21 R.ブリスコー Dreyer & Reinbold Racing 35
23 M.パピス Cheever Racing 16
24 ロジャー安川 Playa del Racing 14
25 J.ラジアー Playa del Racing 13
26 A.アンサーJr. Dreyer & Reinbold Racing 12
26 R.モレノ Vision Rasing 12
26 T.エンゲ Cheever Racing 12
26 T.ベル Vision Racing 12
26 P.J.ジョーンズ Team Leader Racing 12
26 A.ダーレ Sam Schmidt Motorsports 12
32 A.ルーエンダイクJr. Luyendyk Racing 10
32 S.グレゴワール Team Leader Racing 10
32 L.フォイト A.J. Foyt Racing 10
32 T.メデイロス PDM Racing 10
32 J.バックナム Hemelgarn Racing 10
37 P.ダナ Rahal Letterman Racing 6