セバスチャン・ブルデイ(#1マクドナルド・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)を一年中追いかけているチャンプ・カー・ワールド・シリーズのドライバーとチームは、この2度のディフェンディング・チャンピオンに、タイトル争いで迫れる何らかの不運が起きることを願っているだろう。
まぁ、そのうちの1つは悪いものではなかった。
晴れ渡った日曜日のミルウォーキー・マイルで、どん底から這い上がったブルデイはついに幸運の女神を見た。今日のタイム・ワーナー・ケーブル・ロード・ランナー・225の20周目で、ブルデイはラップ・ダウンになってしまう。しかしニューマン/ハース・レーシングのクルーはひとつのミスも犯さず、ブルデイはたった9周で同一周回に復帰。101周目にはリーダーに返り咲き、その50周後には1.032マイルのコースでほとんどのマシンを周回遅れにしたのだ。
けれどもレース終盤、ブルデイはジャスティン・ウィルソン(#9CDW・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)と、ネルソン・フィリップ(#14CTE・レーシング‐HVM・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)からリードを守るため、もう一度力強い走りが必要であり、その166周目のリスタートによって今シーズン4連勝を確実なものとした。ブルデイはリスタートの2周後にレースの最速ラップを記録し、ウィルソンを3.613秒引き離してチェッカード・フラッグを受ける。これでブルデイは今シーズンの4戦4勝でキャリア20勝目。今週末獲得できる最大ポイントの34ポイントを記録し、彼のチャンピオンシップ・リードは2位のウィルソンに対して31ポイントまで広げた。
ウィルソンは今日のレースを2位で終え、今シーズン3回目となる2位フィニッシュ。ウィルソンは61周にわたってレースをリードした後での2位だった。トリッキーなミルウォーキー・マイルでそれぞれのドライバーが異なった作戦をとった中で、ブルデイ、ウィルソン、フィリップは安定した走りをみせた。フィリップはチャンプ・カー・キャリア初のポディウムを、3位という自己ベスト・フィニッシュで手に入れ、チャンピオンシップ・ランキングで4つポジションを上げた。
ブルデイは20周目に右リア・タイヤがパンクしてトップから転落し、新しいリーダーとなったA.Jオールメンディンガー(#10ルースポート・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)に、ポイントを与えてしまった。ブルデイはタイヤ交換をして1周遅れとなってしまったが、その6周後にダン・クラーク(#4CTE・レーシング‐HVM・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)がスピンを喫し、ストールしたためにイエロー・フラッグが振られる。そのためブルデイはダメージを早期に回復。ウィルソンは最初のピット・ストップでチームメイトのオールメンディンガーの前に出て、やがてトップへ浮上するのだが、その前にチャンプ・カーの新しい歴史が作られることになる。
ルーキーのキャサリン・レッグ(#20ベル・マイクロ・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)は1回目のコーションが出た時に4番手を走っていた。イエロー・フラッグが出ている間にレッグはピット・ストップをするチャンスをわざと避けたことで、チャンプ・カー・レースをリードする初めての女性ドライバーとなったのだ。グリーン・フラッグとなった後、レッグは12周にわたってウィルソンからリードを守ったが、最後はこのルースポートのドライバーにリードを許してしまう。
ブルデイのトップまでの道のりは決して楽なものではなく、何度も他のドライバーと激しいバトルをして少しでも前へ進むべく、懸命に走らなくてはいけなかった。72周目にパスされるまで4番手を走行していたフィリップとのバトルは最もタフなものであり、ブルデイはフィリップをパスしてオリオール・セルビア(#6ガルフストリーム・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)をもパスしようとしたとき、フィリップがブルデイを抜き返して、2度のディフェンディング・チャンピオンとホイール・トゥ・ホイールで4周にわったて接戦を展開。その一方、先頭ではウィルソンがブルデイとフィリップがバトルをしている隙に、リードを14秒近くまで広げて100周目にピット・インした。
先頭を走るマシンが燃料補給のためにピット・インしたことでブルデイはリードを引き継ぎ、すぐに後方との差をつけていく。ブルデイは毎周リードを築いていき、ピット・インする128ラップにはコース上にいる全てのドライバーを周回遅れとし、2番手のウィルソンの10秒前でコース・インした。
そこからブルデイは1周近くまでリードを広げることとなり、23秒のレース・ラップのコースで21秒ものリードを奪取。しかし、152周目に落下物によるイエロー・フラッグが出たことで、そのリードは消えてしまう。このコーションでウィルソンとフィリップはポイント・リーダーのリア・ウィングの真後ろに迫るのだが、ブルデイはいつもと同じように振り切って優勝。シーズン開幕から4連勝するのは1964年以来のことになった。
オールメンディンガーは4位に入り、4レースを終えてランキングのトップ5に躍進した。セルビアは5位。彼のチームメイトであるレッグは6位となり、女性チャンプ・カー・ドライバーとして98年のチャンプ・カーの歴史の中でベスト・フィニッシュを果たした。
ポール・トレイシー(#3インデック・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)と、ブルーノ・ジュンケイラ(#2ホール・イン・ザ・ウォール・キャンプス・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)の、チャンピオンシップの望みはかなり薄れてしまった。両ドライバーは2周目にクラッシュ。マリオ・ドミンゲス(#7インデック・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)がターン4でジュンケイラのインサイドに飛び込むのだが、結果的には接触してしまい、ジュンケイラは外側のウォールへ飛ばされてドミンゲスはコースの内側にスピンした。トレイシーは2台の隙間に入ってそのトラブルを避けようとしたが、彼のマシンの右後輪がドミンゲスのマシンにひっかかり、同じくレースを終えることになってしまった。
アンドリュー・レンジャー(#27タイド/マイ‐ジャック・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)は7位でレースを終えてランキング4位を維持。一方でクラークが8位となり自己ベストフィニッシュとなった。その後ろにチャールズ・ズウォルスマン(#34ゴールデン・パレス・ドット・コム・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)、続いてニッキー・パストレリ(#8ロケットスポーツ・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)とここまでがトップ10。この両ドライバーはルーキー・シーズンで初めてのトップ10フィニッシュを記録した。1週間のオフを挟み、シリーズは6月16日−18日にポートランド・インターナショナル・レースウェイで行われるチャンプ・カー・グランプリ・オブ・ポートランドを迎える。
トップ3インタビュー
セバスチャン・ブルデイ: 「今日のマシンはロケットみたいだったよ。楽勝になりそうだったけど、15周目くらいでクルーの1人が右後輪のタイヤの小さいエア漏れに気づいて、その考えは変わったね。その時点でも、マシンの調子はとても良くて、クルーのみんながすべきことを分かっていたから、いい結果が出せると確信していた。最も大事だったのはミスをしないことで、みんながそれに集中していた。すぐに渋滞に追いついて、キャッチ・アップすることができた。すべてが上手く行ったね」
ジャスティン・ウィルソン: 「すばらしいレースだったよ。オーバル・コースでポディウムに載れてとてもうれしい。数えたらこれが3回目のオーバル・レース。ただ全開で走るラスベガスはオーバルとは思ってないからね。このコースはしっかりと走らなくてはいけないし、走っていることを感じれるコースだよ」
ネルソン・フィリップ: 「すばらしい気持ちだよ。いつも言っていたんだけど、長い時間がかかった。以前、3位に近いところでレースを終えたことがあるけど、今日はようやくトップ3に入ることができた。もっとも大事なことはこのチームなんだ。このチームがなければ、僕はここにはいないだろうね。チームはトラフィックでも上手く走るすばらしいマシンを用意してくれた。僕はポディウムに載ったんだよ」
主な注目のポイント
セバスチャン・ブルデイがチャンプ・カー・キャリア20回目の優勝を果たし、最多優勝記録の単独15位に浮上した。ラップ・リードはキャリア1385周を記録、ジル・ド・フェランを抜いて最多リードラップの20位となった。
ブルデイはチャンプ・カーで4連勝した10人目のドライバーとなった。ポートランドで優勝すれば1970年のアル・アンサー・シニア以来の5連勝となる。
チャンプ・カー・ワールド・ジリーズに参戦する史上5人目の女性ドライバーとなったキャサリン・レッグは、初めてリード・ラップを取り、今日の28周目から39周目までをリードした。
ウィル・パワーは6位を走行していたがCVジョイントが破損してしまい、順位を下げて11位でレースを終えた。50ポイントの彼はロシュフランズ・ルーキー・オブ・ザ・イヤーで、49ポイントのキャサリン・レッグレッグからリードを保っている。