INDY CAR

HPD −ひとつの建物の中で研究開発からリビルトまですべてをこなす

<TWIN RING MOTEGI>

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陽射しがまぶしい10月半ばのある日、ブライアン・ハータはインディカー・シリーズに参戦している他のドライバーたちとともに、カリフォルニア州サンタ・クラリータにあるHondaパフォーマンス・ディベロップメント(HPD)を訪れた。1台のレーシング・マシンが展示されているロビーを見て一度でとりこになった。展示されていたマシンは、彼のドライブによってミシガン・インターナショナル・スピードウェイのレースを制したNo.7のXMサテライト・ラジオ(Honda/ダラーラ)だった。
「今からでもレースができそうなコンディションだ」とハータは、ひと目見て歓声を上げた。
HPDではドライバーたちが訪問する以前の2005年2月から、HPDに所属する120人が“我が家”と呼ぶようになった施設に、関係者の家族や友人を招待している。報道関係者や部品供給業者、販売店の人たちも、アメリカHondaとインディカー・シリーズの結びつきを象徴するこの2階建ての施設の内部を目にしていた。施設内では、エンジンの設計、技術開発、試作および正式パーツの製作、エンジンの整備、リビルト、素材の分析、品質管理検査、ダイナモ・テスト、機械加工、パーツの配送、評価など、研究開発に関係するすべての作業が行なわれている。
バレンシアを拠点とし、200人の従業員を抱え、HPDにシリンダー・ヘッドを供給しているB&Bマニュファクチャリングの副社長ジェフ・レイジにとって、施設の見学とそれに続いたHPD代表ロバート・クラークへの質疑応答は、学ぶべきものが多く、職業上も得るところのあるものだった。複雑な機械加工を専門とし、航空会社に加工組立ラインを供給する契約を結び、医療産業にもつな
がりがある優良企業の首脳であるレイジは「人気のあるインディ・レーシング・リーグに関わることができて光栄だ。私たちの従業員も、熱心にシリーズを見守っている」と語った。
壁が少なく、広々とした会議室を持ち、人の流れもスムーズな施設の設計は、あきらかに風水を考慮したものだ。レイジのように技術畑への関心が深い人にとっては、耐久性とエンジンのプログラム、性能の検査を行なうダイナモ・テスト室が最大の関心事だった。ここではインジェクター・フロー、気流などが詳しくテストされ、実戦に応用されている。
基本的にここにはすべてがそろっている。それはクラークが従来の施設から1マイル離れたこの場所へ巨大な機械や繊細な扱いを要する機器を移動させるにあたって、とくに配慮したことだ。昨年の秋、2009年までインディカー・シリーズのエンジンすべてを供給するという契約に合意したHPDは、インディ500に出場する33台すべてのマシンのエンジンを用意する能力を備えている。
「Honda創設者である本田宗一郎は、可能な最高のレベルでレースをすることが、会社、従業員、製品を進歩させるという信念を持っていた。そのことは、4輪と2輪のエンジンを製作する上での信念でもあった」とクラークは言っている。
「Hondaは一貫して、レースがエンジニアやデザイナーを訓練する上で最高の場だと考えてきた。レースでは、問題が発生した場合、いかにそれを解決するかということを考えなければならない大きなプレッシャーがある。しかもそれは次のシーズンが開幕するまで、あるいは予選が始まるまで、レースのスタートまでと、厳しい時間の制約を含むものだ。もし迅速に適切な対応ができなければ、遅れをとってしまう」
インディカー・シリーズに参戦して3年で、Hondaはこれをリードする立場を築いたのである。