INDY CAR

松浦孝亮、シーズン最終戦は悔しい結果に

<SUPER AGURI FERNANDEZ RACING>
2005 IRLインディカー・シリーズ第17戦「トヨタ・インディ400」
■■■10月16日決勝■■■
天候:曇り/気温:21℃/時間:12時45分〜(日本時間17日4時45分〜)
<コンディションを変えた決勝前の雨>———————————-
2005年のIRLインディカー・シリーズもいよいよ17戦目。今シーズンの最終戦を迎えた。パナソニックARTA/パノス・Hondaを駆る松浦孝亮は、土曜日に行われた予選で12番グリッドを獲得。レースでは一気に上位グループへと食い込み、4位という自己ベストフィニッシュを上回るリザルトを手にするべく全力で400マイルの長丁場へと臨んだ。ファイナル・プラクティスが行われたのは決勝日の朝。気温が16℃までしか上がらないコンディションの中で30分の走行は行われ、スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシングはレースに向けた最後の調整に臨んだ。しかし、この後にフォンタナは雨に見舞われ、路面に擦りつけられたタイヤラバーが洗い流されてしまった。スタート直後の路面コンディションを読んでのマシンセッティングの調整が必要となったのだ。
<ハンドリング不調との戦い>——————————————
午後1時前、雨の心配を残したままレースはスタートした。松浦は走り出してすぐにパナソニックARTA/パノス・Hondaのハンドリングがハイスピード・オーバルでは最も危険なオーバーステアになっていることに気づいた。急激にノーズがインへと切り込む状態でスピードを上げるのは難しい。12番グリッドからスタートした松浦だったが、序盤はジリジリとポジションを落とす苦しい戦いを余儀なくされた。それでも、松浦は少しでもオーバーステアを解消すべく、コクピットでウエイトジャッカーを操作して走り続けた。
<燃費セーブでチャンスを待つ>—————————————-
1回目のピットストップでのセッティング変更によって、松浦はハンドリングの改善に成功した。フルスロットルを保っての周回が可能となり、なんとか前を行くマシンに喰らいついていけるペースを確保。ここでスーパーアグリ・フェルナンデス・レーシングのピットは、積極的に燃料をセーブする作戦を採り、レース展開を読みながらの戦い方へとシフトした。1回目のフルコースコーションが13周にも及んだためさらにもう一度の給油を決断。44周目にリスタートが切られた後、51周目に2度目のフルコースコーションが出されたときも給油のためにピットストップを行った。
<ピットタイミングのズレを利用して上位へ進出>————————
51周目に出されたフルコースコーションは、ピットストップを行うドライバーと、コースに残るドライバーの2グループに分かれる状況を作り出した。松浦はライバル勢の誰よりも燃費をセーブするドライビングをここから展開し、2位までポジションアップを果たした。ここでフルコースコーションが出れば作戦成功という場面が2回あったが、そのタイミングでイエローフラッグが出ることはなかった。
<ピットロードでのアクシデント>————————————–
終盤に入った169周目、松浦に「ピットインせよ」との指示が入った。この時、松浦は再び2番手を走行していた。松浦はレベルの高い燃費セーブを続けていため、最後のピットストップでの燃料補給は少なくて済むはずだった。当然ピットに停止している時間は短くすることができる。
 しかし、このピットへと向かうところで松浦はスピンを喫し、ピットロードの壁にヒットしてしまった。ピットへのインラップ、そしてコースへと復帰するアウトラップは、インディカー・レースでは極めて重要だ。ドライバーのテクニックとがんばりによってタイムを大幅に短縮できるからだ。松浦はここでタイムを縮めることを目指したが、わずかながら限界を超えてしまったのだ。
<この悔しさを明日に向けて>——————————————
最終戦がアクシデントによるリタイアとなったのは、松浦だけでなくチームにとっても非常に残念であった。しかし、それは苦しい戦いの中でも、ひとつでも上のポジションを狙った結果だった。今シーズンは納得できるレースをあまり戦えなかったが、シーズンオフの間にもデータの解析、7ポストリグなどを使ったマシンセッティングのレベルアップを続け、2006年シーズンを戦うコンペティティブな体制を整えたい。
■■■コメント■■■
<松浦孝亮>
「自分自身も、チームも進化できましたが、シャシーのパフォーマンスに苦しんだシーズンでした」
<まさかスピンするとは思いませんでした>
「レース終盤に僕はバディ・ライスとポジション争いをしていました。彼に抜かれたタイミングでピットインすることになり、がんばって良いパック(集団)のあるところに復帰できれば抜き返せると考えていました。ピットへ入りブレーキングをしたところでマシンは突然スピンしました。インディカーはキャンバーもホイールのスタッガーもすべてが左に曲がるようになっていますから、ピットロードのような平らなところでニュートラルな状態になれば左に曲がります。思い切りブレーキを踏んだ瞬間にクルマが左に行ってしまうのは当然なんです。そのことは十分にわかっていましたので、まさかスピンをするとは思いませんでした。今日はクルマのハンドリングがスタート後はオーバーステアで、ピットストップでのセッティング変更でアンダーステアにしたのですが、なかなか良いハンドリングになってくれなくて、辛いレースになっていました」
<今シーズンはシャシーのパフォーマンスに苦しみました>
「シャシーの不利が今シーズンのすべてでした。去年のようなシャシーのパフォーマンスがあれば、確実に良いシーズンを送れていたと思います。ドライバーとしては、冷静に戦えるようになったし、すごく進歩したシーズンだったと考えています。レース中にプッシュすべきところ、抑えるべきところなどもわかるようになりました。でも、もう少しハンドリングの良いマシンが欲しいですね。大きなリスクを背負ったレースを毎回毎回戦わなくてはならない状態がずっと続いていましたから。来年もチャンスをもらえるのであれば、速いマシンのパッケージをどうやって作り上げるのか、亜久里さん、そしてチームと相談して決めていきたい。いいクルマで勝負をしたいです」
<チームのレベルアップに感謝しています>
「スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシングはこの1年間、本当によくやってくれました。ピットも速くなったし、ミスもなかった。メカニカルトラブルもほとんどなかったのですから、メカニックたちは去年に比べて大きく進歩を遂げてくれ、とても感謝しています。僕だけじゃなく、彼らにとっても辛い1年だったはずです。パノスシャシーのパフォーマンス不足があって、エンジニアたちも大変だったと思います。もう少しベースの良いクルマであれば、自分達としても味つけのしようがあったと思いますが、なかなか良いものに仕上げられなかった。料理と一緒ですよね。食材が悪ければ、どんなに腕の良いシェフでも美味しいものは作れない、良い食材だと適当に味をつけただけでも美味しくできる。そのあたりはすごく似ていると思います」
<サイモン・ホジソン:チーム・マネージャー>
「コウスケはファイトする姿勢を1年間を通じて崩さなかった」
<今回はマシンから十分なスピードを引き出せなかった>
「ピットでのスピンという残念な結果となってしまった。バンクのあるところから入ってくるあたりでマシンはスピンを始めたようだ。今回のレースではマシンから十分なスピードを引き出せなかった。スタート直後はハンドリングがオーバーステアでドラフティングについて行くことができず、フルスロットルで走れるはずのコースで、それができなかった。ピットストップでタイヤの空気圧やウイングを調整し、コウスケはウエイトジャッカーなどをいじり続け、バランスを良くしていくことに努めた。中盤を迎えるまでになんとかフルスロットルで走れるマシンにすることはできたが、コンペティティブなラップタイムを刻むまでには至らなかった。それでも、燃費をセーブする走りを続け、フルコースコーションがいいタイミングで出るのを待ち続けた。残念ながらベストのタイミングでコーションが出されることは最後までなかったが、トップ10入りを果たせるところまで到達できていた。そこでアクシデントは起こってしまった」
<来年はシーズンを通じて目指すパフォーマンスを発揮したい>
「今シーズンはメカニックたちがとても頑張ってくれた。彼らが素晴らしい仕事をしたことは、メカニカルトラブルがセント・ピーターズバーグでのギヤボックス、たった1回だったところに表れている。マシン準備の面では高いクオリティを実現できたと言えるだろう。しかし、残念なことにマシンの持つ性能をフルに引き出せなかった。同じパッケージングのチームに対して劣っていた点があったことは認めざるを得ない。昨年のコウスケのパフォーマンスから期待しただけの成績を今年は手にできなかった。コウスケは戦う姿勢をシーズンを通して崩さなかった。彼の持つポテンシャルをフルに発揮できるマシンを用意できなかったが、そうした中でもコウスケは多くを学び、ドライバーとしての成長を続けている。来シーズンに向け、我々はさらなる努力を続けるつもりだ。来年は目指すパフォーマンスをシーズンを通して見せ続けたい」