Hiroyuki Saito

オーストラリア旅情 −ホテルに現れた珍獣?−

サーファーズ・パラダイスでは、サーキット周辺のホテルに泊まるのがこれまでの定番でした。なぜかというとレンタカーを借りてもここの仮設コースにはメディアや関係者用のパーキングを設置するスペースがないため車を停められないのです。それならば値段は高くなるけどサーキット周辺にあるホテルに泊まり歩いていくか、またはちょっと離れたホテルでもタクシーで移動した方がレンタカー代をホテル代に回すことことができるので経費的にはあまり変わらないのです。

しかし、今年は合併の影響でオーストラリアのレースが本当に開催されるかどうかという発表がなかなか行われず、ホテルの予約が遅れてしまったのですね。サーファーズ・パラダイスのレースといえばオーストラリアでもとても人気のあるスポーツイベントですから、サーキット周辺のホテルを予約するのも大変なわけです。

そこで今回はサーキット周辺のホテルに泊まるより、ブリスベンの空港近くに宿を押さえてレンタカーで移動した方がいいのではという話になったのです。車はサーキットの近くにあるホテルの駐車場に有料だけど停めればいいだろうと。

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その結果、滞在することになったのがこの“Best Western Air Port Hacienda Motel”。場所的にはブリスベン空港からは10分ほど、サーキットまでは約50分でしょうか。チェックインするとすでに先輩たちが部屋にいることを告げられ、荷物を持って階段を上った2階の部屋に行きました。

部屋はアメリカのホテルで言えばシングルルームくらいの広さですが、そこに3つのベッドが設置されていました。ん? どこかで見覚えのある部屋。そう、今年6月に泊まったフランスの空港付近にあるホテルの部屋に造りが似ているんですね。

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オーストラリアはイギリス領だったこともあり、その文化が定着したためホテルに関してはアメリカのようにだだっ広い部屋ではなく、こぢんまりとした造りなんですね。そういえばこれまでサーファーズ・パラダイス周辺のホテルに泊まったときも広い部屋というイメージは確かにありませんでしたからね。

まずは自分のベッドを確保し、それからランチへと出かけました。歩いていった近場のカフェ的なレストランでとりあえず頼んだのはもちろん地元のビール。“CASCADE”というなんか虎のような動物がラベルに描かれたこのビールは、なにやらまだタスマニアン・タイガーが生きていた頃の1824年から創業していて、オーストラリアでも一番歴史の古いビール会社だということです。

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タスマニアン・デビルは知っていますが、タスマニアン・タイガー? って調べたところ有袋類の肉食動物で人間の手により1936年には絶滅したそうです。そのことを知ったのはこれを書いているときなので、レストランではぐびぐびっと飲み干しましたが、また飲む機会があったらちょっと苦味が増すような気がします。

まぁ、腹ごしらえも済みホテルに戻って仕事をしているといつの間にか夜になっていました。夕食をホテルのレストランで食べ部屋に戻ってバルコニーでタバコを吸っていると、3メートルほど先にあるコンクリートの塀の頂上で動物がごそごそと動いているのです。

猫かと思ったのですが動きがなんか妙です。猫らしからぬスローな移動。コンクリートの塀の内側には枝が広がった高さ5メートルほどの木が植えてあり、小さな葉をたくさんつけた枝が邪魔で正体がよくわからなかったのです。まぁ、その日はあまり気にせずに寝たのですが、翌日、仕事を終えて戻ってきて再びバルコニーでタバコを吸っていると今度は木の枝ががさがさと動いていました。

これも昨日の動物の仕業だなと思ったのですが、あたりは真っ暗なので姿が分からないのです。先輩方と何かいるよなって噂になっていただけに、なんとしてもその姿を知りたいとコンパクトカメラで撮影を試みました。フラッシュ撮影した画像をみてやっとその動物の全貌が明らかになったのです。カメラが捕らえたその動物は、なんかリスを一回り大きくしたような感じで、これまでに見たことのない生き物でした。

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初めて見るその動物の正体を調べるべく、インターネットで“オーストラリア 動物”で検索するとオーストラリア・アニマルガイドというページが現れ、それをクリックすると似たような生き物が載っていました。

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“ポッサム”です。でも、アメリカで見たことのあるものとはちょっと違います。なにやら木登りの得意な小型の有袋類で、大型でアライグマのようなものからネズミのような顔つきのものまでいろいろいるそうです。俺が見ているのはどっちだ? と思いつつもよく読むとオーストラリア全土に生息し、野生動物の中では比較的簡単に見つけることができるそうです。

夜行性で夜になると公園や住宅街などにも現れると……確かに現れました。そして時々、猫とケンカしてるんですって。また、尾を第2の手のように使うことができるようで、日本名では「オポッサム」って呼ぶこともあるそうですよ。オーストラリアでは人気者と書かれていますが、アメリカではリスが病原体を持っているので嫌われているのと同じように、隣国のニュージランドでは“エネミー”(敵)と呼ばれて嫌われているそうです。ところかわればなんとやらですな。

オーストラリアに何度も着ていましたが、これまで泊まっていたホテルが観光地のサーファーズ・パラダイス周辺だったので見かける機会がなかったのでしょうね。初めて見た動物の正体も分かり、しかもその後、コアラようにの子供が母親の背中にしがみついているシーンも見ることができました。オーストラリアに来たんだなぁって実感することができた夜でした。

次回はアメリカや日本とはちょっと違うオーストラリアのマクドナルドについてお伝えしますよ。