CHAMP CAR

セバスチャン・ボウデイがニューマン/ハースのチームメイト、オリオール・セルビアを抑えて“チャンプ・カー・ハリケーン・リリーフ400”を制す

【チャンプ・カー・ワールド・シリーズ:2005年9月24日 ラスベガス】
伝統的なヨーロッパのロード・コースで育ったセバスチャン・ボウデイ(#1 マクドナルド フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)は、北米で生まれたスーパー・スピードウェイのオーバル・コースにも十分に慣れ親しんだようだ。これ以前のスーパー・スピードウェイのレースで2連勝していたボウデイは、土曜の夜に開催された“チャンプ・カー・ハリケーン・リリーフ400”に挑み、その記録を3の3へと更新。一周1.5マイルのハイバンク・オーバル、ラスベガス・モータースピードウェイのレースを僅差で勝利した。ボウデイは166ラップで競われた決勝で、ニューマン/ハース・レーシングのチームメイト、オリオール・セルビア(#2 パシフィケア フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)をフィニッシュ・ライン上で0.312秒の差をつけて、今シーズン5勝目を記録。ジミー・バッサー(#12 ガルフストリーム フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)は、今シーズンの自己ベスト・フィニッシュの3位に入賞し、チャンプカー・キャリアで32度目の表彰台に上った
ボウデイは32ラップをリードして、今シーズン2度目となるポール・トゥ・ウィンを飾った。しかし“ブリヂストン・プリゼンツ・チャンプ・カー・ワールド・シリーズ・パワード・バイ・フォード”のディフェンディング・チャンピオンにとって、今日のレースは決して楽な展開ではなく、幾多の危機を乗り越えてのものだった。
このフランス人ドライバーはポール・ポジションからスタートし、最初の7ラップはトップを快走。後方から2003年シリーズ・チャンピオンのポール・トレイシー(#3 インデック フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)が破竹の勢いで追い上げる。予選14位からスタートしたトレイシーは、オープニング・ラップから2周目にかけて、いっきに10ポジション・アップ。7周目には、前を行くボウデイもかわしてトップに立った。この間トレイシーはプッシュ・トゥ・パス・ボタンを1度しか使用していない。
トップに立ったトレイシーは、その後33ラップに渡ってリードを保つが、2位ボウデイとのタイム差は0.5秒以上開くことはなく、その背後にはセルビアとビヨン・ビルトハイム(#4 HVMレーシング フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)も迫っていた。40ラップ目までトップ・グループの順位は変わらず、最初のピット・ストップで燃料補給を行うためにトレイシーはピットイン。ボウデイはその1周後、セルビアも2周後にピット・インした。このストップの直前、ボウデイのマシンのフロント・ショックアブソーバー・カバーが外れ、フロント・ストレート上を走行中に脱落してしまう。ニューマン/ハースのクルーは時間のロスをできる限り減らすべく、カバーを取り付けずにマシンをピットアウトさせたが、ポイント・リーダーはトップに返り咲くことができなかった。
最初のピット・ストップが終了した時点で再びトレイシーがトップに立つが、その後ボウデイに2度ほど先行を許す。レース全体では3人のドライバーで11回にも及ぶトップ交代がみられた。トレイシーとボウデイはこのあとの30ラップで、時速200マイル以上のテール・ツー・ノーズのバトルを展開する。
2度目のピット・ストップも最初と同様の展開で、トレイシーが最初に入ってリードを継続。トラブルに見舞われて10位まで順位を落としたビルトハイムに変わり、4位に上がってきたバッサーを抑えたセルビアも、かろうじて3位のポジションを堅持する。
トラブル・フリーの状態が続いていたレースに変化が起こったのは124周目のターン4で、ピットレーン入り口に向かおうとしていたトレイシーのマシン後方に、ボウデイが追突。ここまで最多リードラップとなる107周をリードしてきたトレイシーのマシンが、スピンしながら外壁へ激突し、リタイアを余儀なくされてしまった。一方、マシンに大ききなダメージを負わずにすんだボウデイは、そのままレースを続行する。
ここで提示された長いフルコース・コーションのため、コース上に残った全車は残りの27ラップを燃料補給なしで走りきることが可能となった。再スタートではボウデイがセルビアをリード、そのすぐ後ろにはバッサーがニューマン/ハースの2台から1秒以内で追う。マリオ・ドミンゲス(#7 インデック フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)は4位、トラブルで後退していたビルトハイムも5位までポジション・アップした。
ボウデイ、セルビア、バッサーはニューマン/ハースの2台がラスト10周あたりから3位との差を3秒以上に引き離すまで、1秒以内で走行を続ける。残り5周の時点でボウデイはセルビアに対して0.5秒差でリードしながらも、両者はともに50秒のプッシュ・トゥ・パスが残っていた。
両者とも、ラスト3周となったところからエキストラ・パワーを使用するが、そこまでの163ラップまで通常のパワーのまま来た分、最後は親指をプッシュし続けてスパート。ラスト半周でボウデイはセルビアの追撃を振り切るべくスリップストリームを許さず、勝利を手にした。セルビアはバッサーの前となる2位でフィニッシュ、その後ろではドミンゲスが4位、ルドルフォ・ラビン(#55 コロナ フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)が、最終ラップでビルトハイムをかわして今シーズン2度目の5位フィニッシュを果たした。
ビルトハイムは自己ベストの6位フィニッシュ、アレックス・タグリアーニ(#15 オージー・ヴィンヤーズ フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)と、ルーキー・ポイントリーダーのティモ・グロック(#8 DHLグローバル・メール フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)がそれぞれ7位と8位でフィニッシュした。
レース終了後、フォーサイス・チャンピオンシップ・レーシングは、ポール・トレイシーの123周目のアクシデントに関してプロテスト(異議申し立て)を申請したが、チャンプ・カー審査委員会は協議規定6.27と6.28については、異議申し立ての対象にならないとの審判を下した。
トップ3のコメント:
セバスチャン・ボウデイ #1 マクドナルド フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン:
「最初から厳しいレースになると心配はしていたが、何とかトレイシーについていくことができた。(トレイシーとのコンタクトについて)突然、まだレーシング・ライン上にいるにも関わらず、彼はブレーキを強く踏んだんだ。本来ピット・インする際は、イン側のライン内にタイヤを入れなくてはならない。あれは本当に驚かされた。コンタクトするまでのあいだはあっという間で、ブレーキをかけることもできず、彼のギアボックスに突っ込んだ。自分があのままレースを続行できたのは、奇跡としか言いようがないね。マクドナルド・カーにとってはハプニングの連続のレースだった。でも最終的にチームにとってとても良い結果となった。これも彼らの努力の賜物だ」
オリオール・セルビア #2 パシフィケア フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン:
「楽しいレースだった。レース序盤は二人よりも燃料をセーブして、終盤にフルコース・コーションが出ればみんなよりも2周ぐらい先行できるようにと思っていた。いいレースができてチームに対してもハッピーだ。またしてもワン・ツーを達成できたからね。チャンピオンシップに関しては、正確には分からないが、最後まで気を抜けない、もう少しがんばらなくてはならないね。いずれにしてもいいレース・ウィークだった。パシフィケア・チームに感謝したい」
ジミー・バッサー #12 ガルフストリーム/PKVレーシング フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン:
「レースのなかった2週間のあいだ、皆ほんとうによく働いてマシンを仕上げた。できる限り抵抗を少なくするために、細かい部分まで見直した。正直言ってこのレースはほとんどが彼らの努力の結晶だ。ガルフストリーム、ベル・マイクロ、それにPKVチーム全体にとって良い結果を残せた。我々のファクトリーに大きなトロフィー棚を作った。これからそこへ少しずつトロフィーを入れて棚いっぱいにするためにね」

注目のポイント:
・セバスチャン・ボウデイの勝利はキャリア15勝目で、歴代チャンプ・カー勝者リストの16位タイにランクされる。加えて今回53ラップをリード、通算では1