CHAMP CAR

モルソン・チャンプ・カー・グランプリ・オブ・モントリオールでオリオール・セルビアが終盤にアタックをかけてトップに立ち、チャンプ・カー・ワールド・シリーズ初優勝

【Champ Car World Series: 2005年8月29日 モントリオール】
オリオール・セルビア(#2 パシフィケア・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)は今シーズン確定したシートを放棄し、5月のインディアナポリス500で怪我を負ったブルーノ・ジュンケイラの代役として、ニューマン/ハース・レーシングのシートに座るという、レーシング・ドライバーにとってもっとも大きな賭けに出た。その結果、モントリオールのジル・ビルヌーヴ・サーキット(偶然にもこのサーキットには大きなカジノが存在する)で、日曜日に若いスペイン人はその賭けが見事に成功することを身をもって体験。セルビアはレース終盤に猛チャージをかけ、ブリヂストン・プレゼンツ・ザ・チャンプ・カー・ワールド・シリーズ・パワード・バイ・フォードにおけるキャリア初優勝を手にした。
セルビアは79ラップのレースの残り13ラップのところで、それまでレースをリードしてきたセバスチャン・ボウデイ(#1マクドナルド・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)がピット・ストップの際に左後輪の脱着でトラブルが発生し、トップから4位まで後退したところから、レースの流れが自分の方へと向かいつつあることを感じ取っていた。セルビアはこのチャンスを生かし、ジャスティン・ウイルソン(#9 CDWフォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)をパスして2位にあがると、ルーキーのティモ・グロック(#8 DHLグローバル・メール フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)に迫り、これを一周2.709マイルのコース上、残り2周のところでかわしてキャリア初優勝を挙げた。
グロックはこの日最初のフルコース・コーションが出る前、一足先にピット・ストップを済ませ、大きなチャンスを掴んでいた。彼を除くすべてのドライバーがピットに入ったところで、グロックは一躍トップへと躍り出る。グロックが自らの初勝利を目指してリードを守るべく、セルビアとウイルソンを抑えてレースは終盤へと向かった。76周目、パスを試みたセルビアのアタックをかわすために、グロックはシケインをショート・カット。次のセルビアのアタックにも同様の動きを見せたグロックに対し、チャンプ・カー競技委員はニューマン/ハースのドライバーに先行させるよう指示を出した。
日曜日のレースは最初の58ラップまではアクシデントもなく、ボウデイがスタートからトップをキープし、フルコース・コーションがない展開となっていた。ウイルソンが最初のピット・ストップの前にボウデイに対して仕掛けたものの、それ以降このシリーズ・ポイント・リーダーは、彼を寄せ付けることはなく残り20周の時点で2台の差を6秒へとひらき、レースを完全にコントロールしているかに見えた。
ところが58ラップ目、モルソン・チャンプ・カー・グランプリ・オブ・モントリオールはその本性を現す。リカルド・スペラフィコ(#11 サニーズ・リアル・ピットBBQフォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)のマシンに、ピット前のストレートでリアウイング・トラブルが発生。彼はピットレーンの入り口付近の壁に突っ込んでしまう。吹き飛んだウイングは、ポール・トレイシー(#3 インデック・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)の頭上をかすめて、そのまま5位を走行中だったA.J.オールメンディンガー(ウエスタン・ユニオン・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)のライン上に落下。これを避け切れなかったオールメンディンガーはこのウイングの破片を引っ掛け、フロント・タイヤを切ってピットへと向かう。それとほぼ同時にフルコース・コーションが提示された。
パンクしたタイヤを交換する必要があったオールメンディンガーと、早めのピット・ストップを行ったグロック以外のドライバーは、ピットがオープンしたと同時にピット・レーンに向かうと、そこにはタイトルに最も近い男にアクシデントが待ち受けていた。ボウデイにタイヤ・マウントのトラブルが発生し、順位を二つ落とすかたわらで、トレイシーにはさらに大きなアクシデントが襲い掛かっていた。4位でピット・インしたカナダ出身のスターは、ピットでの停車位置をミスした上、ピット・クルーの一人に当たり、ピット・ウォールに近すぎる位置で停止してしまったのだ。正しい位置に停めるまでに余計な時間がかかってしまい、結局9つもポジションも下げる結果となった。
グロックとオールメンディンガーのリードで再スタートを待っていたが、オールメンディンガーはフルコース・コーション提示直後、ピット・レーンが閉鎖されているときにパンクしたタイヤ交換するべくピット・インしてしまったことで、ストップ・アンド・ゴー・ペナルティを科せられてしまう。64周目、グリーン・フラッグでレースが再開した時点でウイルソンが2位、セルビアが3位、その後ろには4位のボウデイがピタリとつける。セルビアがウイルソンをパスして2位に上がると、すぐにトップのグロックの背後に迫った。66周目にロドルフォ・ラビン(#55 HVM フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)がショックアブソーバー・カバーをレーシング・ライン上に落としてしまったことで、再びイエロー・フラッグが提示。この再スタートではグロックが見事な走りを続け、ラスト1周のところまでセルビアのアタックを抑える。この若いドイツ人はペナルティのルールに従ってセルビアに先行を許したあと、ウイルソンを抑えて自己キャリア・ベストの2位でフィニッシュ、初表彰台を獲得した。
ウイルソンはルースポーツに3位表彰台をもたらし、ボウデイは4位でレースを終了。ウイルソンはポートランドの初優勝以来となる今季2度目の表彰台、今年7度目のトップ5フィニッシュとなった。ボウデイはファステスト・ラップをマークし、59周の最多リード・ラップを記録、チャンピオンシップ争いでも残り4戦で2位との差を61ポイントに広げた。2004年のチャンピオンは、ここまでの2005年のスケジュールで、1周を除き予定されたすべてのラップを周回している。
セルビアは今回の勝利により、8位フィニッシュのトレイシーを飛び越えてポイント・ランキング2位に上昇した。その後ろではアレックス・タグリアーニ(#15 オージー・ヴィンヤーヅ フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)が地元ファンの前で5位に入賞。PKVレーシングの二人、クリスチアーノ・ダ・マッタ(#21 ベル・マイクロ フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)とジミー・バッサー(#12 ガルフストリーム フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)がそれぞれ6位と7位に入った。
トレイシーは8位でフィニッシュ。ペナルティで後退したところから這い上がったオールメンディンガーは9位に入ってランキング5位を守ったものの、今回10位でフィニッシュしたマリオ・ドミンゲス(#7 インデック フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)が1点差で迫っている。
セルビアは今シーズンのチャンプ・カー・ワールド・シリーズで6番目のウイナーとなり、ウイルソンに続く今年二人目のチャンプ・カー初優勝を遂げたドライバーとなった。グロックは今シーズンの表彰台に上がった11人目のドライバーで、ロシュフランズ・ルーキー・オブ・ザ・イヤーにおいてリードを拡大。2番手のロニーー・ブレマー(#19アメリカン・メディカル・レスポンス・フォード‐コスワース/ローラ/ブリヂストン)に27ポイントの差をつけている。
デベロップメントや政府担当業務、企画を担当するエグゼクティブ・バイス・プレジデントのジョー・チュルネリックは「今年のモントリオールの様々なエリアで成し遂げられた進歩に、とても満足している。我々のプロモーターでパートナーのノーマン・ルゴーと彼のチームは優れた仕事をし、モントリオールのマーケットで我々のシリーズを再定義するために、新しい戦略と価値ある提案をしてくれた。イベントが成長するためにはまだたくさんの余地があり、チャンプ・カーは我々のプロモーターとともに協力し合い、ただしい方向へ進んでいると信じている。究極的に、今日訪れたファンは支払ったものに対して、素晴らしい価値を受け取ったと感じているだろう。素晴らしいショーを見て、楽しさを体験するのがなによりだ」と語った。

トップ3のコメント
オリオール・セルビア:「それは感動的だったよ。実に感動的だった。何度も次は勝てるって思っていたけど、もう色んないいわけを言わなくてもいいんだ。ほんとうに長かった。やっと今日勝てたよ。そもそもブルーノ(ジュンケイラ)のアクシデントからはじまったんだが、それを我々は求めていたわけじゃなかった。けれども、知ってのとおり、僕をドライバーに決めてくれて、とてもハッピーだった。ブルーノも僕が選ばれてハッピーだったというのを知っている。最初の日からチームは素晴らしく、すべてのクルー、すべてのオーナー、そしてパシフィケア(スポンサー)はとても素晴らしいサポートをしてくれた。彼らが正しいチョイスをして、僕を信じてくれたことに対し、こんなに最高の結果を見せることができたんだからね。何よりも先に、この勝利を彼らにもたらすことができて、ほんとうに、ほんとうにうれいしよ」
ティモ・グロック:「11位スタートだったから、ほんとうに厳しいレースだった。序盤にジミー・バッサーとネルソン・フィリップをパスするのに、プッシュ・トゥ・パスをたくさん使ってしまったんだ。最後、2回だけしか残ってなかったよ。レースをリードしている時に、オリオールが後ろに来ているのが見えた。彼が何度も2位や3位になっていたのを知っていたし、勝ちたいというのも解っていたから、パスを仕掛けてくるのは解っていた。それは明らかだったね。2位はがっかりだけど、その反面、今週末は我々にとってとても素晴らしかった。運で表彰台に上がったわけではないからね」
ジャスティン・ウイルソン:「CDWとルースポーツ・チームにとって素晴らしいリザルトだ。また表彰台に戻ることができて、とても興奮している。知ってのとおり、今週末はハード・ワークをこなしたおかげで、競争力がとても高かったのは事実。すべてのセッションでしかるべき位置にいたからね。問題が起きた時でさえ、すぐに取り戻すことができた。クルーたちには感謝しているよ。この週末ずっとハードに働いてきたからね。ピット・ストップはファンタスティックで、最後のストップで2位に上がったのは良かった。最終的に、できることのすべてをやったと思うし、我々のレース・カーは素晴らしかったよ。我々に能力があったからこそ、こういうベスト・リザルトを得られたんだ」
注目すべきポイント
・ オリオール・セルビアは1996年のロード・アメリカで優勝したマイケル・アンドレッティ以来、最終周のみレースをリードして優勝したドライバーとなる。アンドレッティは最終周にアル・アンサーJr.をパスした。セルビアは1956年のエディ・サチス以来、7番目のドライバーとなる
・ 今日のレースで59周をリードしたセバスチャン・ボウデイは、チャンプ・カーで通算1000周以上レースをリードした22番目のドライバーとなった。合計1027周の記録は、21位のダニー・オンガイスと1周差しかない
・ オリオール・セルビアは95戦目のチャンプ・カーで初優勝を獲得した。現在未勝利のドライバーでもっとも参戦数の多いのは参戦3年目のロドルフォ・ラビンで、35戦走っている。シリーズの中で最長記録はミシェル・ジョルダインJr.で、2003年のミルウォーキーで125戦目にして初優勝を獲得している