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チャンプ・カー・ワールド・シリーズ 第7戦 ラグナ・セカ【決勝】レポート

<US-RACING>
■カーパンティエがポール・トゥ・ウインで今季初優勝

快晴のラグナ・セカで行われた第7戦決勝、スタート直前にカーパンティエとトレイシーがチームメイト同士で接触。カーパンティエのマシンが一瞬中に浮いて、コーション・スタートとなる。幸いマシンに異常はなく、最後までトップを維持することに成功したカーパンティエがポールトゥウイン。ラグナ・セカにおける過去最速(1時間48分11秒023)のレースとなった。2位はジュンケイラ、3位にトレイシーが入っている。

■一度もイエローが出なかったレースで、白熱したバトルが展開

決勝レースの日曜日、快晴に恵まれたラグナ・セカは気温19度で、路面温度は40度と絶好のコンディション。ここで4度優勝経験を持つレイホールがグランドマーシャルを務める今回、レイホールの掛け声でいっせいにエンジンに火が入った。

12時45分、19台のマシンを従えたペースカーのライトが消えてピットレーンへ。先頭のカーパンティエが最終コーナーを回っていよいよスタートかというときに、横のジュンケイラを牽制しようとしたカーパンティエがほんの少しスピードを緩めた瞬間、後ろにいたトレイシーがカーパンティエに追突。カーパンティエのマシンは、一瞬中に浮くほどの衝撃だったが、幸い走行には支障がないようだ。

ここでCARTオフィシャルはイエローフラッグを提示。翌2周目、隊列が整ったところでグリーン・フラッグが振り下ろされ、改めてレースがスタートした。今度はクリーン・スタートを決めることが出来たカーパンティエがトップで180度コーナーのターン2を制し、オープニングラップからそのまま後続を引き離しにかかる。以下トレイシー、ジュンケイラ、フェルナンデス、ボウデイといった順だ。

序盤、一週ごとに約0.5秒の差を広げてトップを行くカーパンティエだったが、チームメイトのトレイシーも徐々にペースを上げ、カーパンティエとの差を詰める。スタートから10周目、ラビンのマシンがギアボックス・トラブルでリタイアし、12周目にはマニングもメカニカル・トラブルで緊急ピットインした際、エンジン部分から火災が発生。ピットクルーが消火にあたり、火は納まるがマニングはそのままリタイアとなった。

レースの約4分の1にあたる20周目、トップのカーパンティエを追うトレイシーはその差をさらに詰め、ほぼテール・トゥ・ノーズの状態となる。ここでドミンゲスが最初に予定のピットインを行い、次のラップにはタグリアーニが入った。

24周目、トップのカーパンティエを先頭に各チームは最初のピット・ストップを開始。予選を4番手でスタートしながらも6位まで順位を落としてしまったボウデイが、ニューマン/ハースのピットクルーの迅速な作業により4位までポジションを上げる。さらにセルビア(7位)、ジョルダイン(9位)モンテイロ(11位)らもここでポジション・アップに成功した。

カーパンティエはトップのままコースに復帰し、2番手トレイシーとの差はほとんどない状態。2台はほぼサイド・バイ・サイドでターン2を抜けるなど、白熱したシーンにコースサイドの観客は大いに沸く。

その後もトレイシーはカーパンティエの隙を突くべく、ピタリと背後についてチャンスを狙う。続く3位のジュンケイラもトップ2台との差を詰めにかかり、レースの折り返し点となる44周目の時点で、トップのカーパンティエから3位のジュンケイラまでの差は約1.6秒以下しかない。

この3台の差は2回目のピットイン(48周目)前の時点で、0.9秒以下まで縮まってきた。ひとつのミスも許されない状況下でのピットストップが展開し、2位トレイシーのマシンがピットアウトの際、前方のピットボックスに用意されていたフェルナンデスの交換用タイヤに接触。この状況についてレース後トレイシーは、「あれは僕が出にくくするために、わざとやったんだろうね。ピットボックスのギリギリのところにタイヤを置くなんて、普通はしないよ」と不満を露にする。

「通常、タイヤに当たればペナルティを食らうところだろうが、CARTオフィシャルが映像を見ても僕に非が無いことが明らかだったから、フェアな判断でお咎めなしだった」。とトレイシー。一方フェルナンデスの方は、逆にこのストップで順位を6位から7位までダウン。ピットアウト直後のラップではジョルダインにコークスクリューでパスを許し、8位まで後退してしまう。

このピットアウト直後、2位のトレイシーが前を行くカーパンティエをパスしようとターン2でチャージするが、無理な体勢でコーナーに侵入したためにフロント・タイヤをロック。前輪の左右ともにフラット・スポットが出来てしまう。このためトレイシーのマシンはひどいバイブレーションに悩まされ、カーパンティエをパスするどころか3位のジュンケイラを抑えるのが精一杯。一周に約1秒の割合でトップとの差が開いて行く中、トレイシーは56周目にターン6でオーバーランまで喫し、これをすかさずジュンケイラがパスして2位に上がる。

やっとのところでトレイシーをパスしたジュンケイラだったが、すでにトップのカーパンティエは5秒先。その後トレイシーはさらに遅れてジュンケイラとの差は5秒以上に開いたものの、3位のポジションはかろうじて守っている状態だ。背後には4位のボウデイが迫っている中、3回目のピットストップまで我慢の走りに徹し、なんとか持ちこたえたいトレイシー。

そんな中、62周目ごろからトレイシーとの差が詰まったボウデイのスピードが鈍り始め、フロント・ストレートで周回遅れにまでパスされる。ボウデイはその2周後にハバーフェルドとジョルダインにもパスされた直後、3回目のピットイン。クルーがマシンをチェックしたところ、ターボチャージャーのブースト圧に問題があるのが発覚したが、問題が解決されないまま、チームはやむなくボウデイをコースへと送り出す。

タイヤにトラブルを抱える3位トレイシーと、コークスクリューの進入でセルビアをパスして6位に上がったフェルナンデスが、規定より一周早い71周目に3回目のピットイン。72周目には先頭のカーパンティエに、2位ジュンケイラ以下ほとんどのチームが最後のピットストップを行う。

総合的にピット作業が速かったのはプレイヤーズ・フォーサイス・レーシングで、ライバル・チームの3回のピットストップ平均時間が1回あたり33秒から34秒だったのに対し、カーパンティエとトレイシーは共に平均32秒台と光っている。また、コース上でセルビアをパスしていたフェルナンデスだが、このストップで1秒以上速くピットアウトしたセルビアに先行を許してしまい、再び7位に後退した。

まだタイヤが完全に暖まりきっていないピットアウト直後のラップで、ジョルダインは前を行くハバーフェルドをコークスクリュー手前で捕えて一気にパス。4位へとポジションを上げた。上位3台の順位に変動はないが、2位ジュンケイラはカーパンティエに0.8秒まで迫り、トップへ上がるチャンスを伺っている。

ターボのブースト圧のトラブルに見舞われたボウデイのマシンは、最後のピットストップのあともスピードは上がらず。結局残り10周のところで再びピットインし、そのままリタイア。レースの3分の2を上位で走行しながらも、今シーズン3度目のDNFとなってしまったボウデイは、「トレイシーが入った次のラップにピットインして、3位表彰台には上がれると思った」と肩を落とす。

先頭を行くカーパンティエは81周目にレース中の最速ラップをマーク。その次の周回には執拗に迫る2位ジュンケイラが差を詰めるが、カーパンティエも負けずにこれに応戦するなど、84周目にはその差を1.2秒まで広げた。そして迎えた最終ラップ。ラストスパートをかけるジュンケイラが最後にもう一度カーパンティエに迫るが、わずかに届かず。カーパンティエは嬉しい今シーズン初優勝をポール・トゥ・ウインで達成し、キャリア通算4勝目を挙げた。

オープニング・ラップ以外、一度もフルコースコーションが出されることの無かったレースは、1時間48分11秒023とこれまでのラグナセカでのCARTのレースにおいて最短時間の新記録が樹立された。嬉しさのあまりコークスクリューで“ドーナツ”を披露しようとしたカーパンティエだったが、フラットでなかったために失敗し、「ドーナッツどころか“クロワッサン”も出来なかったよ」と照れ笑い。

今シーズン4人目のウイナーとなったカーパンティエは、ポールポジション、ファステスト・ラップに加え、最多リードラップ賞も獲得。開幕戦を8位でスタートして以来、前回の第6戦ミルウォーキーではシーズン初表彰台にあがるなど、やっと本来のパフォーマンスを発揮しつつある。7戦を終えた時点で、すべてのレースにおいてトップ10入りを果たしている唯一のドライバーだ。2位に入ったジュンケイラは、ポイント・ランキングでトレイシーを抑えて2位に浮上。シーズン序盤に絶好調だったトレイシーは、ランキング3位まで後退することになった。

さて、土曜日の予選でトップタイムをマークしながらも、車体の最低重量制限をクリアしなかったためにポールポジションを剥奪され、13位からのスタートとなったジョルダイン。そのフラストレーションを決勝レースの走りで晴らし、見事4位でフィニッシュした。レース中の最速ラップもカーパンティエに次ぐ2番手。コークスクリューの入り口でも果敢にパスを見せ、観る者を大いに楽しませた。パスが非常に困難なこのコース・レイアウトを考慮すると、今、いかに乗れているかがわかる。

「予選13位からの出走を考えると、5位でフィニッシュできれば御の字だったね」と語るジョルダイン。過去ドライバーとして1984年から1987年にかけてここラグナ・セカで4連勝を飾り、さらにチーム・オーナーとしても1998、1999、2001年と3回優勝を経験しているボビー・レイホールは、「ミシェル(ジョルダイン)は十二分に素晴らしい仕事をした。ピットアウト直後のラップタイムも良かった」と手放しで喜んでいる。

予選出走前の状態で規定の1550ポンドの最低重量を10ポンド近くもオーバーしていたにもかかわらず、予選後の車検では逆に約6ポンドもアンダーとなってしまったことについては、「このようなことは過去に一度もなかったことだ。燃料1ガロン分程度の差だったと思うが、何が問題だったのか定かではない。いずれにしても今後は体制をより一層厳しくしていかなくてはならない」とコメントしている。

5位にはルーキートップのハバーフェルドが、前回のミルウォーキーに続くトップ10入り。「マシンをトレーラーから下ろした時からセットアップはかなり良い状態だった。おかげでセッションごとにセッティングが煮詰まっていき、戦闘力の高いマシンで走ることが出来た」と語るハバーフェルドはレイナード勢でもトップという結果を残した。

依然としてジョルダインがランキングトップをキープするが、今回優勝したカーパンティエもチャンピオンシップ・ポイントが合計70点となり、次回のポートランド戦ではランキングトップへ浮上する可能性も出てきた。開幕から7戦を終え、上位陣のポイント差が詰まってきたところで、2週間後のポートランドはラグナ・セカと同様、パーマネント・ロードコース。さらにその2週間後にはクリーブランドで、ロードコース初のナイトレースが行われる。

優勝したパトリック・カーパンティエのコメント
ブルーノは僕の後ろにいて、いいスタートをきって勝負をしようとしていたのが分っていたから、ブルーノが加速したときにスローダウンしたんだ。はっきりさせてやろう、と思ったんだけど、ポールのおかげでもっとはっきりとしたよね。ポールが僕の後ろに衝突して僕のクルマは浮き、グリーン・フラッグにならなかったんだから。次のスタートは少し早めに出たさ、いいスタートだったよね。

(勝って)素晴らしい気持ちだね。イエローがなかったのにこの3人がこれだけ接近してフィニッシュしたのも、重要なことだと思うよ。とてもいいレースだった。ファンはエンジョイしてくれたと思う。僕にとって、今回は車を盗んだ僕を大勢の警官が僕を捕まえに来るような感じで、ミラーに写った彼らがだんだんと近づいて来るような感じだったよ(笑)。

最初のスティントではポールが後ろにいて、やっといなくなったと思ったら今度はジュンケイラが来た。二人とも僕より速い時があったから、ほんとうに大変だった。なんとか二人の前にいつづけようと思ったら、途中周回遅れも出てきたし、ほんとうに面白いレースだったね。いいクルマとドライバーがたくさんいて、シリーズは今とてもコンペティティブだ。全員がレースに勝とうととてもアグレッシブだし、すべてがうまくいかないと勝てない。今日の僕たちのようにね。

2位のブルーノ・ジュンケイラのコメント
ただハードにレースをし続け、集中することだね。ここにはとても良いドライバーがいるし、プレイヤーズのようないいチームに、ミッシェルや僕のチームメイトもいいからね。僕も一生懸命レースをし続けなければならないし、もしそれが出来たらわれわれはともてすごい結果を得ることができると思うんだ。

3位のポール・トレーシーのコメント
僕たちはレースに勝つためにチャレンジするチャンスがあった。僕はできるだけあらゆる手段を試みたよ。後ろからつっつく以外はね(笑)。しかしやるだけのことはやったよ、見てのとおり、いろんな方からパスしようとしたし、それはレースをとてもエキサイティングにした。パットがダートに入って、ぼくもダートに入った。僕たちはいろいろな違うラインをトライしたんだ。