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CARTチャンピオンシップ・シリーズ 第6戦 ミルウォーキー【決勝】レポート

<US-RACING>
ミルウォーキーの決勝レース当日はどんよりとした曇り空ながら一度も雨がふることはなく、予定どおり現地時間の午後3時7分にグリーンフラッグとなった。気温は16度と金曜日以来相変わらずの肌寒いコンディションが続いている。

レースは開始早々から波乱の幕開けとなった。まずオープニングラップでフロントロウからスタートしていたカストロネベスがターン1でポールシッター、ブレックのインを突こうとして接触。これでコントロールを失ってしまったカストロネベスはダ・マッタを巻き込むクラッシュを起こしてしまい、カストロネベス、ダ・マッタの両者はリタイヤとなってしまう。

このアクシデントをうまく交わしてジャンプアップを果たしたのが10番グリッドからレースをスタートしていたアンドレッティだった。アクシデントで混乱する上位グループの中をうまくすり抜けたアンドレッティは4番手までポジションアップに成功。

開始早々のアクシデントでコースはイエローとなり11周目にレースが再開されることになるが、今度はトレイシーがターン1で単独スピンを喫してコンクリートウォールにクラッシュ。グリーンフラッグは一瞬でまたイエローに戻された。直後のトレイシーのコメントは「気温が低いことでタイヤが暖まっていなかったせいではない、カストロネベスのアクシデントの際にリアサスペンションにダメージを受けていたようだ」と語る。

序盤からポイントスタンディングス上位5人中3人が脱落することになってしまったミルウォーキーのレースは、開始から19周が経過するまでイエローの状態が続き、20周目にようやくグリーンフラッグとなってレース再開。この時点でのトップ5のオーダーはブレック、ド・フェラン、アンドレッティ、バッサー、そしてカナーンが続く。しかしその直後、アンドレッティが前を走るド・フェランをパスして2番手へと浮上、トップのブレックにも一気にチャージをかけ始める。

アンドレッティはブレックとの差をじりじりと縮めながら、48周目にトップの座を奪い取ろうとアタックを開始するが、ブレックもこれをうまく交わし、レースは手に汗を握る白熱したトップ争いが展開されることに。

ブレックはアンドレッティを引き離すことはできないものの、レース序盤からトップポジションの座を守って80周を経過。この時点でのブレックとアンドレッティのタイムはわずか0.15秒と依然として緊迫の状態が続く。アンドレッティがどこで仕掛けるのか、注目が集まる中、ブレックがターン1でラップ遅れのジョルダインJr.をパスする際に一瞬膨らんでしまう。この瞬間を待っていたかのようにアンドレッティはブレックのインを突いてオーバーテイク、トップポジションを奪い取ることに成功する。

序盤の度重なるアクシデント以降、大きな混乱もなくグリーンフラッグの状態が続いていたレースは88周目、ブレックのピットインを皮切りにトップグループは次々とピットインのタイミングを迎える。

トップグループのピットが一通り終了した115周目時点でのトップはアンドレッティ、これにブレック、バッサー、ド・フェラン、ジュンケイラらが続く展開だ。依然としてアンドレッティとブレックによる激しいトップ争いが続いている。そしてレース129周目には2番手のブレックがターン3でアンドレッティのイン側からパス、トップの座はレース折り返し地点を越えたところで再び入れ替わることになった。

その直後である132周目、3位を走行していたバッサーが周回遅れの12位、高木をパスしようとターン1のイン側に進入。しかし高木がこれに気づかずブロックしてしまい、逃げ場を失ったバッサーは高木のマシンと接触。バッサーはコントロールを失ってそのまま真後ろからコンクリートウォールにクラッシュ、マシンを大破させてリタイヤとなってしまう。マシンを降りたバッサーはコースに残った高木に対し、怒りを露わにした。

接触しながらもマシンを立て直してコースに留まった高木だったが、134周目にブラッグフラッグを提示されてピットイン。トップ争いをするドライバーの走行を妨害し、危険な状況を作り出したとしてCARTは高木をコースに戻さず、その時点でリタイアとなるペナルティーを科すことになった。

バッサーと高木のアクシデントでコースはイエローとなるが、ここでトップグループは一斉に最後のピットストップを行う。このピット競争を制してトップの座に返り咲いたのがアンドレッティだった。これにブレック、そして3番手にはナザレスで史上最年少初優勝を飾ったルーキー、ディクソンがジャンプアップを果たしていた。

142周目にコースはグリーンとなりレースが再開、アンドレッティはトップの座をしっかりとキープしながらレースは終盤戦へと突入する。

一時2位のブレックに1秒以上のアドバンテージを築いたアンドレッティだったが、レース180周を越えたところでその差は一気に縮まることになった。アンドレッティとピットの交信ではフロントウィングにマイナートラブルを抱え、マシンの挙動が変わってしまっていたとのこと。183周目、ブレックがターン3でアンドレッティをパスしてリードの座はまたもや入れ替わる。

この後アンドレッティはブレックのペースに付いていくことができず引き離され、1秒以上の差を築かれてしまう。ところがレースは205周目を迎えたところで、ここまで4番手を走っていたフィッティパルディとラップ遅れのルーキー、ミナシアンがターン3で接触。両者とも激しくコンクリートウォールにクラッシュする事になってしまい、コースはこの日4回目のイエローとなった。今回がCART100戦目だったフィッティパルディにケガはなかったものの、ミナシアンは足を痛めたために、セーフティクルーによってマシンから担ぎ出されることになった。

クラッシュしたマシンの排除とコースの整備に時間が掛かってしまい、レースが再開されたのは218周目。トップグループは残り4ラップのスプリントレースを争うことになった。しかしトップのブレックは落ち着いた走りでトップをしっかりとガード、最後は2番手のアンドレッティに1秒以上の差を付けてチェッカードフラッグ。もてぎに続くうれしい2連覇が達成された。

今回のレース3位にはディクソンが入っており、フォード、ホンダ、トヨタが揃って表彰台に上がることになったが、フォードはトップのほかに8位、ホンダは5、7、9位、トヨタは4、10位を確保しており、激しいエンジンバトルを伺わせる結果となった。またシャシー別ではローラが1、4、8位、レイナードが2、3、5〜7、9、10位を確保するという結果に終わった。ローラにとって記念すべき100勝目をCARTでもっとも歴史のあるミルウォーキーで記録することになった。

また、金曜日のプラクティスで8位に入り、好調なスタートを切った中野は決勝前のプラクティスで痛恨のクラッシュを喫し、急遽Tカーを仕立てて決勝に進出。だが完全にセットアップが決まっていないマシンはひどいオーバーステアに見舞われてペースを上げることができず、16位でレースを終える。

次回はロングビーチ以来のストリートコース、デトロイトが舞台となるだけに、日本人の二人にも期待したいところだ。

●2位表彰台を獲得したM.アンドレッティのコメント
妙なレースだった。レース中盤までは皆燃料をセーブする走りで様子をみたが、後半ペースアップした辺りから、急にアンダーステアに悩まされた。ケニー(K.ブレック)に簡単にパスされたのはそのためだ。ピットで抜き返したけど、そのあと抑えることが出来なかった。

●3位表彰台を獲得したS.ディクソンのコメント
ナザレスでの初優勝の時と同じく、トヨタエンジンの燃費の良さを武器に上位進出をはかれた。きっと終盤戦のイエローコーションがなければK.ブラックもM.アンドレッティも燃料で後退を強いられたはずなのでちょっと悔しい。

●4位、B.ジュンケイラのコメント
12番手スタートで4位に入賞出来たことには満足している。セッティングもうまくいき、素早いピットワークにも助けられた。ポイントも獲得出来、次戦デトロイトでは、予選アタックも優位に行なうことが出来る。次戦も頑張る。

●5位、A.フェルナンデスのコメント
やっとポイントを獲得できて嬉しいよ。スタートポジションを考えると、この結果は上出来だ。ピット戦略のおかげだね。Hondaエンジンの燃費はとても良く、最後のピットストップでは燃料補給のみだったので、タイムを短縮し、ポジションを上げることが出来た。

●6位、T.カナーンのコメント
マシンの調子はとても良くて、何も調整する必要が無いぐらいだった。だけど今日のレースでは燃料をセーブする作戦だったので、思い切ってライバル達をパスする機会が無かったのは非常に残念だ。自分にとっては我慢のレースだったよ。

●7位、G.ド・フェランのコメント
今回のレースはとてもタイトで、オーバーテークが難しかったね。一時は3位を走っていたが、ジミー(バッサー)と接触しそうになり、失速してしまった。また2回目のピットストップでエンジンをストールしたのも痛かったよ。それがなければ5位以内に入っていたのにね。

●9位、D.フランキッティのコメント
最初のアクシデントの際にコース上に破片が散乱して、それを避けようとしたら6〜7台にパスされた。ピットストップでレブリミッターをリセットし忘れ、2回もエンジンストールしてしまった。後半追い上げることが出来たけど、思いどおりの結果が得られずとにかく残念だ。

●10位、M.グージェルミンのコメント
スタートが22番手と後方からの追い上げとなってしまい終始燃費を武器に戦う戦略で戦った。結果は10位に入賞することが出来、貴重なポイントも獲得出来た。確実にポイントを稼いで、シリーズ終盤は有利に戦いを進める。

●12位、A.ザナルディのコメント
2ポイントを獲るために相当苦労したよ。それでもこの結果は過去の優勝にも勝るとも劣らない価値がある。アンダーステア気味なマシンだったが、パスが難しいこのコースでも何度かパスできたのは良かった。ただ、センサーの誤作動でペナルティを食らったのは残念だったね。

●15位、R.モレノのコメント
タフなレースだった。公開練習時と比べれば各段に走りやすくなったものの、やはり苦戦を強いられた。さらに、ショートオーバルコースならではの先行車からの空気抵抗にも悩まされ続けた。次戦はロードコースなので気分転換をはかる。

●16位、中野 信治のコメント
午前中のウォームアップでミスを犯してしまい、マシンを大破してしまいました。マシンの調子は上出来だったので、非常に残念です。チームクルーがすぐにTカーをセットアップしてくれたお陰で、なんとか決勝を走ることができました。今回は色々と勉強になるレースでした。

●18位、C.フィッティパルディのコメント
C.ダ・マッタが序盤でいなくなり、トヨタチームの期待を担っていただけに、残念な結果となってしまった。それも周回遅れのN.ミナシアンと接触するなど、まったく納得はいかない。次戦で悔しさを晴らす。

●19位、N.ミナシアンのコメント
まさか、接触するとは思ってもいなかった。とても残念な結果となってしまったが、この経験を活かして、今後のオーバルコースでの戦いに臨む。しかし、次戦からはロードコースの戦いなので心機一転勝利へと挑む。

●20位、高木虎之介のコメント
初めてのコースで、それも、悪天候でセットアップの時間が制限されて苦しいスタートを迎えた。それでも、序盤戦はともかく、中盤戦を迎えるころには、セッティングの悪さもさほど気にならなくなり、1回目の給油でタイヤを交換してからは、トップ集団にも充分についていけるまでになっていた。J.バッサーが、追い抜きのチャンスを狙っていたのは、わかっていたが、コースを空けようとする前にリアタイアが接触してしまった。直後にピットインし、リアタイアをチェック、戦列復帰したかったが結果的には、不可能だった。前半戦のオーバルコースの戦いは、苦戦の連続で幕を閉じたが、学ぶことも多かった。これからは、得意とするロードコースでの戦いが続くので気を取り直して頑張る。

●21位、J.バッサーのコメント
まったく何が起きたのかわからなかった。数周にわたりパスを仕掛けようとしていたが、なかなかかなわず、インを突いたら、行く手を拒まれた。せっかく優勝出来るチャンスに、このような結果で終わってしまったことが悔やまれる。

●24位、P.トレイシーのコメント
たぶんオープニングラップのアクシデントの時に接触し、マシンに何らかのダメージがあったんだと思う。再スタート後のターン1でいきなりコントロールを失ってしまった。もともとここでのレースはとても好きで、マシンも好調だっただけにこのような結果は非常に残念だ。

●25位、C.ダ・マッタのコメント
スタート直後にK.ブラックとH.カストロネベスの接触に巻き込まれてしまった。あっという間の出来事で、あまりにもあっけなくレースが終わってしまった。ポイント争いでの巻き返しのチャンスだっただけに本当に悔しい。

●26位、H.カストロネベスのコメント
ケニー(ブラック)のブレーキングが少し早く、タイヤとタイヤが当たってしまった。それでバランスを崩し、なんとか体制を整えることができそうだったが、後続に接触されてそれで終わってしまったよ。クルーががんばってとてもいいマシンに仕上がっていただけに、残念。