<US-RACING>
今年で10年目を迎えるロード・アトランタでのプチ・ル・マン。最大10時間も走行する過酷なレースの予選で、総合ポール・ポジションを獲得したのは、LMP1クラスのアウディ勢だった。今シーズンは厳しいレギュレーションによって苦戦を強いられてしまい、LMP2クラスのペンスキー・ポルシェの後塵を拝す場面が多かったが、ロード・アトランタでは最高峰クラスの意地を見せ、予選アタックを務めたマルコ・ワーナーが1分8秒906をマークした。しかし予選2位につけたペンスキー・ポルシェとの差はわずかに0.133秒しかなく、アウディ勢は依然として予断を許せない状況が続いている。「僕らにとってこのレースで総合優勝することがとても重要なんだ。かなり大事なレースで大きなイベントだと思っているよ。ポルシェの連勝を止めることが出来たら良いね。長いレースになるから優勝できればかなり嬉しいと思うよ」と話すワーナー。ポール・ポジション獲得という束の間の喜びから気持ちを引き締め、第2戦以来遠ざかっている総合優勝を狙う。
コンマ1秒差で惜しくも総合ポール・ポジションを逃したLMP2クラスのペンスキー・ポルシェ。事前の下馬評では、上位クラスのLMP1であるアウディ勢が有利と言われていた高速コースのロード・アトランタだったが、現在8連続総合優勝を飾っているペンスキーも負けてはいない。アウディ勢の2台に割って入っただけでなく、総合ポール・ポジションを獲得した2号車のアウディにもしっかり肉薄している。「予選はちょっと変な感じだったよ。コースのグリップがなくてマシンが良くなかった。一生懸命プッシュしたけど、1つのコーナーで失敗すると大きなタイムロスになってしまうんだ。それでもアウディとほとんど変らないペースで走れるのは良いことだね」と予選を振り返るデュマス。今シーズンのアメリカン・ル・マン・シリーズを盛り上げてきた2強が、再びフロント・ロー対決を演じることになった。
アキュラ勢のトップはハイクロフト・レーシング。午前中のプラクティス序盤でクラッシュを演じてしまう逆境から見事に立ち直り、1分10秒ジャストのタイムで総合5位に飛び込んだ。「今週、僕たちに起ったことを考えると、今日の予選はすばらしい結果だといえるね。今週はセットアップの問題がたくさん発生したけど、ようやく予選で良いマシンに仕上げることが出来たよ。問題を分析したことで、どの方向でセットアップすべきかがわかってきたんだ。ある意味ではトラブルがあったことも良いことだったといえるよ。今日のセットアップからいくと、明日のセットアップも良いものになると思うね」と自信を見せるドライバーのデイビッド・ブラバム。5番手スタートからアキュラ勢にとって開幕戦以来のクラス優勝、初めての総合優勝を狙う。
現役インディカー・ドライバーのトニー・カナーンとヴィットール・メイラを抜擢し、必勝態勢で挑むアンドレッティ・グリーン・レーシング。予選アタックは今シーズンのレギュラー・ドライバーを務めてきたブライアン・ハータが担当し、1分10秒223のタイムで総合6位に入った。「今日の状況から言うと、このマシンでやり残したことはないだろうね。予選で2台のポルシェを上回ったことは、おそらく今週のなかでチームとして最も良い結果だと思うよ。ロード・アトランタは速くてタイトな部分があるから、プロトタイプのマシンがGTのマシンを抜いて周回遅れにするコース幅が全然ないんだ。だから、みんなの我慢強さが重要だと思うね。ミスをしないことに集中しなければいけないよ」と決勝の展望語るハータ。現役インディカー・ドライバーとともにどんな走りを見せてくるのか注目される。
昨日と今朝のプラクティスまでアキュラ勢をリードしていたローラ・シャシーのフェルナンデス・レーシングは、予選では苦戦を強いられ、総合8位となった。オーナー兼ドライバーのアドリアン・フェルナンデスによると、ウェット・コンディションでの速さはあるものの、ドライでは少しスピードが足りないとのことだが、チームの調子はかなり良いようだ。「今週末は最初から調子がいいんだ。予選ではちょっと失敗してしまったけどね。チームメイトのルイス(ディアス)も僕と変らないタイムが出ているから、しっかりした作戦を組んでトラブルに巻き込まれなければ、良いレースが出来ると思うよ。コース・コンディションは素晴しいし、このコースも気に入っている。かなり楽しんでいるよ」と上機嫌のフェルナンデス。明日のレースがウェット・コンディションとなれば、フェルナンデス・レーシングが大暴れしてくれるだろう。
IRLのレギュラー・シーズンがすでに終了しているため、このプチ・ル・マンにはインディカー・ドライバーも参戦している。アンドレッティ・グリーンにはIRLでも同チームのドライバーを務めるトニー・カナーンに加え、なんとIRLではライバルとなるパンサー・レーシングのヴィットール・メイラが起用された。これは当初ドライバーを務めるはずだった今シーズンのインディ500ウイナーとIRLチャンピオンに輝いたダリオ・フランキッティが、チップ・ガナッシからのNASCAR参戦を発表したために、講じられた措置だと思われるが、IRLのストーブ・リーグにも何らかの影響があるのではないかと勘ぐってしまう。
IRLでA.J.フォイト・エンタープライゼスのドライバーを務めるダレン・マニングは、ザイテック・エンジンとザイテック・シャシーを使用するアレーナ・インターナショナルからエントリーした。プチ・ル・マンはシリーズのなかではセブリング12時間に次ぐビッグレースだけあって注目度が高く、インディカー・ドライバーのみならず、アレーナ・インターナショナルのようなヨーロッパのチームもスポット参戦で遠征に来ている。「マシンはかなり競争力があると感じているよ。LMP1のこのシャシーで走るのは初めてだけど、とても良い感触を得ているし、このコースもかなり気に入っているね」と語ったマニング。LMP1クラスはアウディの独壇場となっているが、同郷のトム・チルトンとともに上位進出を狙う。
朝から生憎の雨に見舞われたロード・アトランタ。小雨が降るなかで始まった午前9時30分からの予選前最終プラクティスは、セッションが進むにつれて雨が勢いを増し、走行を見合わせるマシンが出るほどだった。水煙を巻き上げてターン4からターン5のシケインを力走するのは、今朝のプラクティスでトップ・タイムをマークした7号車のペンスキー・ポルシェ。ドライ・コンディションとなった予選でも上位クラスのLMP1であるアウディの一角を崩し、総合2位を確保した。
激しい雨が降っていた午前のプラクティスから一転し、午後の予選はドライ・コンディションの下で行われた。朝のうち21度だった気温も、予選では29度まで上昇。雨上がりだったこともあり、晴れ間が広がって陽が射しこむと蒸し暑くなった。アップダウンの激しいロード・アトランタの最終コーナーを攻め込む1号車のアウディ。渾身のアタックはペンスキーにあと一歩及ばず、フロントローを逃す予選3番手に留まった。アウディ勢有利と言われていたこのロード・アトランタだったが、今シーズンことごとくアウディ勢を苦しめてきたペンスキーがまたしても肉薄しており、決勝は大接戦となりそうだ。