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アメリカン・ル・マン・シリーズ 第11戦 プチ・ル・マン[決勝日]フォト&レポート

<US-RACING>

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10年目のプチ・ル・マンは、LMP1クラスのアウディとLMP2クラスのペンスキー・ポルシェの一騎打ちとなり、0.923秒の僅差で1号車のアウディが7号車のペンスキーを下した。ポール・ポジションを獲得した2号車は、スタート・ドライバーをレース前に変えたことで27番グリッドになってしまい、いきなり逆境に立たされたアウディ。しかし、2番手に繰り上がった1号車がホールショットを奪うなど、2号車以上の活躍を見せる。レースは終盤まで1号車のアウディと7号車のペンスキーが互いに順位を入れ替えるエキサイティングな展開となり、まるで1000マイルのスプリント・レースを見せられているようだった。勝負が決したのは残り15周。3回目のコーションで30秒近くあったペンスキーとの差が一気に縮まったアウディは、リスタート後に激しくペンスキーを攻め立て、ターン10でトップを奪い返す。その後は食い下がるペンスキーを何とか抑えきり、第2戦セント・ピーターズバーグ以来となる総合優勝を果たした。「この優勝は僕たちにとって大きな意味があるよ。これまでに総合優勝が見えていながら逃してしまうことが何度かあったからね。今日は今までで一番大変なレースだったけど、最高のレースでもあったよ」と大喜びするドライバーのマクニッシュ。ここまで下位クラスであるLMP2のペンスキーに8連勝を許していただけに、喜びも一入のようだ。これでLMP1クラスのチャンピオンも決め、この勢いのまま最終戦のラグナ・セカも優勝し、2007年シーズンの有終の美を飾りたい。

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惜しくも総合優勝を逃したLMP2クラスのペンスキー・ポルシェ。レースが残り30周となった時点でアウディに30秒以上の差をつけ、トップを快走していたが、不運にもイエロー・コーションが発生し、築き上げたリードは一瞬にして消え去ってしまった。リスタートから4周はアウディのプレッシャーをしのいでいたものの、一瞬の隙をつかれ、ターン10でリードを奪われる。フィニッシュまで必死にアウディを追いかけたが、かわすまでには至らず、総合優勝の連勝記録は8でストップした。「不運にもセーフティ・カーによって僕たちのリードがなくなってしまったね。モスポートで優勝したときは運が良かったけど、今回は運が悪かった。何とかアウディにプレッシャーをかけ続けていたけどね。それでも素晴らしいレースになったよ」とレースを振り返るドライバーのロメイン・デュマス。LMP2クラスながら、ペンスキーはLMP1よりも軽い車体と大容量の燃料タンクを活かした戦略で、アウディと互角の戦いを演じた。最後は運に見放されてしまったが、このクラス優勝によってLMP2クラスの2007年チャンピオンを獲得した。

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今週末のプチ・ル・マンで多くのアクシデントとトラブルに見舞われてしまったアキュラ勢は、ハイクロフト・レーシング(HR)の総合8位が最高位だった。アウディのペナルティによって4番手からスタートすることになったHR。序盤はスタート・ドライバーを務めたデイビッド・ブラバムが好走を見せるが、ステファン・ヨハンソンへドライバーが代わるとスターター・モーターのトラブルが出始め、3人目のロビー・ケアに交代したところで完全にマシンが止まってしまった。チームはガレージでマシンを修復し、再びケアをコースへ送り出すが、すでにピット・インしてから23分が過ぎ、トップから27周遅れとなっていた。それでも諦めずにフィニッシュを目指したハイクロフト・レーシングは、徐々に順位を挽回し、総合8位でフィニッシュ・ラインを通過した。「最初は調子がよかったけど、スターター・モーターの問題が発生して、ポジションを落とすことになったんだ。あの状況でマシンを走らせるのは大変だったよ。レース前からわかっていたけど、やはり全体的にマシンのグリップが足りなかったね。イエロー・コーション中に長い時間をかけてリア・ウィングを調整したことで、ある程度よくなったけど、それでもグリップが少なかったね。グリップの問題を抱えているなかで、いつもよりも一生懸命にハンドル操作をしなければいけなかった。ほんとうにタフだったよ」と語るヨハンソン。不運なトラブルに見舞われてしまったが、次戦のラグナ・セカに繋がる速さと粘り強さを見せてくれた。

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8番手スタートのフェルナンデス・レーシングは、序盤オーナー兼ドライバーであるアドリアン・フェルナンデスが善戦する。たが60周目、ライアン・ブリスコーと接触してコース上に立ち往生していたダレン・マニングを避けきれず、追突する不運に見舞われてしまった。リア・ウイングとリア・サスペンション、さらにフロント・ボディーにもダメージを受け、マシンは満身創痍となっていたものの、メカニックは懸命の修復作業を敢行。115周目にルイス・ディアスをコースへ送り出す。ところがその27周後、高速コーナーのエセスで一瞬コースオフしたディアスは、そのままコントロールを失ってウォールに激突。大きなダメージを受けたマシンは走行不能に陥り、レース開始3時間40分でリタイアとなった。「今日は不運な一日だったね。良い戦略を立てていたんだけど、残念なことに最後まで走りきれなかった。このレースは速さではなく、フィニッシュまで生き残ることが一番重要なことなんだ。最初のアクシデントでルイスに行き場がなかったことは、運が悪かったよ。マシンの調子も良かったし、燃料もセーブできていた。こんなに早くレースを終えることになったのはとにかく残念だ」と話すフェルナンデス。今週末は随所で速さを見せていただけに残念な結果に終わった。

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5番手からスタートしたアンドレッティ・グリーン・レーシングは、2時間の間に2度もアクシデントに遭遇し、まったく波に乗れないままレースを終えることになった。最初のアクシデントとなったGT1クラスのヤン・マグネッセンとの接触では、なんとかマシンを修復しコースへ復帰したが、50周目に今度は同クラスのポルシェを操るクリス・ダイソンと接触。このアクシデントによってラジエターに穴が開き、冷却水が送られなくなったエンジンにもダメージが及んだことで、レースを断念せざるを得なかった。「みんなが一生懸命マシンを準備してくれたのに、こんな結果になってしまってほんとうにがっかりだよ。最後のアクシデントは、ブレーキング・ゾーンに入った時点ではクリス・ダイソンが僕の後ろにいたから、あとで映像を見直したいね。ブレーキ勝負で僕を抜こうとしたようだけど、僕が彼を見ていなかったので接触してしまった。残念ながら最初のヤン・マグネッセンとの接触で、すでにダメージを受けていたのにで、致命的なダメージを与えられてしまった。ヤンが無事だったのはほんとうに良かったけど、彼が僕のためにスペースを空けてくれていたと思っていたんだ。今日はこのような展開になるとは思ってもみなかったよ」と落胆するブライアン・ハータ。今回、現役のインディカー・ドライバーのトニー・カナーンとヴィットール・メイラをラインナップしたAGRだったが、この二人は一度も走ることなくレースを終えることになった。

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今シーズン、開幕戦のセブリングでアストン・マーティンDBR9が参戦した以外は、シボレー・コルベットC6RのみのエントリーとなったGT1クラス。しかし、このプチ・ル・マンにはFIA-GT選手権でも活躍するマセラティMC12が参戦し、プラクティスからC6Rと火花を散らしていた。予選はマセラティに軍配が上がったものの、レースを制したのはコルベット。唯一のGT1クラスながら絶え間ない努力を続けていたことを、速さで勝るマセラティを下したことで証明した。開幕戦のアストン・マーティンやプチ・ル・マンでのマセラティのように、スーパーカーが出場できるGT1クラス。2007年はコルベットのみになってしまったが、来シーズンは様々なマニュファクチャラーが参加し、スーパーカーでの激しいバトルを期待したい。

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10周年を迎えたプチ・ル・マンのスタート・シーン。長く過酷なレースに向けて全30台がいっせいに走り出す。ポール・ポジションからスタートするはずだった2号車のアウディは、木曜日のプラクティスで激しいクラッシュを演じたスタート・ドライバーのエマニエル・ピロを欠場させ、ルーカス・ルーアを代役に立てる。これによって2号車のアウディは27番手からスタートすることになった。代わってポール・ポジションについた7号車のペンスキー・ポルシェは、スタートであっさりと2番手スタートに繰り上がった1号車のアウディの先行を許してしまうが、このあと1号車のアウディと7号車のペンスキーはフィニッシュまで激しいバトルを繰り広げた。

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青空が夕焼けに染まってゆくロード・アトランタ。スタート時間には雲が空を覆っていたが、次第に晴れ間が広がり、夕方にはすっかり快晴となった。蒸し暑さがあったものの、真夏ほどの暑さはなく、観戦するにはちょうど良い気候だった。写真はターン5のイン側を撮ったもの。コースには当然グランド・スタンドが用意されているが、スタンド席で座って観戦しているファンより、写真のように自由席の丘の上に椅子などを設置して観ているファンが多かった。また、耐久レースということもあり、キャンピングカーなどで観戦に来たファンが多く、コース内は大いに賑わっていた。

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このロード・アトランタも開幕戦のセブリングのようにコースを照らす照明が少ない。ドライバーは森に囲まれた暗闇のなかを、マシンのライトだけを頼りにドライブしなくてはいけない。フランスのル・マンに遠征しなければ、今シーズン2回目の長丁場となるプチ・ル・マン。アウディとペンスキー・ポルシェは最後までしのぎを削り、10周年のレースに相応しい目が離せないバトルを繰り広げる。1000マイルを走りきったトップと2位との差は0.923秒しかなく、プチ・ル・マン史上最も接近したフィニッシュで幕を閉じた。