<US-RACING>
先週の金曜にお送りした武藤英紀インタビューの第2弾。今回はレース・ウィークエンドの過ごし方を中心に、気になるドライバー同士の関係や、今シーズン唯一の日本人フルタイム・ドライバーである武藤が、海外のシリーズでどうコミュニケーションをとっているかについて迫った。ダニカが武藤に抱く意外!?な印象も明らかに。
〜リフレッシュの良い方法はありませんか?〜
Q:レース・ウィークエンドの過ごし方についてお聞きしますが、レース・コースについて最初にすることは何でしょうか?
武藤英紀(以下:MH):「ロード・コースの場合だと、エンジニアと一緒にコースを周って確認します。オーバルではコースについてそのままミーティングになりますね」
Q:レース・ウィークエンド中の食事はどうしていますか?
MH:「レース自体は何年もやっていますし、食事管理という点では何を食べれば良いか分かっていますから、その日にあったものを食べています。ほとんどAGRのホスピタリティで食べることが多く、出る食事はとてもおいしいのですが、あまりこちらの食文化に慣れてしまうと太りやすくなってしまいますよね。やっぱり日本食のほうがヘルシーで、少ないカロリーで満腹感を得られるような感じがします。でも食生活で不自由することはないですね。お腹がいっぱいになれば何でも良いです」
Q:ダン・ウエルドン選手はよくゲンを担ぐようですが、武藤選手はレース前のゲンかつぎなどをしますか?
MH:「極力意識しないようにしています。他のドライバーがどんなことをやっているのかわからないですが、それほど気にしたことはありません。ただ全体の流れというものは意識するようにしていますよ」
Q:エドモントンでお話を伺ったときには、レースとレースの合間でのリフレッシュ方法を探しているとおっしゃっていましたが、その後何か良い方法は見つかりましたか?
MH:「何も見つかっていないです(笑)。何か良い方法はありませんか? でも、しいて言えばトレーニングですかね。レースが終わった翌日にトレーニングをすれば気持ちも前向きになりますし、逆に疲れたと言って何もしないでいると、いつまでもくよくよしているような感じになってしまいます。性格的にも体を動かすことが良いのかもしれません。今回は火、水、木とトレーニングをしてシカゴランドへ来たので、体調的にはバッチリですよ」
Q:この1年でチームメイトとの関係はかなり深まったということですが、チームメイト以外のドライバーとの関係はどうでしょう?
MH:「チームメイト以外のドライバーとは付き合いがあまりないですね。よく(E.J)ヴィソやマリオ(モラエス)とは『食事に行こう!』という話をするんですけど、お互いに時間が合わなくて実現していないです。彼らとは歳が近いこともあって頻繁にコミュニケーションをとりますよ。でも、あまり親しくなるとレースで思いっきりいけなくなるタイプなので、極力ほかのドライバーとは距離を置くようにしています。切り替えがうまくいかないというか、情が出てしまうんですね」
Q:そういったほかのドライバーはもちろん、チームメイトやエンジニアとのコミュニケーション、さらに実生活でも英語が必要になりますが、武藤選手独自の英語習得方法はありますか?
MH:「ないです。習得方法ではないですが、あえていうなら悔しいと思うことじゃないですかね。 『もっと面白いことが言えるのに』と思わないとダメです。でも、アメリカの人って笑いのハードルが低いんですよ。日本チックな笑いを取ろうとするとシラけてしまって、体を使った表現の方で爆笑しますから、志村けんさんはアメリカで受けるかもしれないですね。言葉で笑わそうとすると難しくて、意外と単純なことで笑ってくれるはずなんですけど、僕にはそれがあんまりできていないです。
それでも、ダニカは僕のボソっと言うひとことに、笑いのツボがあるらしいんです。だから彼女には『アンタは英語がもっとできるとほんとうに面白い人なのかもね』と言われますよ(笑)。『それだけ少ない言葉で笑いを取れるんだから、私に日本語がわかれば相当面白いはずよ!』とも言っていましたね」
Q:では、逆にチームメイトに日本語を教えるようなことはありますよね?
MH:「みんな『これはなんて言うの?』ってよく訊いてきますね。くだらないことばっかり訊いてくるので、その言葉を僕が教えたということなるのが相当イヤです。のちのち『そんな言葉をどこで覚えたの?』って日本の誰かが訊いたときに、『日本人ドライバーのヒデキ・ムトウだよ』なんて答えられるのは、けっこう複雑な気分になりますよね(笑)」
(つづく)
◆Vol.3は今週の金曜日にお送りする予定です。