<US-RACING>
3番手スタートから逆転で今シーズン3勝目を手にした3年連続チャンピオンのセバスチャン・ブルデイ。国際F3000以来となる、5年ぶりのスタンディング・スタートに戸惑ったのか、スタートで出遅れて5番手まで後退してしまう。抜きづらいコース特性のなか、ライバルが1回目のピット・ストップに入った隙に渾身のスパートをかけたブルデイは、30周目のピット・ストップ後に2位へ躍進。第1スティントで独走していたウイルソンとの間には、20秒以上の絶望的ともいえる差が広がっていたが、ブルデイはファステスト・ラップを刻みながら、1周ずつ確実に差を詰めていった。そして2回目のピット・ストップを終えた後の56周目、ウイルソンの背後に迫ったブルデイはホームストレートで一気に抜き去り、トップへ躍り出る。その後は2位のウイルソンとの差を13秒537まで拡大し、通算26勝目、ニューマン/ハース/ラニガンにとって記念すべき100勝目のチェッカーを受けた。「第2スティントで、最初の5周はジャスティントとペースが変わらなかったけど、その後は1周コンマ8秒ずつ追い上げることができたよ。2回目のピット・ストップでエンジニアのクレイグに、『勝てそうな気がするよ』と言ったんだ。そうしたらほんとうにジャスティンを追い抜くことができた。最高の優勝だよ。チームの100勝目に関わることもできて、とても誇りに思うね」と大喜びのブルデイ。ディフェンディング・チャンピオンが本領を発揮し、前人未踏のシリーズ4連覇に向けてまた一歩前進した。
ジャスティン・ウイルソンはレース前半をリードしながら、掴みかけた勝利を逃す結果となった。チャンプ・カー史上初めてスタンディング・スタートが行われる歴史的なレースで、ポール・ポジションを獲得したウイルソン。スタートを問題なく決め、2番手を走るドーンボスに対して1周1秒近くの差をつけて逃げていく。余裕のマージンを保って1回目のピット・ストップを行い、これでウイルソンの勝利は確実なものに見えたが、ドラマは終わらなかった。ドーンボスに代わって2番手に浮上したブルデイが、ハイペースでみるみるタイム差を削り取り、56周目にはコース上であっさりと逆転。決してウイルソンが遅かったのではなく、それ以上に力強いパフォーマンスをブルデイが発揮したため、ウイルソンは無念の2位でフィニッシュすることになった。「最初のスティントは上手くいったけど、第2スティントではペースを上げられなかったよ。それでセバスチャンがどんどん差を詰めて、2回目のピット・ストップの後に追い越されたのさ。でも、表彰台を獲得できて嬉しい。今週末、チームのみんながすばらしい仕事してくれたからね。ほんとうに彼らを誇りに思うんだ。次のクリーブランドでも、優勝争いができると良いね」と話すウイルソン。今シーズン初勝利はお預けとなったものの、今期ベストの2位フィニッシュを飾り、昨年のシリーズ2位を獲得したドライバーが本来の強さを取り戻した。
2戦連続のポディウム・フィニッシュを飾ったロバート・ドーンボス。スタートの飛び出しはウイルソンと互角だったが、レッド・タイヤでのマシン・バランスに苦しみ、ターン1を過ぎてからはウイルソンのペースについていくことができない。加えて最初のピット・ストップで、パワーの先行を許して4番手まで後退。苦しいレースを強いられることになったが、スタンダード・タイヤに交換するとペースが安定し、ドーンボスは粘り強くパワーを追い上げていく。そして85周目、3回目のピット・ストップでパワーを逆転し、最初のピット・ストップでの借りを返すことに成功。見事に昨年のルーキー・オブ・ザ・イヤーを下して3位を掴み取った。「レッド・タイヤが僕のマシンに合っていなかったんだ。ジャスティンとの差がどんどん広がっていったのは、かなりイライラしたよ。スタンダード・タイヤになってからはとても乗りやすくなったね。チーム・クルーがピット・ストップでよい仕事をしてくれたおかげで、とても安定したマシンになった。4レースで3回のポディウムは、確かにすばらしいね。チームにとってもいいことだよ。でも、セバスチャンやジャスティンと優勝争いをするには、もっとマシンを改良しなくちゃいけないね」とレースを振り返るドーンボス。すでに十分なポテンシャルの高さを示しているため、このルーキーがいつ優勝できるかに注目が集まる。
昨日の雨のセッションでは2位のタイムを記録し、好調ぶりをアピールしていたグラハム・レイホール。スタートをミスして8番手から9番手に順位を落とすも、5周目にポジションを取り返し、その後は“スピーディ・ダン”ことダン・クラークと7番手争いを演じた。レース中盤にバックストレートでいったんは並びかけるも、クラークがレイホールにスペースを与えず、レイホールはコース外へと押し出されてしまう。絶妙なマシン・コントロールでほとんどロスなくコースに復帰したのだが、危うくクラッシュするところだったため、レイホールは手を上げてクラークに怒りをあらわにした。これで冷静さを欠いたのか、69周目にレイホールは再びコース・オフ。順位をひとつ落とし、9位でフィニッシュすることになった。「クラークに追いつくまで、レースはかなり上手くいっていたのに、彼に押し出されたんだ。それで別の戦略をとらなくちゃいけなかった。これから彼のことを“ステューピッド・ダン”と呼ぶことにするよ」とレイホールは怒りが収まらない様子。一方、レイホールを押し出したクラークは、「今日の順位にはかなり満足しているよ。不運のないクリーンなレースだったね」とまったく意に介していなかった。
厚い雲が空を覆ったポートランド。気温は16度と低く、今にも雨が降りそうな空模様だったが、結局雨が降ることはなかった。レースはスケジュールどおり行われ、チャンプ・カー史上初めてとなるスタンディング・スタートを、コースにいるすべての人が固唾を呑んで見守る。全17台がきれいにスタートを決めると、例年クラッシュが多発するスタート直後のフェスティバル・シケインも、大きな混乱なく全車が通過。誰一人として大きなミスや接触事故を起こさず、2000年のロード・アメリカ以来、7年ぶりにノー・コーションでレースが終了した。