INDY CAR

サム・ホーニッシュJr.が今シーズン初勝利

<Honda>

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2007年6月9日(土)・決勝
開催地:テキサス州フォート・ワース
会場:テキサス・モーター・スピードウェイ(全長1.5マイル)
天候:晴れ
気温:30〜31℃

IRL IndyCarシリーズ第7戦が行われるテキサス・モーター・スピードウェイは、24度というシリーズ中で最も急なバンクを有している。そのため、インディカーはコーナーでのスピードダウンを少なくできるので、2〜3台が並んだまま走り続けるバトルが展開される。スタートからゴールまで多くのマシンが接近した状態でバトルを続けるレースは、ドライバーたちにとって一瞬の油断も許されないメンタル面でも厳しいものとなる。それと同時に、インディカー・レースならではの接戦によるフィニッシュシーンを数多く実現してきたのも、このコースである。熱心なテキサスのファンがより長い時間にわたってインディカーの高速接近戦をエンジョイできるように、今年からレース距離が50km=28周増やされ、ボンバルディア・リアジェット550kと呼ばれることになった。

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テキサス州フォート・ワース郊外の1.5マイル・オーバルは、コース外周とインフィールドに照明施設を備えており、第7戦は今年2回目のナイトレースとして開催された。スタートは、太陽がグランドスタンドの裏側に沈むのとほぼ同じタイミングの夜8時30分過ぎに切られた。
フロントロー外側のグリッドにいたサム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー)が好ダッシュを見せ、2001年のケンタッキー以来のポールポジションスタートだったスコット・シャープ(レイホール・レターマン・レーシング)をパス。ホーニッシュJr.は、この後もレースのイニシアチブを握った。彼にアタックしたのは、予選は10番手と決してよくなかったダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、予選6番手のダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)、トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)といった面々で、7人のドライバーたちが代わる代わるトップを走る目まぐるしい展開となった。
2回目のピットストップの後に、トップのホーニッシュJr.が後続を大きく突き放して独走を始めた。しかし、レースも終盤に差しかかった197周目、A.J.フォイト4世(ヴィジョン・レーシング)のタイヤが外れたことをきっかけに、6台が巻き込まれるアクシデントが発生。この中にはウェルドン、スコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)らトップコンテンダーたちも含まれていた。
多重アクシデントをくぐり抜けてトップ争いを行ったのは、ホーニッシュJr.、カナーン、そしてパトリックの3人だった。アンドレッティ・グリーン・レーシングのチームメートであるカナーンとパトリックが協力してホーニッシュJr.を攻略するかに注目が集まったが、最速のマシンを手にしていたのはトップを守り続けるホーニッシュJr.だった。彼はインからアウトから、何度も仕掛けてきたカナーンを振り切り、0.0786秒という僅差で今シーズン初勝利のチェッカードフラッグを受けた。これでホーニッシュJr.は、自身が持つシリーズ最多優勝回数を19回へと更新した。パトリックはキャリア・ベストであった2度の4位を上回る3位フィニッシュを達成。4位はダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)、5位はヴィットール・メイラ(デルファイ・パンサー・レーシング)だった。
スーパーアグリ・パンサー・レーシングから出場する松浦孝亮は、予選15番手からスタート。2年連続トップ10フィニッシュを記録しているように、テキサスは松浦にとって得意のコースで、燃費よく走れたことが功を奏して1回目のピットストップを迎える場面で一気に上位へと進出するところだった。ところが、松浦はフルコースコーション中にペースカーを追い越したとの判定を受けてピットで30秒停止するペナルティを科せられ周回遅れに。それでも粘り強く走り続けた結果、今年初めてのトップ10フィニッシュとなる9位でゴールした。

■コメント

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■サム・ホーニッシュJr.(優勝)
「昨日のプラクティスでマシンをとてもいい状態に仕上げることができた。予選では惜しくもポールポジションを逃したが、今日のレースではスタートからゴールまでマシンのハンドリングがずっとよかった。僕がマシンに求めるすべてがそろっていて、どのラインでも自由に走ることができていた。ギア比の選択もパーフェクトだった。また、クルーたちのピットストップもすばらしかった。彼らは作業スピードを少しでも短くできるように研究と練習を重ねている。今日はグリーン・フラッグ下でのピットストップが2回あった。こういうときにチーム・ペンスキーのピットストップの速さは大きな武器になる。次のアイオワと、その次のリッチモンドは、どちらも僕の得意なショートオーバルなので、どんな戦いができるのか今から待ち遠しい」

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■トニー・カナーン(2位)
「今日の僕らのマシンは2位でフィニッシュするのは難しい状態だった。オーバーステアが出ていたからだ。しかし、ピットクルーたちのすばやい作業と、ピットストップの度に行ったセッティング変更によってトップグループにとどまり続け、2位でゴールすることができた。昨年からのオフの間にチームオーナーたちは体制の立て直しに力を尽くしてくれ、エンジニアたちもマシンを速くするための開発を続けていた。彼らに深く感謝したい」

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■ダニカ・パトリック(3位)
「今週末は最初のプラクティスからマシンをうまくセッティングできていたので、いいレースを戦える自信があった。そして、考えていた通りにスタートからゴールまでマシンはずっと強力だった。トニー・カナーンと一緒にサム・ホーニッシュJr.をパスしたかったけれど、それを達成する前にゴールのときが訪れてしまった」

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■松浦孝亮(9位)
「給油を予定していた周回数より少し前にフルコースコーションが出ました。ピットは閉鎖されますが、燃料がなくなってしまう状況のマシンはピットに入ることがルールで許されているので、自分はピットインしました。その後にコースに戻るとペースカーがいて、自分としては前に行かせてもらえるものと考えていたのでパスしたのですが、それがペナルティの対象となってしまいました。ここで3周もの周回遅れとなってしまいましたが、諦めることなく走り続け、何台かのマシンがアクシデントに遭ったこともあり、9位でゴールすることができました。今日のようなレースでマシンを壊さずにゴールまで走れたことは、シーズンを戦う上で大きな意味を持っています。次は自分たちのチームが得意とするショートオーバルなので、いいレースを戦いたいと思います」

■ロバート・クラーク(HPD社長)
「最後はテキサスらしい接近戦のゴールシーンとなった。昨年度チャンピオンのサム・ホーニッシュJr.にとってこれが今シーズン初勝利となったが、今日の彼の速さは驚くべきものがあった。今回は多重クラッシュがあったが、ダニカ・パトリックはアクシデントを回避する能力にも長けており、キャリア・ベストとなる3位でゴールした。彼女の奮闘ぶりに拍手を送りたい。スタートからゴールまで、ダニカはずっと安定した速さを保っていた。ホーニッシュJr.は今シーズン5人目のウイナーとなった。7レースで5人の勝者が生まれていることが示している通り、IRL IndyCarシリーズは今年も競争がきわめて激しくなっている。ダン・ウェルドン、スコット・ディクソン、エリオ・カストロネベスの3人が多重アクシデントに巻き込まれ、ポイント争いはより多くのドライバーたちが接近した状態となっている。まだシーズンは10戦が残っている。これからもし烈な、そして緊迫感にあふれた戦いが続くこととなる」