<US-RACING>
昨年を上回る6万3千人もの大観衆が集まった決勝レース当日の日曜日。天候は晴れで、気温は20度といった絶好のレースコンディションとなった。ローリングスタート1周目は、隊列が整わずイエローフラッグが出たが、その翌周にはフォーメーションも決まり、午後1時10分にグリーンフラッグ。
約6万3千人もの大観衆が見守るなか、オープニングラップを制したのは、ポールポジションのフランキッティ。それをトレイシー、ド・フェランが追う。後方ではダ・マッタがフィッティパルディをパスして5位に浮上。
4周目、シケイン手前で減速したブレックをカーパンティエが避けようとしてフェンスにヒット。その後方からタグリアーニがカーパンティエのインに入ったために両者のマシンが接触。タグリアーニはそのまま走行を続けるが、カーパンティエはストール。そこへ今度はブランデルが突っ込み、2台がリタイアしたことで最初のフルコースコーションとなった。
フルコースコーション下の8周目、ブレックがコース上でエンジンストール。ブレックは、CARTセイフティクルーの助けをかり、再スタートして戦線復帰するが、大きく順位を落としてしまう。
10周目にグリーンフラッグが降られ、レース再開。しかしその次の周、12位走行中のセルビアがフロントストレートエンドで一瞬失速。その後方にいたカナーンが一気にパスを仕掛けるがセルビアも土壇場で譲らず、行き場を無くしたカナーンにジョルダインJr.が追突。ジョルダインJr.はここでリタイア、カナーンもその後ピットインして戦線離脱。
再度フルコースコーションとなった中、このタイミングを利用して中野信治がピットインし、後半戦に備える。14周目にグリーンフラッグが降られるが、その2周後、またもタグリアーニが今度はフェルナンデスに押し出されてターン1のタイヤバリアに突っ込んだことで、この日4度目のフルコースコーション。地元で粘るタグリアーニはCARTオフィシャルの押しがけが成功し、再びレースに復帰した。この時点でトップ6の順位に変化無し。
レースもちょうど3分の1を過ぎた30周目辺りから、4位のカストロネベスに5位のモントーヤが執拗にアタック。モントーヤはコーナーの手前でカストロネベスのマシンに並びかけパスを試みるが、カストロネベスも譲らない。
後方でバトルが続くなか、トップのフランキッティは快調に飛ばし、2位トレイシーとの差を広げ、35周目にその差は7秒前後となる。しかし37周目、フランキッティのマシンは、周回遅れのバロンのマシンに追突、これと言ったダメージは無かったものの、チームKOOLグリーンのピットは、一瞬ヒヤリとする。
上位グループのマシンが、グリーンフラッグ下の40周目前後で予定のピットインを行うなか、3位を走っていたド・フェランも42周目にピットイン。ところが作業を済ませたド・フェランはコースに復帰した際、規定のラインから外れたところを走行、ストップ&ゴーのペナルティを受けてしまう。このためド・フェランは、8位までポジションダウン。
そしてチームメイトのカストロネベスにも更に不運が襲い掛かる。バックストレートを抜けたあとのターン6手前で、フロントサスペンションの一部が破損。コントロールを失ったカストロネベスのマシンはターン6のエスケープゾーンのタイヤバリアに突っ込み無念のリタイアとなった。
後方から徐々にポジションを上げてきた中野信治だったが、52周目にターン7出口のウォールに激突。ドライバーにケガは無かったものの、そのままマシンを降りてリタイア。ここでフルコースコーションとなる。
このフルコースコーションでトップのフランキッティとトレイシーが同時にこの日2度目のピット。トレイシーは素早く作業を終えたが、トップで入ったフランキッティは、痛恨のエンジンストール。チームクルーが押しがけでエンジンを再スタートし、ピットを出るがトレイシーにトップの座を譲ってしまう。
地元カナダ人ドライバーのトレイシーがトップに立ったことで、集まったファンから大歓声が上がる。ところがそれもつかの間、周回遅れのバロンのマシンに行く手を阻まれ、後方との差を広げられないトレイシーとフランキッティの後方には、3位に上がったモントーヤが迫ってきた。
しかしモントーヤの追撃もそこまでだった。トップの2台に追いついたモントーヤのマシンが69周目、ターン8を抜けたところで突然スローダウン、燃料プレッシャーのトラブルでコース上にマシンを止めてしまう。フルコースコーションとなったコース上、順位は依然トップがトレイシーで、2位フランキッティ。以下、ダ・マッタ、フェルナンデス、フィッティパルディと続く。
レース終盤、トレイシーとフランキッティをなんとしても捉えたいダ・マッタだったが、1回のピットストップでは燃料が間に合わず、ラスト4周のところでスプラッシュ&ゴーを強いられ一挙に7位までポジションを下げてしまった。ここでフェルナンデスが3位に上がるが、2位フランキッティとのタイム差は既に15秒以上。しかもその差は周回を重ねる毎に広がっていく。
最終ラップを迎えてもそのスピードに衰えを見せないトレイシーとフランキッティの2台は、後続との差を約19秒にまで広げ、そのままチェッカー。トレイシーは前回の第14戦に続き今年初の2連勝を達成、今季唯一3勝目を挙げたドライバーとなった。
1990年から行なわれているバンクーバー戦で、地元カナダ人ドライバーが優勝したのは今回が初めて。これでトレイシーはチャンピオンシップポイントでも合計120となり、ランキング2位。今回12位でフィニッシュしたポイントリーダーのアンドレッティに僅か6ポイント差まで詰め寄る結果となった。
エンジンマニュファクチャラー別の結果は、3連勝を決めたホンダが1位と2位を獲得、フォードが3位と4位で、トヨタが6位と7位。メルセデスはカナーンの14位が最高位だった。マニュファクチャラーズ・チャンピオンシップのポイント差はフォードの256に対し、ホンダが247と、前回の17ポイント差からいっきに9ポイント差まで縮まった。
次回は、カリフォルニア州モントレーで開催される“Honda Grand Prix of Monterey”。今年最後のパーマネントロードコースだ。あと残り5戦、ここへきてトップ6のチャンピオンシップポイント差が急激に縮まり、更に面白い展開となってきた。誰が勝つか、1戦たりとも目が離せない状況だ。
●優勝したトレイシーのコメント
今日はチームの中で、最後のピットストップ以降はチームメイト同士でレースを争わないという取り決めをしていたんだ。 というわけで序盤、ダリオとボクはお互いバトルをしていたわけだけど、最後のピットストップでボクが前に出てからはダリオ、ボク共にお互いのポジションをキープしながらゴールしたわけさ。 今日勝つことが出来てチャンピオンシップ争いでいいポジションに帰ってくることが出来た。 残りのスケジュールのレーストラックはどれも好きなコースだから、これからチームにも有利に働くと思うよ。
●2位に入賞したフランキッティのコメント
今日は表彰台入りすることが出来て良かった。でもやっぱり勝ちたかったね。 今日のマシンはとにかく素晴らしくて、優勝するポテンシャルを持っていたと思う。 最後のピットストップでのエンジンストールは残念だったね。 今日は最後のピットストップ以降はポールとは争わないというチームオーダーがあったから、 最後のピットストップ以降は例えボクのマシンがポールのマシンより速くても抜くことは出来なかったんだ。 これはレース前、ボクを含めチーム全体の取り決めだったからね。 まあとにかくチームにとって今日は最高の形でフィニッシュできたね。ポールも地元のファンの前で優勝したし、本当にうれしいよ。まあでもやっぱり優勝できなかったのは残念だね。
●3位に入賞したフェルナンデスのコメント
今日はファンタスティックだよ。 2回のイエローをうまく使ってピットストップをすることが出来たから、ポジションを効率的に上げることが出来た。今日はピットストップがキーポイントになったね。 今週はマシンの仕上がりに悩まされてきたから、本当にうれしいよ。 後、今日はタグリアーニに悪いことをしてしまった。序盤ボクはターン1でちょっとオーバースピードでちょっと行きすぎちゃったんだ。タグリアーニは自分のラインを走っていたんだけど、ボクがヒットしてしまったんだ。
●レース終了間際でマシンがストップ、12位に終わったアンドレッティノコメント
燃料は充分残っていたようなんだけど、フューエルタンクに何か問題があったようだ。 今日はピットストップ1回の作戦で上位入賞を狙っていただけに非常に残念だよ。 グリーンとペンスキーのマシンはラグナ・セカでも速そうだから大変なことになってきたね。
●リタイヤに終わった中野信治のコメント
今日チームは序盤の素晴らしいピット・ストラテジーで、ライバル達がグリーンでピットインする中、レースを続けることが出来た。 でも今日はちょっと激しく攻めすぎてしまって、ターン7でコントロールを失ってしまった。 今日のマシンはハンドリングも良かっただけにとても残念だ。